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SOD CAFE
“LOVE”や“FREEDOM”で世界は変わらないので、SOD CAFEへ(嘲)
「すみません、……その……あたしのこと『奥さん』って呼んでいただけません?」
 
 30前、という感じのその女は俯きながら、照れくさそうにぼそぼそとつぶやいた。
 まあはっきり言って顔は10人並みだったが、おっぱいは大きい。
 えてしてこういう小作りで印象の薄い女ほど、内には淫らな本性を秘めているものだ。
 
 と、わたしはいっぱしの女殺しを気取りながら、女の話を聞いていた。

 「はあ。別に構いませんよ。でもまあ……そりゃまたなんで?」
 「いえ、あたし、そう呼ばれると亢奮するんです」
 「失礼ですけど……奥さん、『ちょっとダンナに内緒で刺激を楽しみたい、いけない人妻』じゃなかったんですか?……別にいいんですけど」
 「あ、それ。そんなふうに『奥さん』って呼んでください。……あの……やっぱり、人妻じゃないと亢奮しません?その、あなたは……人妻に対してすっごいこだわりを持ってらっしゃるとか……そういう感じの嗜好だったりされます?」
 
 女が上目遣いに、訴えるような視線を向けてくる。
 
 「いえ、まあ確かに……そういうですね、まあ他人の奥さんに怪しからんことをする、ってのはかなり男方面からしてみれば、インモラル、ってんですかね?……なんか、とっても悪いことをわかっててやってる感が味わえて、うれしいもんですけどね。わたしはとくに……『人妻』ってことにはこだわりませんよ。実際、あなたはそうじゃないんでしょう?」
 「まあその……以前はそうだったけど……今は違う、っていうか……」
 
 じゃあ別に、『人妻』でいいじゃねえか。あ、でも人妻と『元・人妻』は違うかなあ?
 今のところ、この人は誰ともいかがわしいことを自由にする権利があるわけだし。

 「ああ、以前は結婚しておられた……と。そういうことですね、じゃあ別に……問題ないんじゃないですか?……まあその、なんといいますか……『以前は誰かのものだった女性』ってのもまた、それはそれでそそられるもんですからね。『最近、ごぶさただったんじゃねえのかい?』みたいな感じで(笑)」
 「あっ……」
 
 いきなり女が、くにゃり、と上半身をくねらせ、続いてぱたん、とベッドに倒れ込んだ。
 
 「ど、どうしたんですか奥さん。具合でも悪いんですか?」
 「そ、それ……それです。そんな感じです。…………ですから………なんかそういうゲビた感じ……そういうのに、あたし、すっごく弱いんです……わかります?」
 「ゲビた、って……奥さん」
 
 なんとはなく言ったことが予想外の効果を生んだので、すこし戸惑ってしまった。
 
 「……だから……あたしをその、『貞淑な現役の人妻』だと思って……そんな感じでもっと言いながら、……せ、攻めてくださいません?……あ、やだあたし。『攻めて』とか言っちゃって……何言ってんだろ……」
 「奥さん、俺、ずっとあんたとやりたいと思ってたんだよ。……たまんねえ身体をして、それが人のもんだなんて……俺がどんなにお預けくらって焦らされてたか、あんた判ってんのかい?」
 
 わたしも調子が出てきた。
 
 「んんっ……それいい……すっごくいい感じじゃないですかあ……」女がベッドの上で身悶える。
 「おれがあんたのおっぱいやおけつを見て、どんだけその裸を想像して独り寂しくせんずりぶっこいてたか、あんた知ってるかい?……その間もあんたは……あの冴えねえダンナと毎晩……」
 「……だ、だめです……だめです……岡崎さん……で、よろしかったでしたっけ?」
 「そうです。岡崎です。……あっ、これいいなあ。奥さん。僕のこと、『岡崎さん』って呼んでくれますか?……そうだな、近所に住んでる寂しい独身男で、いつも買い物に行ったり洗濯物を干したりする奥さんを眺めながら、よからぬ想像をたくましくしていた、って設定で……」
 「そ、それ……それいいかも……で、でも岡崎さん……あたしとしては………その、ちょっと……岡崎さんは……あたしのダンナの、会社の同僚で、先輩ってことにしません?……その方が……ああんっ!!い、いやっ!!」
 
 奥さんのダンナさんの会社の同僚。
 しかも先輩。
 俺はその設定にやたら興奮し、気が付けば奥さんに飛びかかり、ブラウスの前を引きちぎっていた。
 
 「……へへへ、いやじゃねえだろう。この前、会社のソフトボール大会で、あんたが俺のことずっと見てたことは知ってんだぜ。あんたバッターボックスに立ったおれの、股間ばっかり見てやがったろ……人妻のくせに、とんだすけべえ女だぜ……あんた、あのダンナじゃ満足できねえんだろ?ええ?」
 「いやっ……だ、だめですっ……岡崎さんっっ!!……主人に、主人にこんなこと知られたら……」
 
 ブラウスのボタンが2~3個飛んだことも気にならないくらいに、『奥さん』はストーリーに入り込んで亢奮しているらしい。わたしも乱れゆく『ニセ人妻』の姿体がシーツの上でくねるのを目で楽しみながら、スカートを、ストッキングを、ブラジャーを……荒々しく剥いていった。


 残りはパンツ一枚、というところになって、『奥さん』はそれを剥ごうとする俺の手を制し、潤んだひとみと上気した頬で、『必死に貞操を守ろうとする人妻』の顔を作った。
 

 「い、今なら、今ならまだ……今ならまだ主人に言いません……主人には何も言いませんから……それだけはゆるして……お願い、岡崎さん……あたしは……あたしはあの人を……愛してるんです」
 「俺だってあんたを愛してるよ、ほれ、こんなに愛してるんだ。握ってみな
 
 そう言ってわたし『岡崎』は、ここ数年来で一番張り詰め、自分で見ても凶悪なくらい赤黒く染まったその肉棒に、『奥さん』の手を導き、しっかりと握らせた。
 
 「ひっ……す、すごい」
 
 『奥さん』の少し冷たい手の感触が、俺の中からますます現実感を奪っていった。
 
 「……どうだい、あの冴えねえダンナのと、どっちが固いよ?ええ?」
 「……そ、そんな」
 「……ほれ、ビックンビックンしてんだろ?あんたのダンナのは、こんなになるかい?……ええ?……あんたのダンナも罪な男だぜ……こんなすけべえな身体が、涎たらして満足させてもらいたがってる、ってのに……それをほったらかしにしとくなんてよ……え?……どうだい?俺とあんたのダンナさんと、っどっちがあんたを愛してる?……固さで計ってみろよ……ええ?聞いてんだよ!どっちのほうが固いんだよ!!!!
 「いやあっ……もう、もうだめ……あなた……ごめんなさい……ゆるして……」
 
 心の中でなにかが途切れた、ような風を装いながら『奥さん』はしっかりと目を閉じ、その少し厚めの唇を開いた。


 
 その後、『奥さん』の身体に『分け入った』わけだが、やはり……『岡崎さん』と『奥さん』の関係性を意識してのそういう行為は、普段よりも数倍強い背徳感を伴い、実に刺激的だった。

 何だろう?
 
 子供の頃にいたずらをして、それがばれるのをムズムズして待つうちに感じた、あの便意に近い感覚?……それがわたしの感じた感覚だ。

 『分け入る』感も通常のセックスの数倍は強かったし、様々な体位を試したけれども、その一回一回の新鮮さときたら……体位を変えるごとに、一度死んで再び生まれ変わるような気分すらした。
 
 「……『ダンナはきっと、こんな格好であんたを可愛がってくれねえんだろ?』……っていうのが……いちばん良かったです……」
 
 すべてが終わってから、『奥さん』ではないその女は、頬を赤らめ、はにかみながらそう言った。
 
 俺はその後服を着て、『奥さんのダンナさんの会社の先輩で奥さんの身体をずっと狙っていた岡崎』から、ただの岡崎という男に戻った。
 
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 みんな、先生のことをキモいというけれど、あたしもそうおもう。
 
 確かに先生は40も前にして独しんだし、太ってるし、肌はきたないし、すぐヒステリーをおこしてキレるし、かわいい子にはえこひいきして、男子にはやたらきびしいし、ほんとにすう年前、4年生の担任を受け持っていたとき、女子が体育の着がえをしていると、やたらと部屋の前をいみもなくうろうろしていた、みたいなうわさもある。

 
 たぶん、ただのうわさじゃなくて本当だと思う。
 クラスの女子はみんな、先生のことがとりはだが立つくらいキモいという。
 

 先生とキスするのと、校舎の裏でかってるウサギのうんこを100個食べるのとどっちがいいか、といわれると、みんなウサギのうんこを食べるほうがマシだ、という。
 

 先生にからだを触られると(じっさいに先生はよく意味もなく女子のからだにさわる)その部分からなんかかぶれてきそうで、みんなすぐにせっけんでよく洗う、と言っている。

 
 先生の息のにおいは、まるで社会見学で見に行ったゴミ処理場よりひどい、という子もいる。

 
 それどころか、先生に見られるとその部分がくさる、という子すらいる。
 

 みんながそう言うのもあたりまえだし、あたしも先生がそんな風に言われるのはとうぜんだと思うし、先生のことはじゅうぶんにキモいと思う。
 


 でも……あたしは今、しんけんになやんでいる
 あたしはちょっと、おかしいのかもしれない。
 

 
 たしかに先生とキスするのは、ウサギのうんこを100個食べるくらい気持ちのわるいことで、想像しただけで、胃のなかからすっぱい液がこみあげてくるけど……。
 

 どちらかをえらべ、と言われたら、あたしは先生とキスをするほうをえらぶかもしれない。
 というか、先生にキスされてるところを、想像してみると……なんだか、むずむずしてくる。
 

 どこが、というとはっきりとは言えないんだけど、お腹の下、ちょうどおへその下15センチななめ下の奥、おしっこが出るあたりとの中間くらい。

 
 とにかくからだの中の、奥の奥のほうが……なんかかゆいような、あついような、ちょっと変なかんじがする。
 

 キスとひとくちに言っても、くちびるとくちびるを合わせるだけではなく、じっさいには男の人が女の人の口の中に舌を入れて(あるいは、その逆もあるそうだ)お互いの舌をからめ合ったり、おたがいのよだれをすったり、飲んだりするらしい。
 お姉ちゃんがよんでいる雑誌にかいてあった。

 
 先生と、くちびるとくちびるを合わせるだけではなくて、先生のあの舌(正視できないくらい、気味のわるい色をしている)が、あたしの口の中に、まるでなめくじのように入ってくるところを想像すると……それでその舌が、あたしの舌を絡めとって、それを吸ったり吸われたりするところを想像すると……。
 

 ああ、またむずむずしてくる。


 先生のことが、実は好きなんだろうか、と考えてみたけど、どうもちがう。
 やっぱり先生はキモいし、キスするところを想像してみると、まず感じるのは、キモさだ。

 でも、その後に、むずむずがやってくる。


 この前、こんなことがあった。
 
 5時間めのじゅぎょう中に、先生がしゃべっているのを見ていると、なぜか先生の口から目がはなせなくなっていた。

 せんせいのくちびるは、白くかたまって、ひび割れていた。
 
 くちびるははれぼったくて、焼いたままほったらかしにしたタラコのようだった。
 しかも、そのタラコはくさっている。
 

 その感しょくを、想像した。
 指で、ふれてみるところを、想像した。
 
 あたしの想像の中で、その表面は、かわいてぱりぱりとしていた。
 でも押すと、ずぶっ、と指がはいってしまう。

 
 あわてて指をぬくけれども、くちびるの中には熱くてぬるぬる、ねばねばしたものがぎっちりと詰まっていて、それは糸を引いてあたしの指さきにからみつく。
 

 うっ、と、吐き気がこみあげてきた。
 想像のなかではなくて、ほんとうのじゅぎょう中に。

 
 あたしの指にからみついたそのねばねば、ぬるぬるした液は、ひどい臭いがする。
 でも、なぜだか想像のなかであたしは、その液のにおいをかいでみたくなってしょうがなくなる。
 

 おそるおそる、においをかいでみる。

 想像どおり、っていうか、想像のなかの想像どおり、それはひどいにおいだ。

 
 社会見学で言ったゴミ処理場なんか、ぜんぜん目じゃない。
 もっと生っぽくて、ところどころ、甘い感じがする。
 いきものだけが持っている、どくとくのなまなましいかおり。
 

 くさったリンゴと、くさった筋子をまぜて、くさった牛乳をかけ、それにゴミ処理場の臭いをうまくブレンドすると、こんな臭いになるのかもしれない。
 

 でもあたしは、その臭いをかいだことで、なにかさいみん術にかかったような感じになる。
 


 どうしても、それをなめてみたくなってしょうがなくなる。


 
 だめ、こんなのなめたら口の中がくさっちゃう。
 ってかあたし、死んじゃうかもしれない


 ……とかなんとか思いつつも、あたしはその気持ちのわるい液がついたゆび先を、じぶんの口に近づけてしまう。
 

 だめ、だめ、ほんとにもう、マジだめ

 
 と思いながらも、あたしの指がどんどん自分のくちびるに近づいてくる。

 
 こんどは、あたしの舌のほうがいうことをきかなくなって……なんとあたしの舌の先がかってに口の中から飛び出して、指のほうをむかえに行ってしまう。

 
 いや、こんなのなめたくない……死んじゃう。

 と思ってあたしの心はそれをきょひするが、なぜかからだが言うことをきかない。
 


 ついに、あたしの舌の先が、そのねばねば、ぬるぬるした液にまみれた指さきに触れる。
 
 
 『あっ………あ………………あ、あまい
 
 
 想像の中で、それはどことなく、甘い味がする。

 
 全身に、さぶいぼが立った。
 お腹の下、おしっこの出るあたりとの中間、身体のおくのむずむずが、たえられないくらいにひどくなった。
 
 え、なんでこんな。
 今、じゅぎょう中だし。
 

 あたしはおしっこに行きたくてしょうがなくなった。

 
 でも、こんな想像をしたあとで……
 手をあげて、『先生、トイレにいかせてください』なんて。
 

 はずかしくて、とても言えない。
 
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 無我夢中で晴美の服を剥いて、さあて一体どんな身体をしてやがるんだこの女はと、やや焦りながら身体を起こして眼鏡を掛けなおし、ベッドの上で仰向けに広がっている彼女の身体を見下ろした。
 

 「え、なに?……ちょっと……眼鏡まで掛けなおして、すけべ

 
 おれに見られていることで羞恥を掻き立てられたのか、まわりの景色に反射するほどに白くしなやかな肢体がシーツの上でくねった。

 思ったとおりの素晴らしい身体だった。

 胸は手のひらに収まるくらいで、あばらが少し浮いたすこし長い胴。くびれた腰にはすこし腰骨が浮いていて、太腿はまっすぐ。ああ、言い忘れたけど臍は縦型だった。
 
 しかし感動するかたわら、そこに現れたのは少々異様なものも含まれていた。
 

 左の乳房の下、臍の右ななめ上10センチのところ、あと、右の内腿のかなりきわどいあたりに……それぞれ黒い“▲”があるのだ。
 

 それらはすべて、黒で、一辺が二cmくらいの正三角形。
 痣か?……と思ったがあまりにもそれらは人工的に正確すぎる。
 

 「……これ、アレ?刺青とか、タトゥーとか、そういうやつか?」
 「え?……あ、これ?……うん、まあ、その……そうかな」
 

 晴美がもじもじと照れくさそうに裸身を(おれにとっては扇情的に)くねらせながら、おれとは視線を合わせずに呟く。
 はっきり言って……普段の晴美は刺青とかそのへんのアッパーなオブジェクトとは縁遠い、地味なイメージの女性である。
 今年で27か8のはずだから、まあ過去にはいろいろあったかも知れないが。


 「なんで……こんな……」
 「いいじゃん。こんなのが身体にある女、好きじゃない?」
 「いや、そのまあ……別に。個人の自由だし」
 「こんなのがあると……気になる?」
 「いや、別に……というかその、むしろ……」
 

 ますますおれは亢奮させられていた。
 イメージギャップというのは亢奮の重要なスパイスだ。
 良く言うだろう?
 清楚系の控えめな女性を脱がしてみれば、いきなり黒下着だったりガーターベルトだったりでそのギャップに亢奮した、とかしないの、とか。陳腐な例で申し訳ないが。
 

 「きゃっ、え、そんなに焦んないでったら………んんっ……」
 

 気が付けばおれは晴美に被いかぶさり、そのすこし厚めの唇に吸い付いていた。
 

 そして……たっぷりと長い時間を掛けて、晴美の身体をねぶりたおした
 

 そうなると気になるのが、身体のあちこちにある“▲”マークである。この状況では、誰もがそうなるだろうと思う。あんた、自分がおれの立場だったらどうなるか、想像してみてくれ。

 
 全身を点検するように丹念に晴美の肉体を舐めまくる。
 晴美の身体は釣り上げられた活きのいい魚のように、ぴちぴちと反応し、跳ね回った。
 よくよく舐めていくと、さらに右の膝の裏にもう一つ、左の足のくるぶしにもう一つ“▲”がみつかった。
 
 よもや、と思って晴美の身体を裏返してみる。
 

 ああ、やっぱり。
 くっきりと浮かび上がった右の鎖骨の下に、“▲”。
 その下、背中から腰のラインに続く右の脇腹にも“▲”。
 左の尻のちょうど中央部分にも“▲”。

 
 その数々の“▲”が、晴美の透きとおるような白い肌にくっきりとコントラストをつけて、浮き上がっているようにさえ見えた。

 
 気が付けばおれは、その合計6つの“▲”を、まるで親の仇みたいに集中的に攻め立てていた。

 
 「ああああっ………そこ………そこだめっ……い、いや、やっぱりそこ、もっと……」
 

 “▲”の部分を攻めると、晴美の反応はさらに数段階激しくなり、青白いほどだった肌にはどんどん朱がさし、ぬめりを帯びていく。
 

 単純に面白いので、おれは夢中になって“▲”を攻めまくった。
 

 「あああ、もうだめ……許して……そこばっかり……おかしくなっちゃう……」
 
 
 と晴美が甘えた猫のような声で赦しを乞うたので、ますます亢奮させられたが、そこで俺はふと我に返った。

 ちょっと待てよ。

 おれは単に、“▲”で示されているところを馬鹿正直に責めているだけじゃないか。
 そんなことでいいのか
 おれは、おれだけの“▲”を……晴美の身体のどこかに探し求めないといけないんじゃないのか。
 

 そこから、おれの探究の旅が始まった。
 晴美の全身をくまなく……まさに舐めないというところはないくらいにまで、自分のだ液が枯れ果てんばかりの勢いで、新たな“▲”の場所を求めて舌で彷徨う。
 

 すでに存在する“▲”を集中的に攻められていたときよりも、晴美の肉体の反応と嬌声はすこし控えめになった(ような気がした)。ますますおれは駆り立てられるように、何かに憑りつかれたように、新たな“▲”を求め続けた。
 
 
 そして、はるかな舌での放浪の末に、おれはついに新たな“▲”を発見した。
 その場所がどこであるかは、ここでは書かない。
 おれだけの秘密だ。

 
 その晩、おれはその箇所を集中的に攻め続けた。
 晴美はほとんど鳴き声を上げておれにしがみつき、すさまじいけいれんと長い滞空時間を伴なう、圧巻の絶頂をおれに見せてくれた。

 心の中で、祝砲が鳴り響いた。
 
 
 
 
 
 2年後の春、晴美が繁華街を別の男と歩いているのを見かけた。
 晴美は俺に気づかなかったので、俺は敢えて声をかけなかった。
 

 あれから晴美の身体には、新たな“▲”が、いくつ刻まれたのだろう、とおれは想像した。
 

 そのうちのひとつが、おれの発見したあの場所であるなら、おれはとても嬉しい。
 
 
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 新入社員諸君、入社おめでとう。
 とくにタチバナ律子くん。君には人事部長として、いや、ひとりの50を前にしたただの男として、心の底からお祝いをしたい。

 
 この不況のなか、我が社は3人の新入社員を迎えることができた。

 そのうちの一人が君、タチバナくんだ。

 
 あとの二人は男子。採ったのはわたしだが、まあどうでもいい。
 片方の名前はたしかウチヤマ?ウチモリだっけ?
 あともう一人のデブは名前も思い出せない。
 

 今日、どうでもいい男子二人と入社式に姿を見せた君は、あの最終面接のときと同じ、黒のリクルートスーツに白い開衿のブラウス。派手めで根性の悪そうな本来の貌を隠すナチュラルメイク。後ろでゆるく束ねた髪は、しっかりと染め直したのが判るつややかな黒髪。
 

 君はとても長身だから、そんな洒落っけのないリクルートスーツ姿がとてもよく似合う。
 

 あまり大きな声では言えないが、わたしには女子のリクルートスーツに対するフェティシズムがあってね。特に、君のように、少し根性の悪そうなスレンダーな女子学生のリクルートスーツ姿に目がない。

 
 普段の君は、どんなファッションなんだろうか?
 その長い膝下、腰から太腿にかけてのタイトスカートのラインから、君が相当自分の脚に自信を持っていることがよくわかる。

 
 ミニスカートが好きなんだろう?
 で、ミニスカートを履くときは生脚なんだろう?
 言わなくてもわかるよ。
 

 君が鮮やかな白のミニスカートで、膝下までのロングブーツを履いて、春の街を軽やかに駆けていく様が目に浮かぶ。
 

 今のところ僕は、肌色のストッキングに包まれた君の脚しか知らない。
 君のその肌のなめらかさは知っている。
 最終面接のときに僕は、ブラウスの開衿部分から覗くきみのなめらかな肌と美しく浮き上がる鎖骨のラインから目が離せなかった。

 
 その根性の悪そうな顔を、ナチュラルメイクで隠し、今にも弾けそうな淫らな本性を秘めた肉体を、シックなダークのリクルートスーツに押し込んで、君は面接からずっと……今日も……フレッシュで純朴なわかい娘を演じ続けている。
 

 でも、おそらくもう、君のそんな姿を見るのは今日が最後だろう。
 君はリクルートスーツを脱ぎ捨て、好みの洋服に着替えるだろう。鮮やかな色のブラウスとストレッチパンツで社内を闊歩する君を想像する。ナチュラルメイクをやめ、髪の色も、スタイルも、君はすこしずつ……周りの先輩女子社員の風あたりや男性社員(わしらおっさん)への反応を伺いながら、本来の自分の姿に戻っていくのだろう。
 
 僕はそれが心待ちでもあり、少し悲しくもある。
 
 僕はリクルートスーツが好きなんだ。
 タチバナ律子という一匹の雌の、淫らな本能を、なんとかその型にはまったスタイルに押し込め、取り繕おうとしているスタイルに僕は激しく駆り立てられる。

 
 ああ、今夜、君と二人っきりになれたら。
 もし場末の部屋で、リクルートスーツの君と二人、寄り添うことができたら。

 
 僕はまず、君の髪を撫でながら、その君の髪を束ねているゴムをほどき、君の髪を解放するだろう。
 ナチュラルカラーの口紅の甘い味を味わいながら、そのやったら肩と腰の詰まったジャケットを脱がせるだろう。そしてスカートには手をつけず、君をベッドに腰掛けさせて……肌色のストッキングの滑らかな感触を堪能する。
 

 多分、今、僕が考えていることを君が知ったならなば、君は僕をキモいと思うだろうな。

 
 いや、思われて当然なのだ。
 僕は人事部長なんだから。
 

 決して、何があっても、僕の気持ちを君に打ち明けることはしまい。
 会社での立場が厳しくなる?
 そんなことはどうだっていい。
 
 僕は人事部長として、毎年入ってくる君たちみたいな女子たちの、ほんの一瞬の季節……リクルートスーツに包まれた季節を……心の奥で煮っころがし、ねじり、なぶり、もてあそび、最後の一滴まで汁を味わうことに、これ以上ないというくらいの幸せを感じている。
 あくまで、心の胸のうちに秘めた、密やかでささやかな愉しみとして。
 
 
 ん?
 
 
 いかんぞ。タチバナくん。
 
 なんでその、ウチヤマだかウチモリだかいう男性新入社員と、楽し気に私語を交わしているのだ。
 彼は確かにイケメンだ。草食系だ。
 でも男なんてみんな、僕と同じように、胸の奥には君たちへの暗くて粘質の欲望を息づかせているんだよ。いや、君はそのことを充分に知ってるだろう?
 

 知っているからこそ、リクルートスーツなどでは隠しきれない淫らさが君たちを輝かせているのだ。

 
 多分今日、入社式が終わると君たち新入社員は……3人で親交を深めるとかなんとか称して、駅前の居酒屋で飲むのだろう。
 そしてあの、もうひとりのデブの男子新入社員(ウチヤマかウチモリでない方)を上手く振り切った君たちは……まさかリクルートスーツのまま、ホテルに消えたりするのではあるまいな。
 
 
 タチバナ君、君は根性が悪そうな顔をして、実は乱暴にされるのが好きなのではないかね。
 

 『ストッキング……破いちゃって……いいよ』

 
 君がその唇をゆがめて、ウチヤマだかウチモリだかに上目づかいで囁く様を想像した。
 
 
 入社式の最中だったが、わたしは嫉妬で気が狂いそうだった。
 
 【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

当然のことながら彼女はすごく怒っていた。
 なぜなら職場でもわたしと倫子が、最寄り駅のラブホテルから出てきたことは尾ひれがついてうわさになっていたからだ。


 「ただのうわさだよ、気にすんなって・・・怒るなよ」
 「知ってんのよ、あたし。あんたがどんな女が好きか。倫子はあんたの好きな女のタイプそのものじゃない」
 

 彼女は頑なだった。
 しかし、うわさはうわさだ。事実ではない。
 実際、わたしは倫子とそういうことは一切していない。
 しかし、彼女の言う『倫子が私の好きな女のタイプそのもの』である、という評価には興味を惹かれた。


 「え?倫子が俺の好きなタイプ、ってそれ、どういう事?」
 「しらばっくれてんじゃねーよ、このけだもの!あんた、前からあーいう女が好きなんでしょ。だってあの子、とんでもないマゾなのよ。会社の女の子たちの間でももっぱらのうわさなの、知ってるでしょ?」


 知らなかった。そうなのか。
 わたしは昔からうわさにすごく疎い。あんまりうわさ話が好きではないのだ。
 だから最近まで大田課長がここ一ヶ月出社していない理由が、女子高生に痴漢で逮捕されたからだということを知らなかった。


 「ちょっと待てよ。いったいなんだってそんなうわさが立ってんだよ。君らはいつもそんなうわさ話ばっかしてんのか」
 「ごまかさないでよ。あたしが問題にしてんのはそっちのうわさじゃなくて、あんたが倫子と駅前のホテルから出てきた、ってほうのうわさじゃない」
 「いや、だからそれはあくまでうわさだから、『それはうわさで事実じゃない』って言うしかないんだよ。
  で、ところで倫子さんが真性マゾだ、っていうのは本当なの?」
 「あんた知ってんでしょ?ってかあんた、倫子とホテルで何してたのよ?一緒にホテルに入って何したのよ?あたしはそれが聞きたいわけ」


 ああ、いい忘れたがわたしは今、彼女の部屋で彼女と二人っきりだ。


 どうも彼女はこの馬鹿馬鹿しいうわさ話を事実と信じて疑わないらしい。
 まあいい。彼女がそれを事実と信じたがっている以上、わたしにできることはそれをできる限りやさしくごまかすことだけだ。


 「まあそれはいいとしてだな」
 「良かないわよ!・・・え、ちょっと、何すんのよ!まだあたし、真面目に話してんだから!」
 「いいじゃんいいじゃん、で、その何、倫子さんがマゾだってうわさ、そっちの方詳しく聞かせてよ」


 言いながらわたしは彼女の背後に回りこみ、首筋にぺとぺととくちびるをつけながら、脇の下あたりをくすぐった。


 「や、やめてよ!あんた頭がおかしいんじゃない?」
 「で、どーいう訳?倫子さんがマゾだってーうわさは・・・それ、教えてくれよ。俺知らないからさ」
 「んっ・・・あんたは・・・いつもそうよ。そうやって、適当にごまかして・・・あっ」
 

 彼女の乳房をやわやわと揉みながら、わたしは彼女の怒りのメーターがどんどん下がっていくのを体感し、ひとまず安心した。


 「・・・そういえば、倫子さんがマゾ、って言われると、そんな感じがしないでもないなあ。言われてみると、あの子、そういう感じするよ」
 「んんっ・・・で、でもあんた・・・だ、だから、あーいうのが好みなんでしょ。うっ・・・・ぜ、全体的に、地味だけどさ、なんか、体つきが・・・その、肉感的で・・・大人しくて・・・んんっ・・・あ、あーいう・・・・なんか、人に対していつも『生きててごめんなさい』って感じをかもし出してるような女が・・・・いっ、いいんでしょ」
 

 そうかもしれない。確かに倫子にはそんなところがある。しかしまあ、それだけでマゾという噂が立つのは妙な話だ。
 いろいろ考えながら、わたしは彼女をいつのまにかベッドの上に仰向けに寝かせて、気がつけばあとはパンツ一枚、という格好まで剥いていた。


 「おれはこの、しなやかな躰と、君のその『生きてて何が悪いのよ』って雰囲気が好きだけどなあ」
 「いやっ・・・ちょっと、いつの間に・・・こんなの・・・あんた、やっぱり倫子にもこんな風にしたわけ?そうなんでしょ!あたしをこうやって弄びながら、実は倫子のこと思い出してんでしょ!」
 「いや、思い出そうにもやってないし。で、倫子さんは何でマゾなの?」
 「知らないわよ、あたしも人づてで聞いただけだから」彼女がぷい、と顔を背ける。
 

 その隙にわたしは彼女の最後の一枚であるパンツを剥ぎ取っていた。



 「どんな話を聞いたの?」
 「あたしも会計課の裕子に聞いただけだから・・・詳しいことはわかんないけど・・・んっ、ちょっと・・・そこだめ・・・」
 「裕子かあ、あいつの話はあてになんないよなあ・・・・だって、太田部長が女装バーに週3で通ってる、ってうわさ、出所はあいつだろ?」
 「でも・・・んっ・・・くっ・・・・それ、だって・・・・ほんとかうそかわかんないじゃん・・・」


 すでに彼女の瞳は潤んでおり、怒りは微塵も感じることができない。ごまかすことはとりあえず成功したようだ。


 「で、裕子、なんだって?・・・倫子さんがマゾだってのは、どういう根拠で言ってるわけ?」
 「・・・・あっ・・・・はっ・・・インターネットの、い、いかがわしい動画サイトあるじゃん・・・・あっ、んっ・・・あんたの好きそうな。あれに・・・倫子そっくりの子が・・・・で、出てたんだって・・・・」
 「SM系のやつ?」
 「そ、そう・・・んんんっ!・・・・そ、そこ、もうちょっとやさしく・・・・目隠しされてたから・・・はっきりと顔はわかんないんだけど・・・り、倫子ってさ、口元にちょっとほくろがあるじゃん・・・・右のところ」
 「そうだっけ?」
 「し、しらばっくれないでよ・・・この変態、けだもの・・・髪型と、体系と、唇と鼻筋と、全体の雰囲気が、倫子そのものだったんだって・・・それがさ・・・・なんか、おっぱいを強調するみたいに・・・アラナワっての?・・・それで胸をぐるぐる巻きにされてて・・・変な覆面を被った3人の男に・・・・あああんっっ!!」


 いけない、焦りすぎた。


 「3人の男に・・・どうされてたの?それで?それで?」
 「・・・・・・いやあ・・・・す、っごく、すっごく硬くなってる・・・・」彼女が何を指していったのかは詳しく言わないでもわかるだろう。「・・・・3人が3人とも・・・大きな電動マッサージ器を持ってて・・・ベッドで万歳の形に縛りつけられた倫子・・・・に似た女の子の・・・・おっぱいやら・・・あそこに・・・・」
 「あそこってどこ?」
 「あっ・・・あんたが、今、触ってるとこ」
 「このべちゃべちゃになってるところか?熱くなってひくついて、後から後からいやらしい蜜が湧き出してくるところか?」
 「・・・へ、変態!・・・おぞましい・・・あんた、そんな風に倫子に言ったんでしょ。ホテルで倫子を縛り上げて、マッサージ器でなぶりたおして・・・・」
 「マッサージ器ってのは、こういうやつのことか?」


 わたしは彼女の部屋に転がっていた、健康器具をとりあげて彼女の目の前にかざした。
 彼女が大きく目を見開く。


 「いや・・・あんた、そ、それで・・・それであたしに何する気よ・・・ま、まさか・・・まさか倫子にしたのと・・・同じことをあたしにしようって・・・」


 彼女の声が興奮と期待で震えていた。
 わたしはマッサージ器のスイッチを入れた。うなりをあげてマッサージ器が振動をはじめる。
 ところで・・・こんなもの、これまで彼女の部屋にあっただろうか?


 「同じことって・・・どんなことしたと思ってんだよ・・・たとえばこいつを、こんなとこに押し当てたりかあ?」
 「いやあっ・・・そこ、そんないきなり、だめっっ!!」


 彼女のしなやかな裸身が大きくのけぞった。
 わたしはもうかなり興奮していたので、倫子のことはどうでもよくなっていた。実際彼女もまた、倫子のことなどどうでもよくなっているのだろう。


 「で、動画の中で、倫子は・・・ほかにどんなことされてたって?・・・・ひょっとして、こんなことかあ?」
 「あああんんっっ!!!・・・・違う、そんな、そんなことは・・・や、やっぱ、やっぱあんた、倫子とホテルでこんなことしたんでしょう?」
 「だから知らないから聞いてんだよ!・・・で、倫子はそれで、どんなことされてたんだ?」
 「全身に・・・ろ、ろ、ローションを塗りたくられて・・・・」
 「ひょっとして、こんなのかあ?」
 「ひゃっ・・・つ、冷たいっっ・・・そ、そんなのだめっっ・・・あ、お、おかしくなっちゃう・・・・・・・」


 ローションはなかったのでジョンソン・ベビーオイルを代用した。




以下は省く。




その晩、家に帰ってから自分のパソコンでそれらしい動画を探してみたが、結局見つからなかった。


翌日、昼休みの後、廊下で倫子とすれ違った。
『生きていてすみません』という感じがしないでもないなあ、とも思った。


昼から勃起した。


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 人生に一度でいいから、冗談では無く、大まじで、『身体は正直だぜ』という台詞を吐いてみたいのである。
 もちろん、セックスの最中にだ。
 いや、言おうと思えば恋人なり、妻なり、愛人なり、あるいはお金でそういうことをさせてもらえる女性に対してなら、いくらでも言えるはずだ。しかし、それは冗談が前提であって、いわばイメージプレイのようなものだ。
 
 女性にたわむれに
 
 『お代官様~』とか『先生、ダメだよ』とか『社長、困ります』とか言ってもらう。
 そうした他愛のない遊びに過ぎない。
 
 『身体は正直だぜ』を満たすには、以下のような条件が必要である。
 

●相手の女性は、わたしとの性行為に積極的ではない
●相手の女性は、むしろわたしには嫌悪感を抱いている
●相手の女性は、むしろわたしとの性行為を忌わしいものと感じている

 これが相手の女性にとって必要な要件だ。

 かといって、これはレイプではない。

 暴力的に女性を組み伏せてどうこう、というのは基本的に好きではないし、(別にいい人ぶっているわけではないが)そういうことをする人間、もしくはしたいと願う人間は唾棄すべき輩だと考えている。
 
 しかし、わたしの望む『身体は正直だぜ』セックスにおいては、相手側の女性は、わたしに対してまったく好意を抱いていないことが必要だ。むしろ、蔑み、嫌悪され、おぞましいとさえ感じられているほうがいいかもしれない。
 
 しかし、相手の女性は、何らかの条件と引き換えに、その忌わしい相手であるところのわたしとセックスをしなければならない状況にある。
 わたしは何らかの事情で、彼女より優位な立場にあり、彼女にセックスを要求できる立場にある。
 
 
 そのためには、わたしには以下のような条件が必要となってくる。


●わたしは、相手の女性に何らかの貸しがある(返せない額のカネを貸している、など)
●わたしは、そうした立場を大いに活用し、人の弱味につけこむゲスである。
●わたし自身、自分のそういう卑劣さを自嘲的に楽しんでいる。


 これらの要素はつまり、相手の女性の嫌悪感をますます掻き立てることに寄与する。
 相手は、女性に大きな貸しをつくり、その賠償を身体での奉仕に求めるようなゲス野郎である。
 わたしが女性ならば、こんな男とはけっしてセックスしたくない。

 よほどの事情でも無いかぎりは。
 
 しかしまあ、たとえば前述したようにわたしに多額の借金があるとか、わたしの自慢の壷(時価数千万相当)を割ったとか、わたしが有名私立進学校の理事長で息子をどうしても入学させたい、とか、わたしのベンツ(むろん、わたしはベンツなど持っていない。というかペーパードライバーだ)に接触事故を起こして彼女が示談を望んで来たとか、いたずら半分でスーパーで万引きをした結果、店長であるわたしに発見され、どうしても警察に届けてほしくない、とか、そういった陳腐でありふれた事情において、彼女はわたしとセックスせねばならない状況にある。
 
 書き連ねてみると、実に陳腐だ。

 理由はともあれ、こうしたポルノにおいては、女性を追い込むためのこうした状況をいろいろとでっち上げねばならない。
 
 ミステリー小説において、殺人のトリックは巧妙でも殺人の動機がお粗末であることが多いように、ポルノ的な妄想は『いかにいやらしくするか』に重きが置かれ、その事情はおざなりであることが多い。
 
 ともあれ、そうした事情において、わたしと、決してわたしとのセックスに積極的ではない女性との間で執り行われるセックスは、以下のような状況と手順で行われるべきである。


●場所はできるだけしけた処がよい(場末の連れ込みホテル……ベッドが丸くて天上が鏡)
●ちょっと女性は酒が入っている。おぞましい行為を行うまえの景気づけである。
●わたしは先にベッドに腰掛け煙草かなにかを吸っている。
●女性には立ったまま、着ているものを一枚一枚自分で脱がせる。


 いや、それは強制わいせつだろう、と人は言うかもしれないが、問題はそう単純ではない。
 なぜなら、


●女性は、半ばこうした羽目に陥った状況に関して、一種の諦観を抱いている。
●わたしは決して行為を無理強いしない。すべてを女性の投げやりな意志に任せている。

 からだ。
 つまり、わたしは彼女がそのような辱めを甘んじらざるを得ない状況を作り出し、その状況を最大限に有効活用しているわけではあるが、最終的な判断決定は彼女の意志に任せている。
 つまり、
 
●彼女がわたしとそうしたしけた小部屋(ベッドが丸くて天井が鏡)にいるのは、彼女の意志である。
●彼女に服を脱ぐように命じたのはわたしであるが、脱いでいるのは彼女である。
●これから起こりうる事態に大しては、彼女は有るていど覚悟している。

 のだ。
 
 さて、全裸になった彼女(もしくは、上下の下着くらいは自分の手で剥がしてもいいかもしれないが、やはり最後まで自分で脱がせて彼女の葛藤を最後の一滴までしゃぶりつくすのが本物のゲスだ)をベッドに仰向けに寝かせる。
 
 おそらく彼女は、全身をさらしながら、顔をそむけ、わたしとは視線を合わせようとしない。
 ここまでしたんだから、あとはあんたが勝手に好きにしてよ、と投げやりな態度で、わたしに身体を差し出す。その諦めきった表情の奥に、
 
 『ぜったいにこの状況の愉悦を、この忌わしい男と共有したりするものか』
 
 という一縷の意志の種火がちらちらと息づいていたりすれば言う事なしである。
 

 そこから行う前戯とは、以下のようなものだ。
 
●できるだけ長い時間をかけて彼女の肉体を鑑賞し、手を触れるのを最大限に我慢する。
●愛撫はできるだけやさしく、盲のマッサージ師になったつもりで。
●女性に配偶者や伴侶がいる場合、『いつも相手はどんなふうにするんだ』などと聞く。
●持てるボキャブラリーを最大限に駆使して、言葉で責め続ける。


 はてさて、ここに忍耐と努力、そして自制心が必要である。
 彼女の肉体に何らかの反応が生じるまで、決してそれ以上の段階に移ってはならない。


 彼女の吐息が乱れ、その身体がじわじわと遠慮がちにくねり、うっすらと上気した肌に汗の湿りが浮き(そのために予め室温は高めに設定しておくべきかもしれない)、すこし開いた唇の隙間から……反応の証しが聞き取れるレベルの音声となって表出されるまでは、たとえ、何時間でも何日でも何週間でも、耐え忍び、いじましくもいやらしい責めを続けなければならない。照れがあってもならないし、『一体俺は何のためにこんなことをしているんだ』と素に返ってもならない。
 
 
 やがて彼女の肉体が、わたしを蔑み、憎み、嫌い、忌む心を裏切って、物理的な反応を見せざるを得ない瞬間がやってくる。いや、やってきてほしいとわたしは願う。
 
 
 そしてその瞬間に、わたしは勝ちどきのファンファーレを胸に秘め、わざと低く、小さく囁くのだ。
 
 
 『身体は正直だぜ……
 
 
 なぜわたしにこの妄想を実現できないか?
 
 わたしがゲスではなく、善良で誠実だからだ。
【完】

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 あ、またエア痴漢だ。


 反対側のドアの前に立ってる丸顔の30代なかば、いかにも溜まってそうなヨレたスーツのサラリーマン。
 今日発売の『ビックコミックスピリッツ』を読むふりをしながら、ちらちらとあたしのむき出しのひざ小僧と、紺のハイソックスのあたりを視線でくすぐってくる。


 あたしは今日、部活ですりむいたので、膝小僧にバンドエイドを貼っていた。


 どうもそれが、おっさんの目に留まったらしい。

 エア痴漢にとってチラ見は、運動の前の準備体操、映画の本編の前の予告編、コース料理のはじめのオードブル、あるいはセックスの前の前戯、または本ものの痴漢が手のひらで本格的に揉んでくる前に手の甲で遠慮がちに触れるあの動作と同じだ。


 おっさんがチラ、チラと視線を向けてくるたびに、あたしの左ひざ小僧の傷が、なぜだか反応してズキン、ズキンとうずいた。


 あたしは何故か、照れくさくなってうつむいていた。


 あたしが気付いていないと思っているのだろうか。
 おっさんはチラ見から次の段階に移ったようだ。


 今や、手にしている『ビッグコミックスピリッツ』に目をやりもしない。
 ただ、手に持ってるだけ。
 視線はあたしの膝小僧から這い上がり、太腿あたりを撫ぜている。


 あたしはぞくっ、と武者震いみたいなものを感じて、全身に鳥肌を浮かせた。
 それがおっさんに気付かれなければいいけど。


 ああ、やっぱり今日はスカートを昨日より一折、短くしたからだろうか。
 でもこれくらいは、クラスの皆んなに比べたら、ずっと長いくらいだ。
 少なくとも、2センチは長い。


 こわごわ、少し視線を上げて……おっさんの顔を見た。


 おっさんは目を血走らせて、あたしの太腿をガン見していた。


 『いやっ


 あたしは思わず顔を背けた。
 気が付けばほっぺたがぼうっと熱くなっていた。
 心臓がどきどきして、その鼓動が耳の中まで響いていた。
 呼吸が乱れて、最近ちょっと出っ張ってきたブラウスの胸が、激しく上下していた。


 だめだ、ここから逃げないと。


 でも、車内はある程度混んでいて、人込みを掻き分けて別の位置に移動するのは、いかにも不自然だ。
 かといって見られているだけでおっさんに『やめてください』と言うのも何だし……。
 あたしはどうしていいかわからなくなって、もじもじと太腿をすり合わせた。


 そんなあたしの反応に気を良くしたのか、おっさんはさらに大胆に、あたしの太腿に視線を絡めてくる。
 まさに絡み付いてくるようないやらしい視線だった。


 触れるか触れないかの微妙な加減で(触れてないけど)撫で回され、逃れる術のないあたしの太腿は何度も……ひくっ、ひくっ、と男を悦ばせる反応を見せた。


 『もうやだ……これ以上、これ以上見られると……』


 おっさんにとってあたしは、これ以上ないというくらいに美味しいカモだった。


 せめてもの抵抗として……あたしは躰を何とか動かして男に背を向けてみた。それがどんな悲劇を生むとも知らずに……あたし、なんて子供だったんだろう。


 窓から外の景色を見るふりをして、おっさんの視線のを感じないように、感じないように、意識を分散させようとした。


 でも、おっさんはそんなことで諦めるようなやわなエア痴漢ではなかった。


 『ひっ……そ、そんな


 むしろあたしは、背を向けることで少しテカりの出たスカートのお尻を、おっさんの前に差し出していたのだ。


 『だ、だめっ!』


 太腿の裏側からお尻へ続くラインを、おっさんの視線が這い上がってきた。
 そしてスカートの裾のぎりぎりのラインを執拗にくすぐりながら……あたしのさらなる反応をなんとか引き出そうとする。


 おっさんの視線は、レーザー光線になってあたしのスカートを焼き尽くさんばかりだった。
 念力で引き裂かんばかりだった。


 レーザー光線でも念力でもいいけど、この込み合った車内でスカートを取り払われて、パンツを丸出しにしている自分の姿を想像した。
 その恥ずかしさを想像するだけで、あたしはもう、気が遠くなりそうだった。


 『早く、早く駅について……お願い……』


 あたしは目を閉じ、しっかり唇を結んで、ひたすらあたしの太腿を撫で上げるおっさんの視線に耐えていた。


 でも、甘かった。
 おっさんはその限られた時間で、あたしを辱め尽くすつもりだったのだ。


 『……そ、そこは……そこはだめっっ!!』


 なんとおっさんは、緊張と亢奮でじっとりと汗を吹き出していた、あたしの膝の裏をねぶりはじめたのだ。


 “……おやおや……こんなにじっとりさせて……なんていやらしい子なんだ……“


 おっさんがそんなふうに、あたしの耳もとで囁いた(気がした)。


 『だめっ……そんな、そんな、そんな汚いところを……ああんっ!!』


 あたしが羞恥で身悶えれば身悶えるほど、おっさんはさらなる嗜虐心をかきたてられ、さらに執拗な視線による愛撫をエスカレートさせた。
 気がつけば目の前の窓ガラスが、あたしが吐いた吐息ですっかり真っ白に曇っていた。


 『も……もうだめ……これ以上、これ以上されたら………』


 もはや立っているのがやっとという状態で、目の前が真っ白になりかけていた時だった。


 不意に、目の前のドアが開いた。
 電車が駅についたのだ。


 あたしは人込みの中、ほとんど夢遊病者のような足どりで、ホームに押し出されていた。

 


 そのまま放心状態で立ち尽くしていると、おっさんがあたしの脇を通り過ぎた。手にはあの、『ビッグコミックスピリッツ』を持っている。


 おっさんは改札へ続く階段に消える前、その丸顔をあたしに一瞬向けて、にやり、と口元を歪ませた。いや、あるいはあたしにはそう見えただけなのかも知れない。


 “良かったぜ。ごちそうさま


 おっさんがあたしに向かって、唇の動きだけでそう呟いた(ような気がした)

【完】

テーマ:恋愛:エロス:官能小説 - ジャンル:小説・文学

ついったー

やってるゲス

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