SOD CAFE
“LOVE”や“FREEDOM”で世界は変わらないので、SOD CAFEへ(嘲)
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 「あなたみたいな被疑者ははじめてです」その女刑事が言った。「一体、いきなり電車の中で女子高生の口に指を突っ込んで何が楽しいんですか?」


 まだ30前、というところだろうか。
 ダークグレーのスーツに白いブラウス、髪は後ろでひっつめにしている。
 ダサい身なりだ。
 基本的にファッションには関心がないのだろう。
 

 少し神経質そうだが、とても整った、かしこそうな顔をしている。
 眉が印象的で、きりっとした意志的な彼女の性格を表している。


 しかし残念なことだ。
 見かけほど彼女は知性にも感受性にも優れているわけではないらしい。

 
 わたしはカツ丼を食べ終えるまで返事をしなかった。
 別に黙秘権を行使してるわけじゃない。
 こいつにはわたしを裁く権利はないな、と改めて悟ったまでの話だ。


 「あの、聞いてます?」刑事はさらに続けた。「何すましてるんですか?……いい年して、いったい何考えてるんですか?……被害者の女の子、かわいそうに泣いてましたよ。よっぽど気持ち悪かったんでしょうね。わたしがあの子だったら、あなた、窓から放り出してるとこですよ。一体全体、どういうふうに生きてきたら、そんなに気持ち悪くなれるんですか?……ねえ、聞いてんだよって
 「……タバコ」
 「は?」
 「……タバコ……一本いただけますか」
 「いい度胸じゃねえか!

 女刑事が立ち上がってスチール机に蹴りを入れた。

 細くきれいな脚だったが、その蹴りは重かった。
 彼女ならわたしを一瞬でぶちのめし、窓から放り出すのはわけないだろうな、と思った。
 ブリキの灰皿が天板から床に転がり落ちて、派手な音を立てた。
 
 どうってことはなかった。
 オマワリなんか、この程度の連中だ。
 この女刑事さんも、しょせんは単なるオマワリでしかないらしい。


 「……刑事さん、聞きたかったんじゃなかったんですか?……わたしがなぜ、あの女子高生の口の中に指を突っ込んだのかを?」わたしは咳払いし、刑事を見上げた。「わたしの説明を聞けば、刑事さんもよく理解できるし、調書も作成しやすいんじゃないですかねえ?」
 「『なぜ』って、変態が何考えてようが、知ったこっちゃねーっての!」
 「……わからないだろうなあ……女性には
 「は?」女刑事の顔が、かっと赤くなる。「いま、なんつった?お前?
 「しょせんは女性ですからね。男性の気持ちなんか、結局わからないだろう、つったんですよ」
 「………この野郎……」


 怒ってる怒ってる。
 こう言えば怒ると思ったよ。
 今、女刑事さんは冷静さを取り戻そうと必死のようだった。
 その様子を見ていると……なぜか軽く勃起してきた。


 女刑事はしばらく、じりじりしながら、わたしが座る席の周りをうろうろと歩き回った。
 なかなか自分を取り戻せないのだろう。
 わたしは、彼女が落ち着きを取り戻すのを辛抱強く待った。
 
 20分も経ったろうか……ついに彼女は根負けした様子で、大きくため息を吐くと、椅子に座りなおした。

 「……わかりました。じゃ、聞かせてもらいましょう。あなたが……その女子高生の口に指を突っ込んだ理由って何?わかるように説明してちょうだいよ」少し口の端をゆがめて、挑戦的に、底意地悪そうに笑う。「……できるの?ちゃんと、まともな人間にも理解できるように説明できるわけ?」


 タバコが差し出された。
 わたしはそれを一本受け取り、女刑事が差し出してくれたライターで火をつけ、深々と煙を吸い込んだ。
 床に落ちていた灰皿は、女刑事の手によってまた机の上に戻された。


 「まず、わたしが10代だった頃の話をしましょう……わたしにはじめて彼女ができたのは、高校一年生の頃……そう、16歳の頃でした。あれから20年かあ……時の流れは早いものですね……なんですか?……わたしにそんな頃があったなんて、信じられませんか?……刑事さんにもあったでしょう?……16歳のころが?……時々、思い出してなんとなーく空しい気分になることはないですか?……あの頃は良かったなあ……とか、あの頃に比べて、今の自分はなんて穢れてしまったんだ……とか思ったりしてね」
 「……いや、穢れてるのはあなただけだから」
 「刑事さん、その頃は恋愛をしたりしましたか?」
 「あなたには関係ありません」女刑事はぴしゃりと言った。
 「……今、つきあってる男性はいたりしますか?……あ、ひよっとすると処女だったりして」

 
 女刑事は無言で机の脚を蹴った。
 机の上で灰皿が駒のように回る。
 まあいい……わたしは話を続けた。


 「まあいいです。とにかくわたしは16歳の頃、はじめて恋をしました。ええ、クラスメイトの中津川さん……いやあ、いい娘だったなあ……肩までの長い髪がとてもきれいでね……頭のいい、とても素直な子でした……怒ると、すぐ顔に出ちゃうとこなんか、とっても可愛かったなあ……あ、そういえば、怒ったときの顔がちょっと刑事さんに似てたかもですね」
 「いいから。続けて」
 「……まあ当時は子どもでしたし、当時の子どもは今の子どもとは違いますからね……わたしたちも、ほんとうに清い交際を続けていたもんですよ……ええ、日曜日ごとに公園でデートしたり、自転車二人乗りしたり、動物園に行ったりね……まったく、あの頃はよかった。何もかもが、キラキラと輝いて見えたもんです。
 「……手をつないだのも、付き合い出して2ヶ月経ってからのことです……はじめて中津川さんの手を握ったときの感覚は、今でもはっきり覚えています……ちょうど今くらいの、暑さも少し和らいできた季節の、学校の帰り途のことでした。
 とても柔らかい……ちょっと湿った手でしたね。無論、わたしの手の平は緊張でもっと汗ばんでいて、不快だったでしょうけど……」


 そういいながら、わたしはじっと自分の手を見た。
 ちらりと女刑事を見上げる。
 その表情は、まるでゴキブリでも見るような不快感を露にしている。


 「……ええ、本当に清い交際でした……結局、二人はセックスはおろか、結局キスすらできませんでした……もちろんわたしも当時16歳。頭の中はいやらしい妄想で一杯でしたよ。
 毎晩のように、夏服のブラウスの下にある、中津川さんのほっそりとした伸びやかな躰を思い描いては、オナニーに耽ったものです……あのかしこくて爽やかな中津川さんに、様々な姿態を取らせては……恥ずかしい下着を着せては……あるいは全裸にひんむいては……妄想の中で彼女の体をまさぐり、捏ね、揉みしだき、思うがままに弄んだものです……」
 ………いいから続けて。ってか、手短かにしてくださいね。余計なことはいいから」
 
 女刑事は苛立ちを隠さなかった。

 「……でもね、その当時のわたしはまだ、女性の躰というものに触れたことがなかったんです。
 ……唯一の例外、中津川さんの手のひらを除いてはね。
 だから……妄想するときは、彼女の手のひらの感触を思い出し、それをできるだけイマジネーションで拡大して、そこから彼女の細い肩や……少し長めだった胴の細い腰や……小ぶりな乳房や……スカートから覗く、すらりとした健康的な太腿や……少年のように固そうなお尻や……まあ、あとは絵として思い浮かべる手立てもなかった、彼女の太腿の奥にある……新鮮で、濡れそぼり、小さく恥ずかしそうに身をすくめている……その女の部分の感触を……演繹的に想像していくしかなかったのです。
 ……妄想の中のすべての感触の原型は……彼女の手のひらの感触でした。
 少し湿った、少し冷たい、柔らかい手のひらだったのです」
 「……はあ」


 女刑事の不快感が、どんどん増していくのを全身で感じ、わたしの気分も高まってきた。


 「……でも当時のわたしはほんとうに純粋でした……妄想の中とはいえ、そんなふうに彼女のことを好き勝手に弄んだあとは……そりゃあもう、毎度のように痺れるような射精感を味わったもんですが……その後には決まって泥のような後悔と懺悔の気持ちに打ちひしがれるのです。
 ……目の前のティッシュの中に吐き出された、自らの精液が濃厚であればあるほど……その透明度が低く、その色づきが白よりもむしろクリーム色に近ければ近いほど……その質感が、粘液というよりはほとんど水銀に近いような状態であればあるほど……
 わたしは激しい罪悪感に我が身を焦がしたものです……ティッシュの中の精液の濃さが、わたしの罪深さの証でした」

 「そのへん、もういいから」女刑事が、先を促した。

 「……失礼しました……中津川さんを思い描いてオナニーに耽った翌日などは、彼女の目もまともに見れないくらいに、当時のわたしは善良で性的なことに関しては奥手だったのです。
 中津川さんのほうも、同じであるように思えました……彼女は性的な興味とは……これはあくまで当時の16歳のわたしから見た印象でしかありませんが……まったく無縁であるようにさえ思えました。それほど、彼女の印象は清清しく、透きとおった、侵しがたいものでした。
 ……まあ当時、童貞で、家族には女兄弟がいなかったわたしには、少なくともそのように信じられたのです……今となってみれば……彼女だって、わたしと同じだったはずです。……そうでしょう?刑事さん?……刑事さんだって、それくらいの年ごろには……セックスに対する憧れでいっぱいだったでしょう?……片時もセックスに関する考えが、頭を離れなかったでしょう……?……そうじゃないですか?
 ……16歳のときを思い出してください……それくらいの年齢の子どもたちにとって、セックスというのは最大関心事項であるはずです。男も女も関係ありません……刑事さんだって、それくらいの年齢には好きな男子の一人や二人、いたでしょう?……夜、ベッドの中で眠りにつく前に……その男の子たちと、淫らなことをする妄想にふけり、パジャマのズボンの中に手を突っ込んでいたでしょう……?………ねえ、どうですか、刑事さん……ひょっとして、今もそうですか?


 女刑事が、また机の脚を蹴った。
 今度はまた、灰皿が床に転げ落ち、わたしがそれまでに出した灰が床に飛び散る。
 わたしは灰皿を、自分で拾った。
 指の間に挟まったタバコはもう、半分以上が燃え尽きている。


 「……まあいいでしょう。当時のわたしには、そんなことは思いも寄りませんでした……中津川さんに対して、そんなふうな妄想を抱いているのは、わたしの方だけで……彼女のほうはわたしのイノセントな思いを信じきっている……そんなふうに思えたものです……わたしは何か、彼女を騙しているような……彼女を裏切っているような……そんな思いを拭えませんでした……あの日……夏休み最後の日曜日に……遊園地でふたり、観覧車に乗るまでは」
 「……はあ……やっと話が核心に近づいてきましたね……」


 女刑事が、またため息をつく。
 わたしは短くなったタバコを、控えめに吸い込んだ。
 パチパチと、葉がはぜる音がした。


 「観覧車が一番高い位置に近づく少し前……西日の差し込むゴンドラの中で……中津川さんが不意に口を効いたのです。
 
 『あたしと……キスとかしたくないの?』
 『え?』わたしは、わが耳を疑いました。
 『……つきあってけっこう経つけど、あたしにキスしたいとか思わないの?』……彼女は妙に落ち着いた声で続けました……『……キスだけじゃなくて、おっぱいに触りたいとか……服を脱がせたいとか……あそこを触りたいとか……そんなこと、したくないの?
 『そ、そんな……』あまりに突然で、わたしは返答に困りました『で、でも……き、君がいいなら……』
 
 そのときに、中津川さんが見せた寂しそうな笑顔は、いまでもたまに夢に見ることがあります。

 『……もうだめ。あたしのほうから言うまで待たせたから、あんたの負け』そして、また窓の外に視線を移すと……呟くように言いました『わたしたち、別れましょう』 
 『…………』

 まったく……なんとあの頃のわたしは、幼く、愚かだったのでしょうか……まあ若いころのことを思い出して、悔やんでも悔やみきれないことや、顔から火が出るほど恥ずかしいことのひとつやふたつ……誰にだってあるものでしょう?……ええ、今から思えば……あの瞬間にわたしの人生は変わったのです。
 女性が自らの思いを口にするまで、待たせてはいけないんだ。
 それが彼女がわたしに教えてくれた、人生の教訓でした」

 「ちょっと待ってよ」女刑事が口を挟んだ。「だからって……電車の中で見ず知らずの女子高生の口の中に指を突っ込んだって………ええ?それで世間様が納得するって……マジで考えてるの?」

 さんざん気を持たせてこれかよ、という調子で、女刑事は失望と怒りをむき出しにしていた。
 これだから素人は困る。

 「……刑事さん、話は最後まで聞いてください。わたしの話の核心はここからです。
 ……観覧車のゴンドラはゆっくりと下降をはじめました……中津川さんの口から告げられた突然の別離に……わたしは完全に混乱し、言葉を失っていました……。
 
 彼女のその時の心境をほんとうに理解できたのは、それからずっと大人になってからのことです。……当時のわたしには、何がどう悪かったのか、一体何が彼女にこんなふうな別れを決断させたのか……まったく理解できませんでした。ただただ、混乱する一方でね……その直後の中津川さんの行動は、さらにわたしを混乱させました。
 
 『手、かしてよ』中津川さんが不意に言いました『ねえ、早く』
 
 わたしは意味もわからず、自分の右手を彼女に差し出しました。彼女は……あの湿った、冷たい手でわたしの手をそっと包み込むと……自分の顔に引き寄せ、目を閉じて……わたしの人差し指を、口に含んだのです

 「え?」女刑事が、ぽかんと口を開ける。

 「あっ、と思ったときには、もう彼女の舌は淫らに動き始めていました。彼女のちいさな、熱い舌先が、わたしの人差し指の爪の甘皮のあたりをまさぐったとき……わたしの躰は、ぴょん、と座席から跳ね上がるくらいの生まれてはじめての戦慄におそわれました……。

 ええ、毎夜重ねていた空しい自分への慰めから得られる快感など、あの中津川さんのいたずらな舌が奏でた愛撫に比べれば……蚊のひと刺しのようなものです……そのとき、手も洗っていなかったですし……わたしの汚い指が、彼女の穢れのない口内の粘膜を犯しているかと思うと……昨日も、彼女の淫らな姿態を想像しながらその人差し指で、自分の躰の一番きたない部分である陰茎の先、尿道口のあたりをまさぐったことを思うと……その罪悪感が、背徳的な快感となって静電気のようにわたしの全身を駆け巡りました。
 
 全身の感覚が、中津川さんが舌でからかう指先に集中したようでした。

 彼女にしてみても……そんな経験はこれまでになかったはずです。これは、青春の思い出を清らかなものにしておきたい穢れた大人としての今のわたしの願望ではなく、事実だと思います。

 経験がないからこそ、彼女の舌先の動きは、かくも淫らだったのです。

 恐らく彼女は、当時のわたしと同じように……はちきれんばかりの性への憧れと妄想の中で喘ぎ、慰めても慰めてもあふれ出る欲求のはけ口を、どこかに求めていたのでしょう。
 いたずらで、きまぐれで、ひたむきで、かつ創意工夫に富んだ彼女のその舌使いに、すべてが表れていました………。

 ゴンドラが地上に戻るまであと少しでした……わたしは、夢中になって彼女の右手を取り……その人差し指を口に含むと……彼女の気持ちに応えるように、舌を使い始めたのです……」

 「……それから?」女刑事が聞いた。のない彼女の声を聞くのは、これがはじめてだった。「それから、どうなったの?」
 「何も」わたしは答えた。「ゴンドラを降りて、遊園地を出て、二人で電車に乗って……それぞれ、お互いの家に帰りました。それっきりです。卒業までに学校では顔を合わせましたが……それ以来、一度も口を効いたことはありません」
 「…………はあ」

 女刑事は、何か居心地が悪そうに椅子の上でもぞもぞと動いた。

 「それからですね。わたしが女性の口に……興味を持ち始めたのは。あれから何人もの女とセックスしました。中にはひどい女もいたし、いい女もいました。中津川さんに似たおもかげを持つ女もいましたし、まったく正反対の印象の女もいました。……でも……セックスするときわたしは……いつも女の口に指をこじ入れて、女がわたしの指にどんなふうに舌を絡めてくるかを試すのです
 ……それでセックスの価値を計るようになりました……いろんな女がいましたよ……ちゅぷちゅぷと、くちびるでわたしの指の側面を扱く女。指の根本までくわえ込んで、全体に舌を絡めてくる女……そして……中津川さんみたいに……指先だけを、戸惑いながら……やさしく、いたずらに、くすぐってくる女………」

 女刑事の顔に、また険が戻ってきた。

 「……そのうちに、わたしはセックスそのものを、必要としなくなりました。要は、女の口の中に、指さえ入れられればいい。どうせ入れるなら……見知らぬ女子高生のほうがいい……中津川さんのおもかげを、少しでも味わえるのだったら」

 不意にわたしは、人差し指を女刑事に突き出した。

 「……刑事さんのその怒った顔が、中津川さんにほんとうによく似ています」そして、声のトーンを下げて言った「どうです……刑事さんも……味わってみませんか?わたしの指


 女刑事はにっこり笑うと、まるで宣誓するように、右の手のひらを自分の肩の前で翳した。
 そしてそのまま、勢いよく手のひらを前方に突き出した。
 突き出した先には、わたしの人差し指があった。




 折れなかったが、わたしの人差し指は3倍に腫れあがった。
 弁護士にどうしたのか、と聞かれるだろうが、『不注意でつき指した』と答えるつもりだ。



 それがわたしの矜持である。


【完】 
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 ええ、主人は、いつもその……セックスのときに……あのクスリを使いました。


 ってか……なんでわたしがこんなことを説明して、はずかしめを受けなきゃいけないんですか?


 ……はい、主人があのクスリを使用していると知ったのは、去年の暮れのことです。
 最初はほんと、信じられませんでした。
 稼ぎは少ないけど、わたしにも息子にも、とっても優しい主人だったのに……。


 「一体、何を考えてるの???あなた、一児の父なのよ?」って……わたし、泣きながらあの人に言いました「もう少し、オトナとしての自覚を持ってよ!!」
 

 するとあの人、まるで子供みたいにふて腐れてしまって……。
 確かに子供っぽいところが多い人でした。
 でも、わたしも彼の……そんな子供っぽいところに母性本能をくすぐられたことは事実です。あの人と一緒になろうと思ったのも、そんな彼のことをカワイイと思ったからでした。少年みたいに拗ねる彼の仕草が、なんか愛おしくって……でも、いつまでもそんな彼を許していたわたしも、悪かったのかも知れません。


 「……どうせ俺にはオトナの自覚はねえよ。稼ぎもお前より少ねえしな」
 「そんなこと、言ってんじゃないでしょ??」
 「そういうお前はどうなんだよ。いつまでも若くねえんだぜ?……その調子で、いったいいつまで稼いでいけると思ってんだよ?」
 「稼ぎのことなんか話してないじゃない!!」わたしは思わず声を荒げていました。「あ、そう?稼ぎのこと?あなたが稼ぎのこと言うんだったら、あたしも言うわよ。いったいあんたのそのろくでもないクスリ、いったいいくらで買ってきたのよ!あんたの少ない稼ぎで、よくもまあそんなもんを買える余裕があったわね!!」
 「ろくでもないクスリだって?」

 彼はいきなり、立ち上がりました。
 すごい剣幕でした。
 あ、わたし、殴られる、と思いました。

 殴られるか……それともその時、子供が学校に行っていたので……つまり自宅に、わたしと主人のふたりっきりだったので……押し倒されて、そのまま……ヤられちゃうかな、と思ったりもしました。
 たまに主人はそんなふうに子供っぽくキレると、そういうことをしてくることがあったのです。

 
 そういうときはなんだか……わたしのほうも……さっき言ったみたいなヘンな母性本能みたいなのを掻きたてられちゃって……ええ、ヘンだというのは自分でもわかっています……ああ、怒ったからってこんなことしかできないこの人って、ほんとカワイイ、みたいな感じで……彼のことがすっごく愛おしく思えてきたりなんかしちゃって……なんだか激しく、燃えちゃうんです。


 そんなわけだったので、わたしはその時、一瞬だけ、期待してしまいました。


 「……な、何よ。殴る気……?それとも……」わたしは言いました「……それとも……」
 「お前、今、このクスリのことろくでもない、って言ったよな??」
 「え?」
 「何でお前、このクスリのことをろくでもない、なんて言えるんだよ??……やってみたことないだろ?……ええ?」
 「……な、何言ってんの?」

 キレるのそこかよ
 わたしは正直、がっかりしました。
 っていうか……そんなところでキレるなんて……ああ、この人は一体どこまで子供なんでしょうか。

 「やってみたこともない奴に、このクスリの素晴らしさがわかってたまるかよ!……なんでお前、やってみたこともないのに、この俺にそんな偉そうに説教できんだよ!」
 「………わたしたち、別れましょう」

 思わず、口走ってしまいました。
 
 「え?」
 
 その時の彼の顔といったら……さっきまで怒りで真っ赤になっていた顔が、おもしろいようにどんどん青ざめていきました。

 「別れましょう……あの子は、わたしが引き取るから。慰謝料とか養育費とか、そーいう面倒くさいことはもう、あなたに期待しないから。ええ、もうわたし、ウンザリよ」
 「う……嘘だろ?おい、冗談だろ??」
 「冗談じゃないわよ!マジよ!大マジよ!超マジよ!」
 「……待ってくれ……待ってくれよ……なあ……」
 「もうイヤ!こんな生活!!あんたの顔見るのもウンザリよ!!」

 気がつくとわたしは大声で泣いていました。
 
 彼はおろおろしながら……いろいろと弁解と泣き言を並べ立てはじめました。
 
 稼ぎが少ないことから、わたしに引け目を感じていたこと……。
 事業が思うように伸びず、日頃からストレスを感じていたこと……。
 子供の将来のことや、わたしたちの老後のこと、彼の兄弟はそれなりに成功しているのに、親戚中でも自分がいちばん冴えない生活を送っていることの劣等感……仕事仲間から、『髪結いの亭主』呼ばわりされているのではないかという被害妄想……そしてついにたどりついたのが、このクスリによるつかのまの現実逃避だった……みたいな話でした。

 はっきり言って、目新しいことやちゃんとまともに聞くべきところは、何もないような話でした。

 
 「……でも……このクスリをやってるときだけは、すべてを忘れて、いい気分になれるんだ……」
 彼は言いました。

 え、そうなの。
 わたしや、息子と過ごしている時間はどうなの。
 それからも逃避して、こんなろくでもないクスリに逃避していたいの……?

 ますます、絶望的な気分になりました。
 目の前が、ほんとうに……一段階、暗くなったような気がしました。
 わたしこそ、そんな現実から、もう逃げ出したくなってしまいました。


 「……そのクスリ……」わたしは言いました「……ほんとに、そんなにいい気分にさせてくれるの……?そんなに素晴らしいもんなの……?」
 「え?」彼はぽかんとしました。その顔は、間抜けそのものでした。
 「……ねえ、そんなに素晴らしいクスリなんだったら、わたしもそれ、試してみるよ。……あなたがそんなに入れ込んじゃうくらいなんだもの……さぞ、いい気持ちなんでしょうね……ねえ、どうやってそのクスリ、やるの?……やっぱり注射かなんか使ったりするわけ……?」
 「ははは!」彼は、急に元気になりました「そんなわけないだろ!俺が注射大っきらいなの、知ってるだろ?……お前もそうだし……まあ、チビの奴も注射が嫌いなのは、さすが俺らの子、ってとこだよな!!」

 明るい人でした。

 「……じゃあ……どうするの?飲むの?……映画みたいに、鼻から吸うの?」
 「それもあるけど……もっといいやり方があるんだぜ」

 彼はそういうと、意味ありげに笑いました。




 ……ここから先は……法律上の問題もありますので、あまり詳しく説明することはできません。
 たとえこういう場だからと言って、違法な薬物の使用法に関する情報を事細かに伝れば……青少年にどんな悪影響をもたらすかわかりませんし。

 そう、わたしだって、一児の母です。

 ドラッグが蔓延し、これ以上たくさんの子供たちがその犠牲になることは……決して望みません。
 そんなことは、あってはならないことです。
 青少年の間にドラッグが蔓延することの理由には、やはりドラマやマンガや、こんなケータイ小説みたいなものが……いかに、表向きのメッセージは『ドラッグの恐ろしさを子供たちに知ってもらいたい』みたいな感じでも……その魅力を大げさに、そしていかにもカッコイイことであるかのように、無反省に表現するからじゃないでしょうか。


 だから、わたしも……その利用法については説明を割愛したいと思います。
 しかし、その恐ろしさについては、経験者として語る責任があるとも思っています。




 約一時間後、わたしと主人はお互いに全裸で、ベッドの上で屠りあっていました


 わたしは左のわき腹を下にして右脚を高くあげ、主人がそれを肩に担ぎ上げる格好で……激しくわたしに打ち込んできます。
 
 いわゆる、『帆掛け舟』の体位でした。
 『松葉くずし』とも言うらしいですね。


 「ほら!ほら!ほら!ほら!ほら!ほら!」
 「ああんっ!!あはっ!!はあんっ!!すっ……すごい、すごいっっ!!!!」
 「ほら!どうだ!いいだろ?すげえだろ?たまんねえだろ!?」
 「あああああんっ!!すごいっ!!た、たまんないっっっ!!」

 ……ほんとうにそれまで体験したことのない凄まじいまでの感覚でした。

 主人が突き入れるたびに、わたしの頭の中ではまるでお寺の鐘のような、雷鳴のような轟音が響き渡り、目の前に七色の火花が散ります。
 主人が腰を引くたびに……まるで自分の内臓が引き抜かれたような心もとない、切ない感覚がわたしを襲い、ほんの一瞬後の主人の一突きを求め、待ちわびるのです。
 
 「……もっと!もっと!もっと深く突いて!そこ!」
 「こうか?これかこうか?」見上げると主人の瞳孔は、完全に開いていました「すごいだろ?こんなの初めてだろ?ほら、どうなんだ?もっと言ってみろよ!」
 「さ、さわって……もっとさわって……全身、めちゃくちゃに触って!!」
 「こうかあ?どうだ?ああ?こうかあ?

 主人はわたしの乳房を握りつぶすように鷲づかみにして、めちゃくちゃに揉み込みました。
 肉を引きちぎるかのような、ほとんど暴力のような愛撫でした。

 「ああああんんんんっっ!!!……な、なんで?なんでこんなに………なんでこんなにいいのお????………し、死んじゃう」

 主人の手が全身を這い回ります。
 わたしの感覚は普段の10倍、100倍、いや1000倍……いいえ、とても数値化できないくらいに倍増されていました。
 どこをやさしく撫でられようと、どこを乱暴に掴まれようと、どこに爪を立てられようと、それがすべて、気が遠くなるくらいの快感に変換されてしまうのです。
 全身の皮を剥かれて、むき出しの肉に触れられているような感覚、とでも表現したらいいんでしょうか。
 
 下品な表現になりますが……まるで全身がクリトリスになったような気分です。

 主人の一挙一動、一突き、一突きが、ふだんの絶頂のときに感じる感覚の何倍にもなってわたしを責めたててくるのです。

 もう死にそうでした。
 気が狂いそうでした。

 このままほんとうに絶頂を迎えてしまうと、いったいわたし、このままどうなっちゃうんだろう?

 はっきり言って、恐ろしくなりました。
 果てのない宇宙遊泳をしてるような気分です。

 何度もわたしの全身の筋肉が引きつり、気が遠くなり、わたしの声はもう、完全にしわがれて獣じみていました。

 「どうだ?すげえだろ?気持ちいいだろ?……こんな気持ちいいことがあるなんて、人生捨てたもんじゃないだろ?」
 「す、すごいっ……し、死んじゃう……ど、どうにかなっちゃう……」
 「ほ、ほら、言ってみろよ……こんなに気持ちいいセックスができて、『うれピー』って言ってみろよ!!」
 「あっあっあっあっあっあっあっあっ……………」

 もう……わたしがその日、数十回目の絶頂を満喫しようと思っているところに……ほんとうに無粋でバカなひとです。
 しかし……そんなことはありえないとは頭とはわかっていても……突き入れられるたびに主人のその部分は……さらに硬く、さらに太く、さらに長く……力強くなっていくようにさえ思えました。

 「………ほら、言えよ……言えって……こんなセックスができて、うれピーって……」
 「あっあっあっ……………ああっああっ……もうだめっ………」
 「ほら言えよ………言わないと………言わないとやめちゃうぞ………」
 「……ああっ……だめっ………言うから………言うから………やめちゃだめ……」
 「ほら……言えよ……大きな声で言ってみろよ!!」
 「………うっ………うれっ…………うれ…………」




 ……もう充分でしょう。


 これをお読みの10代の読者の方も、ドラッグの恐ろしさが充分にわかったことと思います。
 ほんとうにドラッグは人を獣にします。
 獣のように快楽を求めて悶え狂った日々を思い出しただけで……わたしは恥ずかしさで死にたくなります。こんなこと……もし息子に知られたりしたら……。

 だからわたし、もう二度と……主人にはもちろん……息子にも、顔を合わせないつもりです。

 今までわたしを支え、応援してくれたみなさん。ほんとうにありがとうございました。

 みなさんも、決してドラッグには近づかないでください。ドラッグはすべてを破壊します……それまで築き上げてきた、名声や、地位や、財産はもちろん……幸せや、愛や、家庭を……人間にとって大切なものすべてを。


 ……もういいですか?
 じゃあ、わたしはこれで失礼します。
 日本のみなさん、お元気で。

 わたしは必ず、逃げ切ってみせます。


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 「どう……?……感じる……?」

 僕は聡美の耳元でささやきながら、腰を優しく動かした。
 もちろん、いつものとおりの正常位だ。

 僕はセックスに関して、少し持論を持っている。
 
 セックスというのは、男本位、自分本位ではだめなのだ。
 できるだけ丹念に、やさしく、女性が痛がらないように、心をつかい、気をつかうこと。
 
 セックスの快感というのは男と女が共同作業で作り上げていくものでなくてはいけない。

 自分本位、男本位ではだめなのだ。
 
 
 「……気持ちいいかい?……痛くないかい……?」

 「……・・」

 聡美は答えない。
 多分、恥ずかしいのだろう。
 
 聡美はけっこうセックスに関しては控えめな女性だ。
 僕がこれまでつきあってきた女性の中でも、淡白なほうだと思う。
 というか……多分、聡美はこれまでにそれほど男性経験はなかったんじゃないだろうか。

 細身で、小さな身体。
いつもショートカットでジーンズ姿の聡美は、どこか少年のような印象を持ったボーイッシュな少女だった。

 今も僕の顔の真下で、その中性的な顔を真っ赤にして、下唇を噛んでいる。
 
 思わず……そりゃ僕も男だから……そんな聡美の様子を見ていると、少しは意地悪な気持ちになってくるときもある。

 『……ほら、こんなに締め付けてるよ……そんなにいいんだ……・』とか、
 『……いっぱい、いっぱい出てるよ……ほら、繋がってるとろこ、自分で触ってみてごらん』とか、
 『……一回、抜いちゃおうか……?……それで、自分の好きな格好になってみなよ……それで突いてあげるから』とか

 そういうことをつい口走りそうになってしまう。

 いけないいけない。

 そういう変態的な言葉は、女性を冷めさせるものだ。
 僕は女性心理をかなりよくわかっていると自認している。

 とにかく世間の男というものは……普段、どんなに優しい男であろうと、どんなに女性に対して細かい心配りができる男であろうと、つい、セックスのときとなると、上に挙げたような、AV仕込みの猥語を口にしたり、変なことをしたり、女性にへんなことをさせたりしたがることで、女性を幻滅させてしまいがちだ。

 僕はそんなことはしない。

 僕は聡美とセックスするときは、いつも正常位だ。
 バックなんてもっての外だ……あれは、愛し合うふたりにはまったくふさわしくない体位だといっていい。
 僕らは人間なんだ。セックスは人間同士がお互いを尊重し合い、高めあうための肉体のコミュニケーションでなくてはならない。

 いたずらに男性は、自分の征服欲だけを満たそうとするものではない、というのが僕の考え方だ。
 それに、あんな体位で辱められて、女性が心から喜ぶはずがないじゃないか。

 だって、お互いの顔が見えないのだ。
 
 猿ならまだしも……獣のように女性を這い蹲らせ、それに後ろから腰を叩きつけるなんて……とても僕には……いや、僕と聡美の間には考えられないことだ。


 また僕は、聡美にフェラチオ(まったく下品な言葉でイヤになる)させたり、クンニ(これもなんというか、下品な響きだ)をしたり、なんてこともまったくしない。
 
 本当の愛のあるセックスに、そんな下品な動作は不要だ。
 
 僕はセックスのとき、いつもちゃんと聡美を全裸にする前に、自分もちゃんと全裸になるように心がけている。
 いたずらに聡美だけに恥ずかしさを感じさせないようにするためだ。

 そして、長いキスをして、かるく、やさしくその小さな乳房を愛撫し、さりげない手つきでその手を下半身へ移動させ……十分に時間をかけて、聡美の入り口をやさしく愛撫する。

 挿入するにあたって、聡美が痛みを感じたりしないように、丹念に、しかし的確に聡美の快楽の中枢をやさしくなで上げながら、そこが充分に柔らかく、湿り気を帯びるのを辛抱強くマッサージしていく。

 そうしながら、ずっと聡美の顔を見つめ、耳元で『愛しているよ』『かわいいね』とささやき続ける。

 間違っても、

 『……大洪水だよ……』とか
 『……太ももまで垂れそうじゃないか』とか
 『おいおい、指入れただけでどんだけ締め付けてんだよ』とか

 そういうことを言ってはいけない。
 
 また、聡美が快感にそのボーイッシュな貌を歪めるのを見ていると、思わずサディスティックな気分が盛り上がってきて、わざと指を見当はずれなところにずらして、

 『……ほら、ほんとに触ってほしいのはどこか、ちゃんと言ってごらん

 とか、そういうことを言ってはいけない。

 そういうのは、AVの世界なのだ。つまりは、フィクションの世界だ。

 聡美の入り口が十分に潤い、やわらかくなったところで、やさしく挿入だ。

 『いくよ……』

 聡美の目をしっかりと見つめながら、彼女がコクンと頷くのを合図に、ゆっくり、ゆっくりと挿入していく。
 

 後は……今も現にしてるように、やさしく、ゆっくりと……自分の限界が来るまで、腰を動かすだけの話だ。
 

 「……どうだい、聡美……気持ちいいかい?」


 僕は聡美の耳元でささやくと、つつくようにその可愛い耳たぶにキスをした。


 「んっ……」

 聡美がぴくん、と反応する。

 「……・痛くない……・もっと、やさしくしたほうがいい?」
 「……・」

 聡美は答えない。ただ、僕から顔を背けて、小さく頭を左右に振るだけだ。

 ああ、聡美、なんていじらしいんだ。
 これほど聡美のことがいとおしくなる瞬間もない。
 そろそろ僕も……あと数十秒で、限界を迎えそうだった。

 きっと聡美も……いつもどおりのこのセックスに、満足してくれたことだろう。

 「……・・そろそろ……・いくよ?」僕は少しだけ、腰の動きを早めた「……いいかい?」
 「……・おまえ、バカかよ」聡美が、小さな声でつぶやいた。



 「え?」思わず僕は、腰の動きを止めた。多分、聞き違いだろう。そうに違いない「……なんか、言った?」
 「……・お前、バカかよ、って言ったんだよ!!!
 「ええええ?」
 「……あたしの上からどきやがれ!!!

 いきなり、聡美が僕の胸を両手でどん、と突いた。
 その力は思っていたよりもずっと強く、僕はのけぞってしまった。
 間髪いれず、聡美が足で僕の腹を強く蹴った。

 「うっ」

 ぬるり、と僕のペニスが聡美の性器から抜けて、僕はベッドから転がり落ちそうになった。

 「……・なんなんだよ!!いつも言おうと思ってたけど、何なんだよてめえのセックスはよ!!!
 
 さらに、聡美のけりが僕のわき腹にヒットした。
 あわてて肘でガードしようと思ったが、すでに聡美はベッドの上に仁王立ちになって、ベッドの上に横倒しになった僕を踏みつけるように、キックの嵐を降らせてくる。
 僕は何がなんやらわからずに、自分の頭をかばってまるで胎児のようにベッドの上で丸くなった。

 「なに?なに?なに?……・なに???」
 「なに、じゃねえよ!!!てめえ、そんなセックスで、てめえ自身は楽しいのかよ!!!毎回毎回、おんなじことばっかしやがってよ!!!」聡美はなおも僕を踏みつけるようにして蹴りを入れてくる。「『やさしい男』ってのはそれでいいけどよ……・セックスのときくらい、てめえ、我を忘れてむしゃぶりつこう、って気になんねえの???今日までずっと我慢してたけど、てめえの芸のねえ、退屈なセックスにはもうウンザリだよ!!!……毎回毎回、正常位ばっかで、フェラもさせねーしクンニもなし。それで、あたしがマジで喜んでると思ってんのかよ!!!!
 「だ、だ、だ、だって……」
 「『だって』じゃねーーーーーっての!!それでもてめえ、男かよ!キンタマちゃんとついてんのかよ!!!!
 「あっ!!……ちょ、ちょ、ちょっと……」

 いきなり聡美が僕に飛びかかってきた。
 まるで猫のような敏捷さだったが、力はゴリラのように強かった。
 そして、虎のように獰猛だった。

 聡美は僕の腹の上に馬乗りになると、ぎらぎらと光る充血した目で僕を見下ろしている。
 彼女の荒い鼻息が、胸元にかかるのがわかった。
 言うまでもないが、さっきまで僕の身体の下で赤らめた顔を背け、下唇を噛んでいた聡美は、あのボーイッシュで華奢で可愛い聡美は、もうどこかに行ってしまっていた。
 

 「ほら、これからてめえにあたしが、本物のセックスって奴を教えてやるよ!!!じたばたすんじゃねえ!!」
 「ひいっ……」

 
 あっという間に僕は仰向けに倒され、先ほど脱ぎ捨てたTシャツで両手首を、万歳の格好で固定されてしまった。
 ほとんど抵抗する間もなかった……というとウソになるかもしれない。

 その直後、僕の頭には目隠しとして聡美のブラジャーが結わえつけられた。
 
 「ああんっ……」

 大いなるショックを受けながら、僕は、”え、そこまでしちゃうんだ“という新鮮な驚きに、ゾクゾクするような感覚を……つまり、認めたくはないけれども……『期待』を抱いていたような気がする。
 塞がれた視界のせいで、僕の全身の感覚は鋭敏になtっていた。
 全身に聡美の亢奮と、粘度の高い視線を感じて…僕はシーツの上で逃げ場を求めるように身をくねらせ、よじった。
 まるで全身の皮をむかれて筋肉をむき出しにされたかのように、聡美の欲情と視線が痛いほど僕を責め立ててくる。

 「……あれあれ?どーなってんだよ?てめえ、いったいどういうつもりだよ?…だんだんチンコ、元気になってきやがったんだけどお?
 えっ……、そんな……んっあっ…い、いやっ…」

 突然、僕の性器が聡美の湿った、熱っぽい手のひらで握り締められた。

 「なんだあ?…てめえ、縛られて、目隠しされて、それでコーフンしてんのかよ?ええ?どうなんだよ?この変態!
 「あんっ…うっ…うううっ…はんっ…」

 聡美が僕の性器を激しく、荒々しく上下に扱きはじめた。
 その手が上下するたびに、まるで鞭打たれるかのような激しい感覚が僕の下半身を襲う。

 「…何、女みたいな声上げてよがってんだよ!!…あれあれ、扱いてやりゃあやるほど、先っぽjから恥ずかしい汁がどんどん溢れてきやがるぜ!……いいのか?ええ?いいのかって聞いてんだよこの変態!マゾ!オカマ野郎!!
 「……うっ……いやっ……だ、だめ……そ、そんなにしたら……」
 「こんなにチンコがちかちにしといて何言ってんだあ……?…ほれ、ほれ、こうしたらどうなんだ?」

 聡美が世紀を扱くのをやめ、いわゆるその……カリの周辺を指でぐいっと締め付けると、その……亀頭の先端に手のひらを当て……えーっと……カウパー氏腺液を全体に塗り広げるようにして転がしはじめた。

 実際のところ、目隠しをされていたので、どんな風にされていたのかはわからない。
 しかしそれは……僕にとって未体験の感覚だった。

 「はあんっ……いやあっ………それ、そこ、そんな……あああああんっっ!!
 「おっと!……簡単にイカせてもらおうなんて甘いんだよ!……ほれ、こうしたらどうなるんだあ?」
 「そ、そんな……もっと……もっと……もっと触って……イかせてえっっ!

 思い出しただけで死にたくなるくらい恥ずかしい言葉と嬌声を吐き散らしながら……僕はその後数時間にわたって、焦らされ、辱められ、打ちのめされ、何度も昇りつめてははぐらかされ、嘲笑われ、許しを請い続けた。
 
 目隠しを外されたときには、空が白んでいた。


 抜け殻のようになってベッドに大の字で横たわる僕の隣に、聡美の小さな尻があった。
 彼女は僕に背を向けて座っていた。
 彼女の肩が、かすかに震えていた。
 その小さな背中に声を掛けようとすると……もう僕の声は完全にしわがれていた。

 「……こんなのじゃ、イヤでしょ?」聡美が背を向けたまま言った。
 「………毎回、こんなのは……困るな」僕はしわがれた声で答えた
 「……毎回じゃなければ……いいの?」聡美が肩越しに、僕の顔を見下ろす。
 「……5回に……1回くらいなら………」僕はそう言って、なんとか笑みを作った。
 
 「ほんと?」聡美の顔に、小さな花のような笑顔が咲いた「……嘘じゃない?」
 「ほんとだよ……嘘じゃない」ほんとうに、嘘じゃないのだろうか?「……いや……」
 「……な、何?」聡美が、心配そうな表情で聞く。
 「5回に……2回にしよう」真心から出た言葉だった。
 
 聡美の顔に、笑顔が戻ってきた。
 そして子供みたいに笑うと、僕の耳元に駆け寄ってきて囁いた。

 「……変態


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

* *

ちょーすちょすちょすwwwwwマジこれ聞いてwwww
電話して会っみたらこれが巨乳の人妻wwww
年齢は33つってたけどぜんぜんそうは見えないwwwww
ハナシ聞いてみるとこれが初めてだって言うしwww



* *


 待ち合わせ場所に立っていたのは、想像していたのよりはずっと若い感じの、一見したところふつうの会社員風の男性でした。

 このような形で男性と会うのはこれがはじめてだったので、わたしは少し緊張していましたが、男性のほうはこうしたことに慣れた感じです。

 ああ、今の世の中、こんなに普通に見える男性が普通にこういうことをしているのだなあ、とちょっとしたショックを覚えました。
 
 なんだかその瞬間に、いきなりいくつか歳をとってしまったような気がしました。
 
 男性はさりげない素振りで
 
 「え、33歳ですか?とてもそんなふうには見えないなあ・・・いや、女子大生くらいに見えたんで人違いなんじゃないかと思いましたよ」

 とかなんとかいろいろとお世辞を並べ立てました。
 実際、わたしは2歳サバを読んでいました。逆のほうに
 実際は31歳です。
 
 なんか、まだ30を過ぎたところなのにこんなことしているのが、ちょっと恥ずかしくて。
 いかにも何か、『飢えてる人妻』って感じじゃないですか。

 だから2歳、歳を上に言ってみたんです。
 そうすると男性はちょっと喜んだみたいです。
 なぜなのかはわかりません。
 
 おそらく彼のイメージしている『欲求不満の人妻』は、だいたい33歳くらいなのでしょう。

 彼はいろいろと他愛もないことを話しかけてきましたが、わたしはほとんど聞いていませんでした。
 頭の中が緊張でぐるぐると回っていたからです。

 でも、彼もしきりに話しかけてはきましたがあまり何も考えてなかったんだと思います。
 話している間じゅう、ずっとわたしの胸ばっかり見ていましたから。


* *

 ぁはへあはぁあぁあはぁ!!!ちょw ゴメww いきなりゴメンwwwwwなんか人妻さん、
 食事はいいからさっさとホテルに行きましょ、とか言い出すしwwwww!!!
ありゃよっぽど飢えてたと見たねwwwで、そのまま挨拶もそこそこにホテル街へチン入wwww



* *


別にその人と食事をしたりショッピングをしたりとか、そういうつもりもありませんでしたので、もう面倒くさい駆け引きは抜きでホテルに行きましょう、って……わたしのほうから言いました。
 
 そのときの男性の喜びようときたら、今思い出してもちょっと笑っちゃうくらいです。


 適当なホテルに入りました。
 結婚する前には、主人とよく入ったような、若いカップル向けの、それなりに見栄えが良くて、でもちょっとズレた感覚でおしゃれを装った、いかにもありがちなホテル。
 

 男性はとても慣れた感じだったので、こんなふうに知り合った女の子と・・・・・・・こういうことをするのに、いつもこのホテルを使ってるんじゃないかな、とぼんやり考えました。
 なんか、お昼だったのでサービスタイムだったみたい。
 
 男性はすごくせせこましい、というかいじましいタイプの人だったようです。
 
 一緒にエレベーターに入った途端にわたしに抱きつき、キスをしてきました。


 「え、ちょっと待ってください

 なんて言うと、いかにもこういう出会い系ではじめての体験に戸惑う人妻、みたいな感じだったかしら。


* *

うはwwwww人妻さんホテルのエレベーターの中でいきなり抱きついてくるしwwwww
そのままDeepに舌絡めまくりの唾液飲みまくりwwwww
さすがにズボンのチャック下ろそうとしたときは焦ったwww
ちょwwwww奥さんwwwww部屋まで待てないの?って感じwwwwww
やっぱ人妻さん、ソートー飢えてたと俺は見たねwwwwww



* *


 「いいじゃないですか、奥さん」

 とかなんとかいいながら、男性はわたしのおっぱいを引きちぎらんばかりの勢いで揉み、ブラウスのボタンを外し、スカートの中に手を突っ込んでパンツを脱がせてきました。

 「だ、だめです。だ、誰かに見られたら
 
 わたしも言葉では抵抗しましたが、何せこういう状況ですので、それなりに昂奮していました。

 実際、そういうつもりで来ていたわけですので、ここまでダイレクトに反応していただけるとやっぱり嬉しい。

 
 「何が困るんですか。こんな時間にここに来てるのは、みんなヤリにきてる人ばっかりですよ。僕らだってここに、ヤリにきたんでしょう。ここが図書館だったら、そりゃ奥さんも困るでしょうけど、ここはラブホテルですよ。ラブホテルでこんなことをしてるからって何か変ですか。ぜんぜん普通じゃないですか」
 「で、でも、せ、せめて部屋に入ってから・・・」
 「だめですよ。僕ははじめからテンションを上げていかないとダメなタイプなんです。ほら、触ってみてください。僕のテンション、もうこんなに上がってますよ」 
 「あっ・・・・・・す、すごい


 彼はわたしの手をズボンの前に導きました。確かに、すごかった。
 布地を通して、彼の脈が伝わってくるようでした。
 わたしはなんだか頭がぼーーーーっとしてきました。
 
 エレベータが部屋の階につくと、わたしは彼に引きずるられるようにして部屋まで運ばれました。

 その間も彼は、キスしたりブラウスのボタンを外したりスカートの中でパンツを脱がそうとしたりをやめません。
 二人の体が部屋のドアの内側に収まったときには、わたしはもう、ほとんど半裸状態でした。


* *


 ヤバwwwwヤバwww人妻マジヤバwwwww部屋に入るなり俺のチムポ引きずりだすやいなや、
 いきなりバキュームはじめるから俺焦ったwwwww
喉の奥までディープキメラれて、俺もういきなり(^^;即!昇!天!しちゃいまちたwwww
でも人妻さんそのままゴックンして、止めてくんないの(^^;
 強引に復活させられてそのまま2発目に突入wwwww
マジ殺されるんじゃないかと思って不安になったよwwwwwwww



* *


 当然シャワーなどにいく余裕もなく、彼はわたしを全裸にむき上げると自分も下半身全裸になりました。

 すっごく勃ってました。
 
 まあ人のことはともかく、わたしにはすごい衝撃でした。
 ああ、この人、わたしのせいで勃ってるんだな……と思うと……というのも、最近主人とほとんどセックスしてなかったんです。

 って書くとほんとうに飢えてたみたいでイヤなんですけど。

 実際飢えてたのかも知れません。
 こんなふうに自分に対して関心を向けられることに飢えてたんだと思います。
 見た目にわかりやすいでしょう?

 というのも、結婚してからこっち、主人以外の人がこんなふうにわたしに欲情しているのを見たことなかったから。
 バカみたいと思われるかも知れないですけど、自分がそういう感情を他の男の人に抱かせる、というか湧かせることができたということが、何か理屈抜きで嬉しかったんです。


 なにか突然、頭の中でこれまで動いてなかった歯車とかポンプとかが、いきなり再稼動しはじめたような気がして・・・・・・気がつくとわたし、その人のものを口に含んでいました。

 主人にはしたことないような舐め方もしました。
 主人だったら……もともと淡白な人だから……ちょっと引いちゃいそうなこともしてみたかな。
 それまで頭の中にあった、いろんな知識を総動員して、舌を使って頭を使って夢中で舐めました。

 男の人は大喜びで、あっというまにわたしの口の中に出しました。


 「……はあはあ………す、すごいですね、奥さん……」
 「す、すごいですか?

 わたしは彼が引いていないか、ちょっと心配でした。


* *


ほーれほれほれ!!!やっぱ電マ、すごいっすwwwww
人妻さん、白目剥いて数分間で逝きまくりwwwwww
3回潮吹かせてやったけど、まだ足りないって(^^;



* *

 その後彼がわたしにしたことはちょっと字数の都合で全部詳しくは伝え切れません。

 結構驚きました……最初見たときはいかにもふつうの会社員に見えた彼でしたが、彼の鞄の中にはいろいろなものが入っていたんです。

 ピンクローター、っていうんですか?
 あの、ちっちゃいプラスチックのカプセルが、モーターで動くやつ。
 あと、様々な形をした電動器具。
 さいきんはすごいのがあるんですね。

 一見すると電動マッサージ機にしか見えないのに、その先端にいろんなアタッチメントがくっつけられるようになってるんです。

 そういう電気製品から、手首を拘束する器具。
 手首が痛くなったり、後が残ったりしないように、なんかいろいろと気を使った処理がほどこしてあるみたいでした。
 その他には、目隠し用のナイロンの帯、とか。ローション、とか。

 そういうのが次々と彼の鞄から出てくるのです。
 まるで『ドラえもん』の4次元ポケットみたいに。

 別に怖くはなりませんでしたけど、さすがにちょっと引きました。
 
 「…奥さんは……こういうの……お嫌いですかね」すべての品々を前に、彼言いました。
 「っていうか…そういうの……あんまり経験がないもので」
 「…そうなんですか?」

 まるで、誰もがこういうものに慣れ親しんでいるかのような口ぶりでした。
 例えば、『え、奥さん自転車に乗れないんですか?』っていうみたいに。
 え、そうなんでしょうか。こういう出会い系の世界では、こういう品々を用いていろんなプレイを試してみたりするのが、フツーなのかしら。

 ちょっと自信がなくなってきました。

 「……で、でも……」わたしはちら、と彼の顔を見上げて表情を伺いました「…興味はちょっと……あるかも」
 「そうですか???本当ですか???」彼が鼻息荒く叫びます。
 「ひっ……で、でも……痛いのとか……そういうのはイヤですよ」
 「もちろん!!!」その時の彼の輝くような表情ときたら…まるで少年のようでした「……任せてください!!その点は大丈夫です。いやあ……感激だなあ……奥さん、僕たち実は、案外ウマが合うかもしれませんね。……そうか・・・奥さんの旦那さんは、こういうのにあんまり興味がないんですね・・・へーえ…ふーん…」
 
 何か独り言をぶつぶつ呟きながら、彼はベッドの上に広げた品々の物色をはじめました。

 確かに、主人とはこういう器具を用いたことはありません。
 事実、なんだかこういう器具が家庭のどこかに……たとえばタンスの奥とかに仕舞い込まれている、というのは非常に奇妙な感じがしますし。
 
 しかし主人だって…わたし以外の相手と、こんなふうに内緒で遭ったりしたら、こういうセックスをしたがるんじゃないかと思います。
 いや、実際してるのでしょう。


 主人が外で誰か知らない相手と遭っているのは明らかです。
 

 そのことに対して確信を抱いたときは、そりゃあもう、わたしだって人間ですから、人並みに腹も立ちましたし、嫉妬したりもしました。
 そう、『わたしというものがありながら何で???』というやつです。


 でも、今日・・・こんなにオモチャに囲まれて幸せそうな彼を見ていると・・・少しだけ、主人が浮気をしたことの理由とその気持ちが、理解できたような気がしました。


 つまり、主人は、わたし以外の相手と、わたし相手ではできないことをしたかったんじゃないでしょうか。

 
 『自分の妻相手にはこんなことはできない』なんていうのは、主人の単なる思い込みにすぎません。
 わたしだって、主人がこんなことを求めてきたら・・・当然、戸惑いはするでしょうけれども、最終的にはそれを受け入れ、それなりにいっしょに楽しむことができたと思います。


 でも変ですよね、男の人って。
 そういうのは、家庭に持ち込むべきじゃない、と勝手に思い込んでるんだから。


 今、なんだか禍々しい形の電動式のおもちゃを手にとって、その使用法と効果について得意げに喋っているこの男性にしてみても……わたしはほとんど彼のいうことを聞いていませんでしたが……もし彼に、妻や子供がいるなら、そ絶対かれは家庭にはこんな禍々しいものを持ち込んだりしないでしょう。


 彼にしてみれば、わたしとホテルで過ごしているこの時間は、妄想をできるだけ現実に近付けるための、非日常の一部なのです。

 
 たぶん彼だって……四六時中、こんなふうにエロいことを考えたり、それをいかにして実現するか、とか、そんなことばかり考えているわけではないと思います。
 わたしは、彼の日常の隙間隙間に設けられた、コーヒーを飲んで一服するような息抜きの瞬間を、一緒に過ごしているのです。


 ああ、そうか。と、わたしは思いました。

 これが、浮気なんだな、と。


 そう思うと、なんだか少しだけ、気分が軽くなってきて……その後、彼が好きなように器具を用いてわたしの身体をモテアソブのに、身を任せることができました。


 正直な話、けっこう良かったです。
 でも、毎晩これだったら困るかな。



* *


まじヤベエwwwwww人妻さん、泡吹いてヨガリまくってさすがに焦ったwwwww
「こんなの初めて!!!癖になっちゃいそう!!」とか
白目むいて叫びまくりwwwww
おれのティムポ、掴んで離さないしwwwwww
ダンナさん、よっぽど構ってやってなかったんだな、って感じ?wwwwwwww


* *



そこから2時間ほど、彼はいろんな器具を用いてわたしを楽しませてくれました。
 こんなこと言うとヘンだと思われるかも知れませんけど、なんかその間は、子どもも頃に戻ったみたいに楽しかった。

 まあ、ようするに気持ち良かったんだろ?……って言われると、それはそうなんですけど。

 それだけじゃない、っていうのかな。
 なんか、ひとつのことにこれくらい夢中になってる相手に乗せられて、こっちも夢中になる、みたいなことってここのところ……というか、結婚してからずっと、ご無沙汰だったような気がします。

 主人が浮気したのも、こんな感覚が欲しかったんだろうな、と、しみじみ感じました。

 悪くないですよね。
 まるで、思いっきり無邪気な気分でジェットコースターに乗ってるような気分。


 でも、わたしはわたしで……勝手に楽しんで、それは満足したんですけれども、彼のほうはちょっと気の毒でした。


 ……その……なんていうんですか?
 いろいろと……道具を使ったり、いやらしいことを言ったり、わたしにへんなことを言わせたりで……彼も大変だったんだと思いますけれども……。

 

 つまり……最終的に……ちょっと、元気になりきれなかったんですね。

 わたしもいろいろと、努力はしたんですけれど……。

 結局……彼は元気になりませんでした。最後まで。


 だから……どうなんでしょう?わたしは、浮気をしたことにはならないわけなんでしょうか?


 いや、それはあまりにも虫のいい話ですよね。
 だって……それ以外のことはほとんどといっていいほどしましたし……身体の表面で、彼に触られなかった部分はないというくらいです。中のほうも……ずいぶん奥まで、しっかりと触られましたし。


 最後のほうなんか、ちょっと彼がかわいそうになりました。
 だって……なんか、目に涙が浮かんでましたから。

 「……その……」わたしは言いました「……気にしないでくださいね。わたしは、これで……ぜんぜん満足ですから」
 「…………」


 彼は力なく笑いました。
 その顔は、はっきりこう言っていました。

 『ああ、あんたはそうだろうよ


* *


ちょwwwwwwこんなの、マジであり?wwwww
おれ、マグロ状態で横になってるだけで、勝手に人妻さん上で腰振って
一人でイキまくりwwwww
5回イッたとこで、ようやく許してもらったけどwwwwww
結局、おれ寝てるだけで7マソゲットwwwwwwww
こんなんじゃマジ働く意味ねーーーーーー!!wwwww
おれ、充分これで稼いだから、みんなに情報公開するよwwwwww


* *


 別れる前、彼はわたしに、黙って2万円を差し出しました。

 「え、そんな。いいんですか?…………だって……」
 「いいから、受け取ってください」

 有無を言わせぬ態度だったので、ほとんど仕方なく受け取りました。


 ほんとは……お金なんかいらなかったのに。
 そのお金は……後に残るようなものを買って、『彼の思い出』みたいなものが手元に残るのも感じが悪かったので……その日、はじめてパチンコ屋さんに入って、『CR 火垂るの墓』でわけもわからないうちに、あっという間にすってしまいました。

 やっぱりパチンコは、向いてないみたいです。


 それ以来、彼とは会っていません。

 主人とは、それなりに上手くいってますが……ときどきあの、彼とのひとときが、懐かしくなるときがあります。

 ほら、時々ふと、ジェットコースターに乗ってみたくなるような感じ。

 …………。

 ジェットコースターが好きな人でないと、わかりませんよね。そんな気持ち。

 


 こんな33歳(31歳)の主婦と、楽しい時間を過ごしませんか?

 あ、彼はわたしの身体を見て、こんな風に言いました。

 『すげえぜ、奥さん、とても子どもを産んだカラダとは思えねえぜ

 実際、子どもはまだですけど。


 興味のある50歳までの素敵な男性(既婚・未婚問わず。デブ不可)、連絡お待ちしています。


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 以前から疑問に思っていたことがある。

 さいきん、AVをはじめとするありとあらゆるエロ分野ではもはや必須項目になった感さえある、いわゆる『潮吹き』に関してである。

ウィキペディアにおける『潮吹き』の定義は、以下のようなものだ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BD%AE%E5%90%B9%E3%81%8D_(%E3%82%A2%E3%83%80%E3%83%AB%E3%83%88)

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英語では、Squirting又はFemale ejaculationすなわち女性の射精と呼ぶ。

1944年、ドイツの産婦人科医であるエルンスト・グレフェンベルグらが、膣前壁の尿道の内側表面つたいにある性欲を喚起する場所と表現する部位を発見し、1950年に論文発表した。この時、その部位を刺激しオーガズムに達すると膣口から出る粘液が人によっては10cmほど飛ぶ事も有ると述べられた事から、グレフェンベルグの頭文字を取ってその部位はGスポットと呼ばれる様になり、女性の射精説が誕生した。

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 ……さて、最近のアダルトコンテンツ、特にAVの世界においては、この潮吹き作業はまるで入浴の前のかかり湯くらいに当然の工程として提示されている場合が多い。

 男優が手のひらを上にし、中指(薬指が併用される)を女性の膣内に深く挿入。
 激しく前後運動、上下運動をたくみに、荒々しく行うことにより、対象女性は激しく反応し、身悶える。


 「いやっ、だめっ、そこっ、あっ……あっ…あっ……あああ~……あ……はぁ……


 みたいな感じで女性が全身を脱力させると同時に、女性の膣内から噴出した(らしい)一見尿のような、サラッとした感じの液体が噴出し、まるでスピルバーグの映画『プライベート・ライアン』冒頭におけるオマハビーチでの激戦で被弾した兵士の体から飛び散る血しぶきのように、アオリで女性の痴態を捉えていたカメラのファインダーに、液体が飛びかかる。


 すさまじい演出効果である。

 将来的に『3DAV』のようなものが発明されたら、当然のようにこの液体が鑑賞者の顔目掛けて勢いよく飛んでくるのであろう。

 
 そうして『潮吹き』を終えた女性は、いかにも茫然自失、という感じになってベッドやら床やらにへたり込む。



 さて、こうしたシーンが主要なポルノ鑑賞者であるところの男性を過剰に刺激するのは何故だろうか……?


 それはつまり、女性の『潮吹き』が、女性のオルガスムスにおける『絶頂感』を視覚的に表現し、それが男性のオルガスムス時の身体反応……つまり『射精』をアホでもわかるように連想させるからであろう。


 果たして、いわゆる『潮吹き』というものがすべての女性に起こりうる身体反応なのか、というかむしろ、その反応がオルガスムスを意味しているのか、という点においては大いに疑問がある。



 もしこういうことを真面目に議論している人々がいるならば、とことん論議してほしい。
 語りつくせないことは、語り続けなければならない。


 さて、そうした女性側の真実はともあれ、女性を激しく指攻めして潮を吹かせたい、という男の願望はつまり、自らの性器への刺激から得られる快感と絶頂を、女性の肉体を用いて再現し、同じような絶頂感を女性とともに分かち合いたい、という男性の複雑な性的アプローチのたまものであるといえる。


 つまりすべての男は、当然のことながら、自分の体のように女性の体を理解しているわけではない。


 セックスにおける愛撫で、女性がどのように反応するのか、どのように絶頂を迎えるのか、については、自らの普段感じている男性の肉体における快楽のあり方をもとに、想像するしかないのである。


 女性に潮を吹かせたい、と願う男性はつまり、女性の肉体を『基本的には男性の肉体とそう変わらないものだ』という認識のもと、自らが感じる至上の快楽である『射精』から得られる快感を、女性が『潮吹き』によって得られると考える。


 ってーか、そういう男はこう考える。

 男も女もしょせんは同じなのだから、どこか一箇所、性感の中枢となる部位が存在するはずであり、そこに対する集中的で執拗な刺激を加えることによって、いかなる女性も絶頂を迎えるにちがいない。いや、そうでないとおかしい、と。


 実はこれは、男の性感が(女性から見れば)大変奇妙節操がないものであることに起因している。


 男性の場合、陰茎への刺激はいかなる場合においても……機能的に問題のある人は除くとして……感覚として無批判に、かつ無条件に、性的快楽として変換される。
 これは嘘ではない。
 
 ちんこを他者からしごかれると、その相手が誰であろうと、その状況がいかなるものであろうと、男は性的に反応する。

 
 別に村上龍ではないので、すべての男が消耗品だ、などと大上段に構えて述べるわけではないが、これは男という生物の、悲しい事実である。


 そして、そのまま刺激を与え続ければ(性的なコンディションが良い人間であればなおさら)、尿道からカウパー氏腺液があふれ(いわゆる、なんだかんだ言ってこんなに濡れてるじゃねえか状態)、そのままさらに続ければ確実に射精する。





 そのことで、どうしても書いておきたいことがある。

 わたしがまだ何もしらない中学1年生の少年だったときの話だ。

 クラスメイトのイイヅカ君から、奇妙な相談をされたのだ。


 イイヅカ君は、非常にやんちゃで、子どもっぽいところもあるが、気のいい、明るい少年だった。
 しかしその朝、彼はものすごく沈んでいた。
 どうしたんだ、と問いかけたわたしに、イイヅカ君は驚くべき告白をした。


 「西田、お前……電車で痴漢に遭うたこと……ある?」
 「……ええ?」
 
 彼は非常に真剣だった。いつものおちゃらけた雰囲気は、影すら見えない。

 「……ここんとこ……毎日遭うんや……朝……電車で、毎日おんなじ奴に」
 「え、それってあれか、いわゆる、『痴女』っちゅうやつか?」
 「……それが……おっさんやねん。ふつうの、デブで、加齢臭バリバリの、汚いおっさん」
 「……えええ?」

 なんとまあ……どちらかといえば女性的で、女子に、それも上級生の女子生徒から人気があった美少年のわたしならまだしも、彼のようにいかにも『オトコノコ』的な少年が、そんな憂き目に遭うとは。
 
 ホモの痴漢のうわさは聞いたことがあったが、まさかこんなに身近な話として聞くことになるとは。

 「……でも、犯人わかってるんやろ?……駅員に突き出し立ったらええやん……」


 いつも元気でやんちゃなイイヅカ君のことだ。
 まさかデブで加齢臭バリバリの中年オヤジのことが怖い、なんてことはあるまい。
 

 ……いや、まてよ。
 そうではないのかも。

 わたしは自分の身に置き換えて考えてみた。
 突然、満員電車で痴漢行為をはたらいてくる変態男。
 男が怖いというよりも、その変態男が何を求めているのか、それを想像すると不気味である……相手は同性の少年だ。
 男が究極的に求めているものは、一体なんなのか。


 ……それを考えると……なぜか心なし……わたしの股間もムズムズしてきた。

 「そんなん簡単に言うけど……実際されてみたら、めちゃくちゃ恥ずかしいし、大きな声なんか出されへんわ。……そしたらおっさん、だんだん調子に乗ってきよって……」
 「何されたん?」完全に純粋な好奇心で、わたしは聞いた。
 「……チャック……下ろされて………ズボンの中に手入れてきた………」
 「え???……直に、ちゅうことか?」
 「いや……最初のうちは……パンツの上からやったんや……こりゃヤバイ、あかん、大声出して、助けを求めんとヤバい……思たよ、そりゃ。でもなんか、もうすでにチャック下ろされて、ズボンの中に手突っ込まれてるわけやん?……なんかそんなんされてんの、人に見られるん、めちゃ恥ずかしいやろ?………それに………」
 「それに?」
 「これ、ほんま、誰にも言わんといてくれよ。お前やから話すんやぞ。絶対秘密やぞ」
 イイヅカ君は、真剣だっただった。

 「言わへんよ。誰にも言うかいな……」
 「……俺な、なんかへんな気分になってきて……このままおっさん放っといたら、一体どこまでしよるんやろう、って……なんかへんな好奇心がわいてきたんや……いや、自分でもおかしかったんやと思ってる。充分わかってるけどな……なあ西田、自分のことに置き換えて考えてみてくれ……なあ、お前やったらどうする?」
 

 「……お、俺は……」
 すでにその時点で、ゆるく勃起していた。
 断じてわたしは、イイヅカ君に同性愛的な感情を抱いていたわけではない。
 想像力が豊か過ぎただけだ。


 「……それで、あえて、あえてもう、なんでもないふりして、おっさんの事、無視しとったんや……そしたら……おっさんの手が……パンツの上のゴムのほうから中に……」
 「え……………つまり………直で来られたんか?」
 「そう、直や。しっかり、がっしりと握られた……おれ、めちゃくちゃ恥ずかしいけど……その時点で、かなりギンギンやったんや。自分でも信じられへんけど……」


 イイヅカ君の顔は紅潮し、目は充血していた。
 わたしが告解師でもあるかのように、彼が言葉を続ける。
 告解師であるわたしの勃起は、ごまかせないくらいになっていた。
 鼻息も、荒くなっていた。


 「はじめて……はじめて人に握られると……あんなに感じが違うもんなんやなあ……なんか、気持ちええというか、痛いくらいやった。腰ぜんたいが、じ~んと痺れてきて……頭の中がグラグラ回ってきて……それからは……ゆっくり……ゆっくり……なんかめちゃくちゃ焦らすみたいに……こってりしごかれた……特急電車やったしな……なかなか駅につかへんから、ほんま、10分くらいは……シコられてたと思う……なんか……先走りが垂れてきて……それを……ちんぽ全体に塗り広げられて……くちゃ、くちゃ、って……音までしてくるし……」
 「で、最終的に、イってもうたわけか?」

 もう少しましな聞きようもあったろうが、何せわたしも中学一年生だった。

 「……我慢したよ……めちゃくちゃ我慢した……あかん、ここでイってもうたら、俺もうおしまいや……なにがあってもイってもうたらあかん……って……歯くいしばって、つま先踏みしめて、ひたすら耐えたわ……でも……わかるか?……そんなふうにわけのわからんオヤジにシコられて、ああ、あかん、イったらあかん、って自分に言い聞かせたら言い聞かせるほど……ますます全身が痺れてきて……俺、あのときばかりは神に祈ったわ」

 「神に?」うちの中学は、私学でキリスト教系だった。

 「神様、お願いやから、イかせんといてください……ぼくにイくのを我慢する力をください……いま、その力をくれたら……一生を神様に捧げます……って……おれ、いつも宗教の時間は寝てて、ぜんぜん関心ないけど……あんなときばかりは、神様に頼ってまうもんやな……でも……あかんかった……神はおらんかった

 「つまり……」わたしは唾を飲み込んで、声を整えた「イってもたというわけか」

 「ああ、あんなに我慢させられて、イったんは始めてやった……ものすごい量が出たわ……パンツが、グショグショになるくらいに……電車が駅についたら、慌てておっさんツキどばして、駅のトイレに駆け込んだわ……パンツ脱いで、捨てるためにな」
 「っちゅうことは……お前今、ノーパンなんか」
 「そうや……でも、パンツ脱いでびっくりしたんやけど………パンツの中に……これが入ってた」

 
 そういって、イイヅカ君は……ビニールの小袋に入った五千円札を見せてくれた。
 




 これはあくまで、わたしが彼から聞いた話であって、ほんとうのことかどうかはわからない。


 しかし……わたしはいまだにAVで潮を吹かされる女性を見るのが好きである。
 そして、それを見るたびに、イイヅカ君のことを思い出す。


 これらのことはまったく関係がないのかもしれない。

 あるいは、何か深いところでつながっているのかもしれない。


 愛と肉欲のように。
 慈しみと憎しみのように。


【完】

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 「……自分のしたことをわかってるね」

 わたしはできるだけ声のトーンを抑えて、ゆっくり、どんなバカにも理解できるように、丁寧に話しかけた。
 しかし目の前の女子高生は、一向にふてくされた様子を崩さない。

 倉庫兼事務所の小部屋の中は、彼女の香りで満ちていた。
 シャンプーの残り香と、少しの汗と、新陳代謝の香りだ。少し、桃の香りに似ている。


 ピポパポン、ピポパポン。


 店のほうから客が入ってくる音がした。
 レジを任せている赤尾くん、大丈夫だろうか。マジメでいい子なのはわかっているのだが、どうもトロいところがある。
 レジに立たせてもう一ヶ月になるが……どことなく頼りない。
 なんか、少しオタクっぽいし。


 「ほら、君が盗ったのはこれだけ?…何これ?この季節にカイロなんか盗んでどーすんの?……あと……なんだこりゃ。『ミナミの帝王』って。こんなの読みたいの?」
 「………はぁい」


 まるで欠伸でもするような返事が返ってきた。
 見たところ、16、7というところか。
 肩くらいまで伸ばした髪を左右に結わえて、その毛先をやたら気にしている。
 脚を大きく組んでいるので、短いスカートから太腿の大部分が露になっている。
 黒いハイソックスに包まれた足の先で、踵を踏み潰した傷の目立つ茶色のローファーがぶらぶらと揺れていた。


 「……なんでこんなの盗んだわけ?……お小遣いで買えないわけじゃないでしょう。……ってかこんなの、別に本気で欲しかったわけじゃなかったんでしょ?……遊び半分で、万引きしたんじゃないの?」
 「……うん?……うぅん?」

 
 なんとも取れない、なんとも解釈しようのない返事だった。
 
 一向に、反省の色というものが見られない。微塵も、垣間見ることができない。

 
 コンビニの雇われ店長になって5年。これまでに何人もの万引き犯を捕まえてきた。
 その中には、彼女のような女子高生もいた。
 老人もいれば、主婦もいたし、会社員もいた。
 セクシーで魅力的な人妻もいた。

 一体全体、世の中どうなってるんだ。
 うちの店で万引きすれば、人生の経験値が上がるとでも思ってやがるのか。


 「……“うぅん”じゃないよ君。これね、判ってると思うけど、犯罪なんだからね。今すぐ警察に連絡してもいいんだよ?……ってか、君は未成年だから、まずご両親に連絡しなきゃだめだな……はい、ここに紙とペンがあるからここに名前を……」
 「アレ、しないんっすかあ?」

 不意に、女子高生が口を効いた。
 見ると、下からなめつけるような目付きは完全にわたしのことを嘲笑っているし、ぽかんと開いたままの口からは、少しめくれ上がった状態の舌が覗いている。


 「……アレ?……アレって何?」
 「……ほら、アレ。なんか~“他になにか盗んでないか調べるから、目の前で着てるものを全部脱ぎなさい。ヒッヒッヒ”みたいな~」
 「な、なにを言っとるんだ君は!」

 思わず、大きな声が出てしまった。

 「……こわいっす~」まだ、彼女は笑っている。


 ピポパポン、ピポパポン。

 また客だ。


 「……え、脱がなくていいんっすかあ?……」
 「……だ、誰がそんなこと言ってるんだ!……もう判った。君には反省の色がぜんぜん見られない。さっそくご両親に来てもらうから、さっさとここに名前と住所と電話番号を書きなさい!!」
 「え、でもソレやっちゃったら~……」彼女が、事務椅子の上で、ぐい、と反り返って伸びをする。ブラウスの隙間から、縦型のへそが見えた「……“親に連絡されたくなかったら、おれの言うことを聞きなさい。ヒッヒッヒ”っての、できなくなっちゃうけど~」
 「……き、君は自分の立場をわかっとるのか?」


 小娘相手に、キレてしまった。
 気がつくとわたしは、椅子から立ち上がっていた。
 いや、誰だってキレるだろう。あなただったらどうする?


 「……え~……わかってるから言ってるんですけど~……これでも一応、ハンセーっての?セーイっての、そ~いうの見せてるつもりなんですけど~……」
 「反省とか誠意とか、意味をわかって言ってるのか君は」
 「……そんなにあたしの親に連絡したいんですか~?なんでそんなに親に連絡したいんですか~?……でも、にそうしたとして、どうなるってんですか~?」
 「もう知らん。もう怒った。親はいい。警察に連絡する。警察に引き渡して、そっちからご両親に連絡してもらうから。そこで思いっきり反省しなさい。もう知りません

 
 「え~……」足先で剥げたローファーが揺れる「……反省しなさいって~……あたしが反省したからって、店長さん、なんかいいことあるんですかあ~?……ケーサツで~……あたしが親に怒られて~……そこで~店長さんが知らないところで~……泣いて謝ったりしてるところとかを~ソーゾーしたりすると~……店長さんそれで満足なんですか~……?……そういうのが、コーフンするんですかあ~?……それって、マジ変態じゃないですかあ~?……それより~……ここで~……“親にも警察にも言わないから、僕の言うとおりにしなさい”ってしたほうが~……フツーじゃないですかあ~?」
 

 「君はおかしい」わたしは言った「何なんだ。おかしいのは君で、僕はまともだ。何か?……君は、基本的に男というものは誰も、こういう状況になれば、無条件でその立場をいいことに、君の身体を弄びたがるもんだ、と、そんな風に考えてるのか。見くびらないでほしいな。僕は、そういう男じゃない」
 「え~……なんか“カラダをモテアソぶ”って~……超エロいんですけど~」
 「エロくない!……君はおかしいぞ。そりゃあ世間には、そういう事をするけしからんことを企む輩もいるかも知れない。でも、ほとんどの男はそんなに悪い人間じゃない。頭でそういうことを企むけれども、実際の行動に移すことはない。ほとんどの男にはほとんどの人間には、理性ってものが備わってるんだ。そこが獣と人間の違うところだ」
 「え~なんかむつかしくてわかんないけど~……それってつまり、ケッカが怖いからしない、ってだけのハナシでしょ~……リセーとか、あんまりカンケーないっしょ~?」


 「なんで?なんでわからないんだ?」わたしの声はもはや、半泣きになっていた。
 「え~だって~………この前~……」女子高生はわたしの顔をちらりと見上げると、にたり、と笑ってから言葉を続けた「……地下鉄で~……こども料金で電車に乗ってたら~……改札で~……駅員さんにバレちゃって~………」
 「ほう?」


 なぜかわたしは、また椅子に座りなおした


 「……超怒られて~……なんか~駅員さんの~休憩室っての?仮眠室っての~?そーいうとこに連れ込まれちゃって~……トーゼン、その駅員さんと二人っきりでさ~……なんかミョーなフンイキになっちゃったわけですよ~……そしたら~その駅員さんが~……言うわけですよ~……『反省してんだったらそれを態度で示してもらわないと』って~……」
 「……マジかねそれは。なんかウソっぽいが」
 「え~……店長さん、続き聞きたかったりするんですか~?」


 ピポパポン、ピポパポン。


 女子高生が、身を乗り出してくる。気付けばわたしも身を乗り出していた。
 舌を伸ばせば届きそうな距離に、彼女の顔があった。


 「……それで~……『え~……態度で示すってどういうことですか~』って駅員さんに聞いたんですよ~……そしたら~……『態度で示すってのはこういう事でしょう』って~……スカートの中に~……手え突っ込んできて~………あ、まだ続き、聞きたいっすっか~?」
 「……話してごらんなさい」
 「店長エロいっすね~……それで~……なんか仮眠ベッドみたいなのに押し倒されて~……いきなりキスしてきたんすよね~……ベロin the マウスで~……」
 「ベロ、イン、ザ、マウス」わたしはオウムのように繰り返した。
 「……それで~おっぱいとか~メチャクチャに揉まれるわけっすよ~……あたし、ちょっと胸大きいじゃないっすか~」
 「うむ」確かに。
 「……で、左手におっぱい、右手in the スカートで~……パンツとか~……マジ脱がそうとしてくんですよ~……で~結局~……パンツ伸びるくらい引っ張られちゃって~……破られると超困るから~……そのままズルっ、みたいな感じで~……」
 「……脱がされちゃったわけだね」
 「続き聞きたいっすか~?」


 ピポパポン、ピポパポン。


 「……聞かせてもらえるかな」
 「……やっぱ店長、超エロいじゃないっすかあ~……で~……話したら警察とか親とか、そういうのナシにしてもらえますか~?」
 「……いや、それとこれとは……」
 「じゃあ話さないっす~」


 ひらり、と身を翻すように彼女はわたしから離れていった。
 そしてまた、事務椅子の背もたれで大きく伸びをする。
 また、ちらりと、へそが見えた。
 

 「……じゃあとりあえず、警察はなし。それでどうかね?」
 「……え~……」彼女はちょっとふくれっ面を作って、ちらりとわたしを見た「ま~……それから~……パンツ脱がされちゃて~……そのままスカートも脱がされちゃって~……下半身、パンゼロにされちゃったわけっすよ~……それで~……膝小僧をガシ、みたいにワシヅカミされて~……そのままガバ、みたいにM字系にされちゃったわけですよね~……そこで~………駅員さんが~……脚の間に~…………まだ聞きたいっすかあ~……?」
 「……よし、学校には連絡しない。それでどうかね?」
 「え~……ガッコなんて~……最初はハナシに出てなかったじゃないっすか~……ま、い~けどね~……それで~……駅員さんが~……脚の間に顔突っ込んできて~……舌で~……アソコ関係を~……」
 「『アソコ関係』ってどこのことなのかちゃんと言い…」
 「まんこっすよ~……まんこ、っていうかクリ集中攻撃?~みたいな~……」
 「……そ、それで君は……か、か……感じ……ちゃったり……しちゃったのかね?」
 「……え~……店長マジ、エロいんですけど~……え、どうだったか答えたらあ~……親に連絡しないっすか~……?」
 
 
  ピポパポン、ピポパポン。


 続いて、ゴクリ、という大きな音がして驚いた。
 なんとそれは、自分が唾を飲み込む音だった。




 数分後、わたしはバイトの赤尾くんとカウンターに並んで立ち、女子高生が店を出て行くのを見送っていた。
 自動ドアの向こうで、彼女の紺色のスカートがひらりと揺れ、一瞬立ち止まり、そのまま人込みの中に消えていった。


 「……店長」赤尾くんが言った「……超かわいい娘でしたよね」
 「そうだね」わたしは答えた。まだ少し、呼吸が乱れていた。
 「スカート、超短かかったですよね」
 「そうだね」
 「ケーサツも親も、呼ばなかったんっスよね」
 「ああ」わたしは口の中でもごもごと答えた。
 「……やっぱ自分、正社員目指します」赤尾くんがいつになく熱のこもった口調で言う「……絶対、店長クラスまで昇りつめるっす」

 赤尾くんの目が、ぎらぎらと光っている。
 
 
 こいつはさっさとクビにしたほうがいいな、とわたしは思った。


 【完】

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 多くの男は、元カノと、ふつうの見知らぬ女を比較したとき、ふつうの女よりも元カノのほうが、セックスまで持ち込むハードルが低いと考えているようだ。


 たとえば今、あたしと電話で話しているツカモト。
 こいつの現在の心境なんかはその典型なんだろう。

 「最近、どうしてるの?」
 「別に、あんまり変わりないけど」

 あたしはできるだけ気のないふうを装って、言葉を選び、声の抑揚も抑えて答える。

 「・・・・・・最近ヒマでさあ。まあ仕事のほうは順調なんだけど、出会いが少ないっていうか」
 「ああ、そう」
 「で、そっちはどうなの?・・・新しい彼氏できた?」
 「いやそれ、あんたに関係ないよね


 ちょっとだけ、ほんの少し、軽くキレてしまった。
 いきなりそうくるか。

 
 「そーなんだあ・・・相変わらず、ガードが固め、みたいな?……なんか、男を寄せつけない雰囲気っていうかさ、そういうの、前からない?・・・・・・まあ自分ではわからないと思うけど」
 「え、あんた、あんたにはわかるっての?」

 いけない。
 またケンカ腰になってしまった。
 
 ツカモト、てめえ、いったい何様だよ。
 

 「え、なにキレてんの?」笑いながらツカモトが言う。
 「キレてないよ。別に」
 「なんでそうすぐムキになるかな~・・・そういうとこが、君のわるいとこだよ」
 「いや、だからそんなの、いまやあんたに関係ないし」
 「わかってるって・・・まあ、昔のなじみの、アドバイスだよ。そんなふうだから、彼氏できないんだよ」
 「ってか、なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないわけ?」

 
 ツカモトは、あたしのことを良く知っているつもりなのだ。
 ほかの男たちよりずっと。


 確かにツカモトとはいろんなことをした。

 付き合ってるときは、会うたびにセックスをした。
 お互いの部屋で、そりゃあ人様にはとても見せられないような姿を彼には晒したし、ツカモトは他の男よりもずっとたくさん、あたしの服に隠れている部分について知ってる。

 たとえば、あたしのお尻の上に、双子のほくろがあることとか。

 それを発見したのはツカモトで、あたしはツカモトにそれを指摘されるまで、自分でもその存在に気づかなかった。


 「じゃあ今、ひとりなんだ。でもなんだかんだ言って、寂しいでしょ」
 「え、別に。・・・ってか、それも今やあんたとぜんぜん関係のないことなんですけど」
 「いや、わかるんだよ。そういいながら、君がすっごい寂しがりだって。だってそうだったじゃん。おれと付き合ってるときは。・・・普段の君からは想像もつかないだろうなあ・・・君が結構、甘えん坊で寂しがり屋さんだ、ってことを」
 「ってか、マジ、キモいんですけど」
 

 怖気が走った。
 なんなの、こいつ。
 
 
 「・・・そうそう、そういう、普段の態度と、プライベートのときの寂しがり屋で甘えん坊なののギャップが、グっとくるんだよなあ」
 「・・・え、ほんと・・・シャレになんないくらいキモいんですけど」
 「・・・そういうとこを、もっと表に出さなきゃ。男ってのはさあ、そういうギャップに弱いんだよ。普段、怖い顔して厳しいことしか言わない君が、ときどきそういう素顔を見せたら、もう並の男だったらたまんないと思うよ」
 「ちょっと、調子に乗りすぎでしょ。めちゃくちゃムカつくんですけど」


 マジで、なんなの、こいつ。
  中谷彰宏 ?


 こんな評価をあたしに下して説教するなんて、いったいこいつ今、どんな立場に立ってるつもりなのだろうか。

 
 そりゃあ、付き合ってるころは毎回のようにシックスナインみたいな体勢をとって、お互いのアソコを、ってかお尻の穴まで舐め合った。
 会社の事務服をあたしの部屋に持って帰って、ツカモトはスーツ、あたしはOL服で、イメージプレイだってしたことはある。
 目隠し&万歳拘束で、羽箒で責められたこともある。
 その逆で、ツカモトを目隠し&万歳拘束して羽箒で責めたこともある。
 休日のデート中に、雑居ビルの踊場で声を殺してセックスしたこともあった。 



 そういえば、付き合っているとき、大喧嘩したことがあった。
 たぶん理由は些細なことだったと思う。もうはっきりとは覚えていない。

 そのとき、わたしがツカモトを完全に言い負かしたら、いきなりツカモトが襲い掛かってきた
 乱暴に部屋の床に押し倒されて、むしり取るように衣服を剥ぎ取られた。
 ツカモトは超興奮していて、あたしは抵抗したけど、それはそれでまたなぜかあたしも興奮していた。
 
 多分あのころは、お互いそれなりに・・・お互いのことが好きだったのだろう。

 さっきまで怒り狂っていた相手が、妙に興奮して襲い掛かり、あたしの服をはがして、むしゃぶりついてくる。
 

 その乱暴な衝動にもとづく愛撫に身を任せていると、へんに心地よかった。


 あの時は、台所まで這って逃げたけど、四つんばいのまま組み伏せられて、お尻を高く上げさせられるような格好で、前戯もそこそこにぶちこまれた
 

 不思議なことだけど、その段階まで来たときには、あたしは口では

 『……て、てめー!!……あ、後で覚えてろよ!!!』

 みたいなことを言いながら、内心では超盛り上がっていた。


 ぶちこまれた時には、

 『ああああんっ!!!』

 みたいな、超甘えた声を出して、そのままカイラクの渦ノミコマレてしまった。


 『ほれほれ・・・なんだかんだ言ってもうびちょびちょじゃないか・・・気持ちいいんだろ?』


 とかなんとか、ツカモトが調子に乗ってあたしをがんがん突いてきた。

 『・・・き、気持ちよくねーーよ!!!』

 と叫んだけども、声がすっかり 鼻に掛かった甘え声になっていたので、ぜんぜん迫力がないことはわかっていた。
 というか、めちゃくちゃ気持ちよかった


 必死で声をこらえたけど、こらえようとすればするほど、声が出てしまう。


 声をこらえなきゃならない状況で、相手を見た目で喜ばせたくない、というような前提としてのあたしの認識みたいなものが、頭の中で変に作用し合って、あたしの全身にいつも以上の刺激を配信していた。

 
 実際、最後には台所で組み伏せられたまま、イッてしまった。
 実際、途中からはあたしも、なんとしてもこのシチュエーションでイッテしまおうと努力していた。


 その後は言うまでもないが、ちゃんと仲直りした。
 それからもしばらくツカモトとの交際は続いた。
 ほどなくして二人の関係は終わったけど、この件とは何の関係もない。



 あの頃は、お互いそれなりに、お互いの良いところを見つけ、それを好ましく思おうと努力していた。

 そう、努力。 

 たとえばこういうグダグダなセックスにおいても、何とか愉しみを貪欲に見つけ出そうとする積極的な姿勢があたしにもあったし、それはツカモトにもあったと思う。


 関係を継続するのに必要なのは、お互いの良さを探りあい、失点を見逃しあおうとする努力なのだ。
 その努力がどちらかから、あるいは両方から失われたとき、関係は崩れる。
 一緒に過ごすということは安らぎではなく、常に心を配っていかねばならない継続の努力だと思う。

 
 「……じっさい可愛いとこあるんだしさ、そこをもっと表に出すようにしなきゃ」
 「……え、えっと……何だっけ」


 しばらく昔のことを思い出していたので、ツカモトの話をほとんど聞いていなかった。
 まあ、聞いていたとしても同じ調子で、ロクでもないことを喋り続けていたのだろうけど。


 「……ほら、昔喧嘩したことあったじゃん。喧嘩した後……その、アッチの方になだれ込んじゃったことが」
 「え」

 一瞬、どきん、とした。

 「あの時のこと、今でもおれ、よく思い出すんだよ……なんつーかなあ……あんなにコーフンしたことって、アレ以来ないんだよね。……いやあ、ほんと、最高のエッチだったよ。ね、ちゃんと覚えてる?覚えてるでしょ?」
 「…………」
 「あの時さ、君もすっごく亢奮してたよね。あんなに激しくヨガったこと、それまでなかったもん。実際おれ、あんとき隣に君の声が聞こえないかどうか、ちょっと心配だったけど、それでも全然萎えなかったもんね。……なんつーの?野生の本能ってのかな?……おれってどっちかって言うと、繊細で内に篭るタイプじゃん?だから自分のなかに、あんなにキョーボーな本性が宿ってるなんて、思ってもみなかったんだよね。まあ、君がエッチなのは知ってたけどさ、でも、あそこまでMっ気っての?……そういうのがあるタイプだとは思わなかったなあ……実際、君みたいなパッと見は怖そうな、しっかりしてそうな女の子が、あーいう局面で見せるM的側面?……みたいなものを見せられると、実際男としてはたまんねー訳ですよ。ね、聞いてる?」
 「切るね
 「あっ……てめえこの……」


 プツ。


 なんでツカモトは、あのときの話題なんか持ち出してきたんだろう。
 

 あたしが、怒り気味だったからだろうか。

 だとすると、あのときのセックスの様相を思い出させれば、またあたしも自動的に超亢奮して、昔みたいにセックスができるとでも思ったのだろうか。

 そう思うと、笑けてきた。


 でも、同時に肌寒さも感じた。




 人は、ひとりでは生きられない。


【完】

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 わたしは超能力者である。


 あ、何かもうすでに、君の『話をまじめに聞こう』というモチベーションが下がるのが判ったぞ。


 いや、聞き手がどれだけ話をまじめに聞いているか、ということを推し量るのは、人並みに会話の空気を読むことができる人間ならば誰にだってできることだ。
 それは何も、超能力じゃない。


 わたしに授けられたこの奇妙な天分は、一種の透視能力だ。


 透視能力、というと何かスカートの上から女性がどんなパンツを履いているのかを見通せる、あるいは女湯と男湯を仕切る壁を見通せる、みたいに思われるかも知れないが、それは違う。


 え?何?……ますます聞く気を無くした?
 中学生レベルだな、君。
 わたしが超能力を使って道行く女性のパンツを片っ端から覗いてます、なんて話、君、聞いてて面白いか?

 

 わたしの透視能力は一種の霊感であって、研ぎ澄まされた感受性と感応性、インスピレーションと洞察力のたまものだ。

 犯罪現場を見ただけで、犯人の動機や犯行の様子、果ては容疑者の人相まで言い当ててしまう、サイコメトラーと呼ばれる超能力者たちがいるが(本人たちがそう言い張ってるのでそれを信じるとして)、わたしの能力はそれに近いものだ。


 ただ、わたしの能力はひとつのことに限定されている。
 
 わたしは、女性の体の一部分に触れることによって……その女性が一番最近にした性行為の様相を、脳裏には映像として、体感は感覚として、フラッシュバックさせることができる。


 つまりこうだ。

 たとえば駅前を歩いていたとする。
 まだ20そこそこの、なんだか死んだような目をした女の子が、パチンコ屋の広告付きのポケットティッシュを配っている。


 「CR『火垂るの墓』本日入替です~……」


 などと、彼女が気のない素振りで差し出すポケットティッシュを受け取りざまに、そっと彼女の指に触れる。



 と、その瞬間、わたしの脳裏にはありありと映るのだ。

 彼女がどこかの狭いワンルームの小部屋で、全裸でいる姿が。
 
 今は安物のジーンズに窮屈に押し込めている丸く大きな尻を、シングルベッドの上で突き出して、四つんばいになっている様が。

  Tシャツの上からは伺えない、たいへん発育のよろしい瓜型のふたつの乳房が、ベッドの弾みとともに水を満たした風船のように重く揺れる様が。

 肩越しに彼女が彼氏に送る、おねだりするような眼差しが。

 一日中バイトで声を出しすぎて、ちょっと酒やけのように掠れたそのハスキーボイスが、甘えるような吐息に変わる、その響きが。

 尻を高く挙げた後背位の姿勢で、彼女の体内ににゅるり、と押し込まれる陰茎の感覚が。
 その瞬間は、驚くべく事に……わたしも下腹部に、何ががにゅるり、と侵入してくるような異物感を感じるのだ。


 部屋の空気の臭い(つまり、アレの香りだ)や、微かに映る壁紙の色、おぼろげな彼氏のシルエット(丸坊主で中肉中背だ)、ベッドの上のシーツの感触、そして、内壁で感じる彼氏の陰茎の脈拍までもが、ありありとわたしの五感を通して再現される。


 ほんの半秒ほどの出来事だ。
 しかしその感覚はあまりにリアルで、生々しい。


 幻影の発作から開放されると……わたしはティッシュを手に彼女の前を通り過ぎていて、振り返れば先ほどは幻影の中でむき出しになっていた彼女の尻が、ジーンズの布に包まれてこっちを向いている……という具合。

 
 そんな生々しいビジョンを見た後で、ちゃんと服を着てティッシュ配りをしている彼女を改めて嘗め回すように見やるのは、また格別である。


「CR台『火垂るの墓』本日入台です~……」


 ふーん。なるほど。

 バイト先ではあんなにテンションが低いのに、ベッドの上ではねえ。

 ふむふむ。
 へーえ。

 というように。



 この能力は、自分で制御することができない。

 ありとあらゆる場で、わたしの指が他の女性に触れるたびに……その女性の直近の性体験が、リアルな映像と感覚を持ってわたしの頭で再現されるのだ。

 先日など、某ファーストフードチェーンでつり銭を受け取った際に、レジカウンターのアルバイト女子(恐らく10代後半)の指に触れてしまった。


 と、途端にわたしの視界に、毛むくじゃらの剛毛が広がり、口内に大いなる異物感が分け入ってきた……なんとそれはにまで達して、わたしを噎せさせた。


 その後感じたのは、熱い肉茎の表面と、口いっぱいに満たされた精液の苦い味、そしてその熱く粘性の高い液体が、ゆっくりと食道を通っていく感覚である。

 そのフラッシュバック発作の後、わたしははっとして顔を上げた。


 目の前で¥0の営業スマイルを作っているのは、どことなく垢抜けない、まだあどけなさを残したような、印象の薄い少女である。

 わたしは今味わった精液の味とその牧歌的な彼女の風情に大いなる落差を感じ、愕然としながら、その店でハンバーガーとシェイクを味わった。
 味わおうとすればするほど、口の中に再現された精液の後味がおぞましく思えた。


 
 この特殊な能力が、女性に対して……しかも、性体験限定で発揮される理由は、わたしにもよくわからない。まさに神秘であるとしか言いようがない。

 

 居酒屋でジョッキを受け取った際に、もう60は越えていると思われるママさんの、(悠に5年くらいは前の)ご主人との交歓が再現され、食欲も飲酒欲も性欲も、一時的にではあるが失ったことがある。

 かと思えば、役所での手続きの際に、30歳前後の生真面目そうな窓口女性の手に触れた瞬間、全身に食い込む荒縄の感覚と、肛門にこじ入れられる(おそらく人工物であろう)異物の感覚が再現され、大いに戸惑ったことがある。

 さすがに先日、通勤電車で小学生女児の手が偶然わたしの腕に触れた際(誤解しないで頂きたい。わざと触れたわけでもないし、ましてやましい気持ちなど毛頭なかった)、自宅のお布団の中と思しきところで自分の陰核をまさぐる自分の指先の感覚と、はげしい亢奮と、背徳感がわが身に再現されたときは、気が遠くなった。



 さて、勘のいい読者の皆さんならもう関心を抱かれているところだろう。

 
 そのような超感覚を持つこのわたしが、実際に女性と性行為に及べば、どのような感覚を得ることができるのかを。

 

 それはまさに、空前絶後の感覚である。


 自らの触れる相手女性の器官の感覚が、ダイレクトな直感となってわが身に再現されるのである。

 相手の左乳首に口づけすればその感覚が自分の乳首に電撃のように走る。
 
 わき腹を愛撫すればその感覚がわたしの全身を泡立て、首筋に舌を這わせれば相手が感じる感覚を自分の全身が知覚し、躰をわななかせる。

 もしや大きく開いた脚の奥に我が顔をうずめ、その舌先で快楽の中枢を刺激した暁には……。



 わたしはその恐るべき感覚を表現し、君らに伝える言葉を知らない。



 ならば、その感覚を君自身もわが身で味わうしかないだろう。
 君も多いにその未知の感覚に興味を惹かれている様子だし。

 
 自分には、そんな能力は無いと?


 失望することは無い。
 この超感覚はちょっとした修練によって、誰にでも身につけることが可能なのだ。


 はっきり言って、セルフコーチングや速読術、記憶術などよりもずっと簡単に、わたしが持つこの能力を、君も共有することができる。


 興味がわいたかね?


 ちなみに通信教育の初心者コースは¥20,000から受け付けている。


 興味を抱かれた懸命な読者の諸兄は、コメント欄まで連絡をいただきたい。


【完】   

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 「さあ、それじゃあ・・・一枚一枚・・・脱いでもらおうか」
 「・・・は、はい」

 荻原さんは、あたしと一切目をあわさずに、ベッドに腰掛、タバコをふかし、いかにもそれらしく振舞おうとしている。


 それらしく、というのは、金にものを言わせて女を自由にするゲス野郎のことだ。


 でも、ほんとうの彼はそんなことはとてもできない小心者だ。
 小心者だけど、品性は下劣なので、やはりあたしの願っていたとおりのことを言ってくれる。


 「・・・あの・・・う、上から脱げばいいでしょうか。・・・そ、それとも下から?」
 「・・・・そうだな・・・・・・・・・・・・・・・」しばらく考え込む「・・・・スカートの下、パンツだけ?」
 「・・・・ええっと・・・・そ、そうですけど」
 「じゃあ・・・下から」

 そういうところにはこだわりがあるらしい。
 あたしはゆっくりとスカートのホックに手をかけた。
 ホテルの部屋にはいたるところに鏡が張ってあって、いろんな角度からあたしの姿を見ることができる。
 

 スカートを脱いだ。


 ふぁさり、という感じであたしの足元にスカートが落ちる。
 シルクの、黒いパンツが露になった。
 ちょっとメッシュが入ってたりして、いやらしいデザインのやつだ。



 荻原さんが、ゴクリ、と、まるでマンガみたいに唾を飲み込んだ。
 ずきん、ときた。最初にきたのは、胸の痛みだった。
 

 あたしは次に、ブラウスに手をかけた。


 「あ、ちょっと待って・・・」荻原さんが、手を差し伸べて言う。


 あたしはブラウスのボタンから手を離して、そのまま身体の前で重ねた。
 いらっしゃいませ”とでも言い出しそうなポーズだったけど、きっと荻原さんにしてみれば、あたしがパンツが丸見えになっていることを恥じらっているみたいに見えるだろう。


 荻原さんは脂でガ表面がひどく汚れたメガネを一旦外し、枕元に備え付けられていたティッシュを一枚取ると、丹念にレンズを拭き始めた。
 

 しっかりと目で楽しむつもりなのだ

 

 また、ずきん、ときた。次にずきん、ときたのは、おへその上だった。


 「・・・いいよ、続けて・・・」メガネをかけなおした荻原さんが言う。
 
 あたしはコクリ、とうなずくと、ひとつひとつ、丹念にブラウスのボタンを外し始めた。


 その指使いと、あたしがすり合わせる太ももと、うつむき加減のあたしの表情・・・そういったものすべてに、荻原さんの熱い視線が注がれているのがわかる。


 まるで、コップ一杯に注がれて表面張力しているようなお酒に口を近づけて、一適もこぼさずに味わおうとしているようだった。
 

 ああ、これ、これよ。
 あたしは思った。
 思ったとおりの人だわ、荻原さんって。


 「・・・恥ずかしいだろう・・・?」荻原さんがもごもごと言う「・・・ほら、こんな羽目になるなんて、後悔してるだろう?」
 「え・・・いえ、はい・・・いや、いいえ・・・そんな・・・」曖昧にもほどがある返事をしてみる。
 「無理しなくてもいいよ。君は後悔してるだろう・・・?・・・でも全部、君が悪いんだからね」


 ブラウスのボタンを全部外してしまって、ふわりとそれも床に落とした。
 あたしはブラいち、パンいちの姿になって・・・再び身体の前で手を合わせ、もじもじと太ももをすり合わせた。


 「・・・恥ずかしいだろう?・・・やっぱり。なんであたしがこんな目に遭わなきゃなんないの?・・・・って・・・思ってないかい?」
 「・・・え、そんな・・・」
 「ブラジャーも、外して」
 「・・・はい」


 背中に手を回して、ホックを外す。

 ふわ、と胸のしめつけが緩くなって、あたしの鼓動がさらに一段、早くなる。
 両腕で胸をかばうようにして、肩のストラップを注意深く外す・・・そんな一挙一動を、荻原さんは見逃そうとしない。


 「・・・パ、パ、パンティーもだよ」
 「は、はい」



 きた。

 パンティー”



 荻原さんが、いかにも言いそうな言い方だった。
 また、ずきん、ときた。
 こんどはおへそよりも、もっと下の部分に痛みを感じた。


 言われたとおりに・・・両腕で荻原さんの視線から身体を守るように振る舞いながら、パンツを脱いでゆく。


 すっかり脱いでしまうと、右手を伸ばして股間を隠しながら、左手で右の二の腕を握るようにして胸を隠し、中腰の姿勢で立つ。



 ・・・あたしは表情に気をつかった。



 上目遣いで、下唇を噛みながら・・・『もう、これで許してください』・・・というようなことを表情で訴えかけられるように努力した。


 「せ、背筋をしゃんと伸ばして・・・・そ、そうだ・・・気をつけ、気をつけの姿勢だ・・・・」


 小さな声で、命令口調を作る頼りなげな声。

 
 「・・・で、でも・・・」
 「・・・なんで・・・なんでこうなったかわかってるよね?・・・そう、忘れてないよね?・・・・き、君は僕に・・・返せない借金をしたんだ。・・・そうだろ?」
 「・・・は、はい・・・」
 「・・・か、返せる見込みがないんだったら・・・・しゃ、借金なんか・・・しちゃだめだよね?」
 「・・・そ、そうです・・・でも・・・」
 「・・・でも、君は借金をした。で、それを・・・か、返せないと僕に言った・・・じゃ、どうやって・・・どうやって僕の損害を埋めるの?」
 「・・・・・」


 あたしは中腰の姿勢で、必要な部分をまだ隠しながら、もじもじと身体をくねらせた。
 時折、荻原さんを見上げて、祈るような視線を投げかける。

 
 荻原さんのような男が、ますます意地悪な気分になりそうな、まるで子供が先生に許しを請うような、泣きそうな目で。



 『てめえ、ガキじゃねえんだからいまさら何甘えてんだよ

 と、思わず怒鳴ってしまいそうな顔で。


 ほんとうに自分が間抜けで、頭の弱い、安易な女になった気がした。

 さっき痛んだところからさらにおへその下、ほとんど、恥骨の上辺りにまた、ずきん、と痛みが走った。


 こんどの痛みは、痛みではなくほとんど痺れに近かった。


 「・・・・身体で返すって・・・言ったよね?」と、荻原さん「・・・好きにしていい、って言ったよね?」
 「・・・・い、言いました・・・でも・・・こんな・・・」
 「気をつけ!!!


 突然、荻原さんが大声を出してベッドから立ち上がった。
 
 ひっ、と実際マジに驚いて、思わず気をつけをする。


 「・・・ほら・・・そうだ・・・いい子だ・・・いや、悪い子だ・・・お金のありがたみがわかってない、悪い子だ・・・」
 「・・・・ま、待って・・・待って・・・くだ・・・さい」


 荻原さんがじりじりと、すり足で近寄ってくる。
 あたしはじりじりと、逃げ場の無い壁のほうへ、後ずさる。


 「・・・だめだ・・・今日、僕は君を自由にできるんだよ。君、僕にいくら借りたか、わかってる・・・?」
 「・・・・・」また胸を両手で庇いながら・・・下半身は丸出しだったけど・・・唇を噛んで顔を背ける「・・・・さ、30万・・・です」
 「そうだ・・・30万円。僕の一ヶ月分の給料だよ?・・・え?僕は、そのお金のために、一ヶ月も、身を粉にして働かなきゃならない。・・・わかるだろ?」
 「・・・・でも・・・あたし・・・・」
 「でも、あたしじゃないだろ!!!ほら!!!」
 「・・・・あっ、いやっ・・・・んんっ!!!」

 荻原さんがあたしを抱きすくめた。

 すばやく顎をつかまれて、唇に吸い付かれる。
 すかさず、舌が入ってきた。
 そのまま、口の中を、好き放題に舐りまわされる。
 

 頭の中が、じーん、と痺れた。
 頭の奥に穴が開いて、そこから新鮮で冷たい空気が入ってくるみたいだった。


 こんなこと言うと本当に変だと思われるかも知れないけれど・・・それだけで、溢れそうになった。


 長い、長い、強引で、ひとりよがりで、闇雲なキスが続いて、ようやく荻原さんが唇を離す。


 「・・・どうだ?イヤだろう???
 「・・・んっ」顔を背けようとしたけど、顎を掴まれた。
 「・・・どうだ?・・・僕みたいな男と、こんなことするのはイヤでイヤでしょうがないだろう??」
 「・・・・そ、そんな・・・・あ、あうっ」
 

 今度は荻原さんの唇が、首筋に吸い付いてきた。
 首筋から鎖骨へ、鎖骨からおっぱいへ・・・荻原さんは夢中で吸いまくりながら、まるで呪文のように言葉を続ける。



  「・・・ほら、イヤだろう?・・・これが、これが30万円の・・・リ、リスクだよ・・・き、君だって・・・僕みたいな冴えない男に、こんなふうに自由に身体をねぶりまわされて・・・死ぬほどイヤな気分だろう?・・・ほんとは彼氏にしか・・・イケ面の彼氏にしか・・・・こ、こんなことはさせたくないだろう?・・・・・・悔しいだろう?・・・つらいだろう?・・・悲しいだろう?・・・ほら、ほら、どうなんだ?」
 
 
 まるで、自分に言い聞かせているみたいだった。
 あたしの頭は、ますます痺れてきた。
 あたしの乳房をべろべろと嘗め回す荻原さんを見下ろす・・・醜悪きわまりなかった。


 餌にがつつく下品なブタそのものだった。

 

 でも彼の繰り出す言葉のみみっちさを感じれば感じるほど・・・
 彼のあさましい、醜い姿を見れば見るほど・・・
 あたしの頭は痺れ、身体はとめどなく溢れ続けた。



 これよ。これ。
 こうでないと。
 こうでなきゃ。



 あたしは演技だと悟られない程度に、軽く抗いながら・・・それでも肉体的にはさもしい感覚を受け入れてしまう、悲しい女のサガ、的なものを必死で表現した。
 表現した、というのはちょっと嘘だ。
 さもしい感覚のほうは、自分が今感じているしびれるような快感に任しておけばよかったのだから。



 「・・・・ほら、どうだい?・・・君は今、30万円のツケを払ってるんだよ・・・まだまだ、まだまだこんなもんじゃ足りないよ・・・僕の一ヶ月分の働きが・・・僕の一ヶ月分の働きがどんなものか、・・・・き、君の身体に、教え込んでやる・・・お金の大切さを・・・その身体に刻み込んでやる・・・・ほら、どんなことをされるか、想像しただけでゾッとするだろう・・・?・・・頭から僕を追い出そうとしても無駄だからね・・・ほら、どんなに目を閉じて、頭の中で僕とは正反対の、さわやかなイケ面の彼氏を思い浮かべてもムダだよ・・・今、君の身体をもてあそんでいるのは・・・僕なんだ・・・君に30万円を貸した、債権者の僕なんだ!!」
 「・・・・い、いやあっ!!・・・んんんんっ!!」

 荻原さんが、あたしの左乳首に吸い付いてきた。
 そのまま彼はあたしの身体を反転させると、ベッドのところまで押していき、どん、と突き飛ばすように投げ出した。


 「・・・ほうら・・・30万円分、今晩はたっぷり楽しませてもらうよ・・・一銭も無駄にしないから覚悟してね・・・さあて・・・まずは最初の5000円分、誠意を見せてもらおうか・・・」


 あたしはベッドの上で仰向けになりながら、荻原さんがズボンのベルトを緩めるのを見ていた。
 


 ベッドサイドには錠剤のシートがひとつあって、2錠分が空になっていた。
 つまり・・・あれは・・・その、男性が元気な状態を保つための、その類の薬なのだろう。



 ああ、なんていじましいんだろう。



 あたしは『もう許して・・・』の表情を崩さぬようにしながら、じりじりと全身を駆け巡るしびれに身もだえしていた。


 あたしは間違ってなかった。
 荻原さんは、あたしが思ってるとおりの男だった。
 

 30万円の借金を申し込んだとき・・・荻波さんの目が、眼鏡の奥で・・・暗く、かすかに歪んだのを見た。

 
 たぶんあの時点で荻原さんは・・・今していることの青写真を頭に描いていたのだろう。
 あたしの借金が、お金では返ってこないことは、彼にも十分わかっていたはずだ。
 
 
 もちろん、あたしも荻波さんにお金を返すつもりなどさらさらなかった。



 一ヵ月後、お金を返せないことを告げたときの荻原さんの表情を思い出すと・・・。

 だめだ。また、とんでもなく溢れてきちゃった。

 すりあわせた内腿が、ちょっとぬめっていた



 「・・・・ほうら・・・・まず、誠意を見せてもらわないと・・・言っとくけど・・・これは利子分だからね・・・ちゃんと誠意を見せないとだめだよ・・・」


 凶悪なまでに張り詰めて、赤黒く鬱血し、ひくついている債権者の先端が、あたしの鼻先で熱いよだれを零していた。


 あたしはまた、『お願いだから許して・・・』の顔を作り、一旦荻原さんの(ニヤけた)顔をしばらく見上げると・・・観念したように目を閉じ、唇をそっと開いた。


 
 あ、借りた30万円・・・?



 今日履いてきたパンツを買って、残りは『あしなが育英基金』に寄付した。


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 地方に出かけたときのことだった。
 その駅は無人駅で、電車を待っているのははじめ、わたし一人だった。

 電車がやってくるまでは雄に40分ある。

 本も持ってこなかったし、当時はi-podも持っていなかったので、わたしにできることはいやがらせのように広がる田園風景を眺めていることくらいだった。


 ああ、いったいこんなところで暮らす人間は、何を楽しみにして生きているのだろうか?
 ファミリーレストランはおろか、コンビニすらない。
 たとえば10代の若者たちは、こんな場所でどんな青春を過ごすのか。


 まあ、バイクを乗り回すには土地が有り余ってると思うけど、あぜ道をバイクで走り回るのはどうも絵にならない。
 畑の中を耕運機で走り回ってるほうが、ずっと生産的だ。


 では何だ。
 あとは不純順異性交遊か?


 そうだろうなあ、それしかないだろうなあ、などと考えていると、高校生らしいカップルがどこからともなく現れ、ホームに入ってきた。


 男子のほうは、ちびで、眼鏡をかけた、やせた少年だった。
 女子のほうは、肉付きがよい、健康的な雰囲気の少女で、まかりまちがっても美少女ではないが、目も当てられない、というほどでもない。

 わたしはホーム中央のベンチに腰掛けていたが、二人は短いホームの端っこの地べたに、べたり、と腰を下ろした。



 体勢は・・・胡坐をかいた少年の開いた足の間に、ぴったり少女のほうが納まるような感じだ。
 ちょうど、猿が毛づくろいをしているような格好である。


 
 なるほど、ここならイヤってほどイチャつけるよなあ、とわたしは思った。
 もちろん、わたしの存在を気にしなければ、という話だが。

 

 わたしはあまり二人のことを見ないように心がけて、そのまま電車を待った。
 風が強い日で、春だというのにその界隈はまだ肌寒かった。



 しばらく、何の刺激も、展開もない時間がいたずらに流れた。

 

 と、強い風がびゅう、と吹いて、二人の声をわたしに届けてくる。


 「ヤバいって・・・見られるやん」少年の声だ。
 「・・・大丈夫やって・・・見てへんって」少女が囁くように答える「・・・あっ、そこ・・・」



 自分には関係のないことだし、最初は気にしないつもりだった。
 しかし、誰かに見られているかいなか、と彼らが気にするべき対象は、わたししかいない。
 それに、今のわたしには、見るべきものもなければ聞くべきものも何もない。


 そっと顔を向けて・・・ホームの端の二人にちらりと目をやった。


 間抜け面の少年と、ばっちり目が合った。


 「・・・あっ・・・あかんて・・・やっぱりおっさん、こっち見てるわ」と少年。


 『おっさん』というのは、かなりの確立でわたしのことらしい。



 わたしはあわてて二人から目を逸らせた。
 
 と、今度は少女の声が聞こえてくる。


 「・・・・ええやん・・・」少女の声は、どこか熱っぽかった「・・・そのまま、続けて」
 「でも、見られてるし・・・」
 「見られるくらい、ええやん」
 「ええの?」
 「・・・ええって・・・続けて」



 どうやら見られてもいいらしい。
 また何気ないふりを装って・・・ちっとも何気ないようには見えなかっただろうが・・・二人の状態を確認した。


 
 『猿の毛づくろい』の姿勢は変わらなかった。
 しかし胡坐をかいた少年のひざの上に乗る姿勢で座っている少女の両脚は、線路側に向かって大きく開かれていた。
 

 たくましいくらいの脚だった。
 白いソックスは、彼女の脹脛の緊張で、張り裂けんばかりだった。


 汚いスニーカーを履いた足先が、時おりぴくん、ぴくんと跳ねる。


 後ろから覆いかぶさるように少女の背中を支えている少年の右手は、大きく開かれた少女の脚の間・・・スカートの中に消えていた。
 左手は・・・ちゃんと見えないが、少女のかなりダレた紺色のカーディガンの中に入っているらしい。

 
 彼の両方の手は、寸暇を惜しむように、せわしなく動いていた。


 「あっ・・・やっぱり・・・やっぱり・・・おっさん俺らのこと見てるわ・・・・」と少年。声が上ずっている。
 「・・・ええやん・・・そんなん・・・見させときいな・・・・」
 「・・・・でも、チラ見とちゃうで・・・ガン見やで」


 わたしは少年の言葉で、自分が指摘されたとおり、二人のことをガン見していることに気づいた。



 「・・・見たいんやったら・・・見させといたらええやん・・・
 

 少女がちらりとわたしを見やる。


 切れ長の一重まぶたの奥に、熱と冷たさが同居する黒い瞳があり、それがわたしを捉えた。
 彼女はわたしの顔を見るなり、口の端を歪めて下品な笑顔を作った。
 そしてその直後、少年の与えた刺激にぴくん、と反応すると、少女はわたしの視線から離れ、自分だけの感覚の世界に戻っていった。


 「あっ・・・見てるわ・・・ほんまに・・・見られてるわ・・・んっ」


 少女が夢見心地で呟く。


 「な、見とるやろ?見とるやろ?」少年の声はさらに上ずっている。
 「・・・見てる・・・めっちゃ・・・バリ凝視してる・・・」
 「でも・・・おっちゃん・・・怒らへんかな・・・」
 「・・・なんでえな・・・んんっ・・・なんもうちら、迷惑かけてへんがな・・・・あんっ」少女の膝が跳ねる  「・・・シュンちゃん、背中に当たってる・・・・すごい固くなってへん?」


 少女が肩越しに少年の顔を見ながら、右手を・・・後ろに回した。


 「おっ」今度は少年の肩が跳ねる。

 「すっごい・・・カッチンカッチンやで・・・・」
 「・・・おい、ちょっと・・・あかんてミキちゃん・・・あかんって・・・そんな、チャック開けたら・・・おっさん見てるがな」
 「見させときーや・・・・わああ・・・え・・・なんかもう・・・濡れてるやん・・・・」
 「そ、そんなん・・・お前こそ・・・・もうパンツべっちょべちょやぞ」
 「・・・・・そ、そこ、そこあかん・・・・あっ・・・んっ・・・ああ・・・おっさん、まだ見てるわ・・・・」

 確かに見ていた。
 見やいでか。

 「・・・あかん、あかん・・・そんな、そんなんしたら・・・出てまうって・・・・」少年はかなり、切羽詰っていた。
 「・・・・ほら、ほら・・・もう、ぴくんぴくんしてる・・・人に見られてると・・・コーフンするやろ
 「・・・おまえ、ほんまにエッチやな・・・・いつからそんなに、エッチになったんや・・・・」
 「シュンちゃんやん・・・エッチにしたんは・・・・あ、そこ、そこ、そこ、もっと・・・」



 少女の腰が、上下に、前後に、左右に揺れている。

 わたしはもう、半身を彼らのほうに向けて、その一挙一動を見守ってきた。



 「・・・・見てる・・・・めっちゃ見てる・・・・おっさん、超コーフンしてる・・・」少女がうわごとのように呟く。
 「おまえも・・・見られてたら・・・もっと興奮するんやろ・・・ほら・・・なんか、いつもより・・・・」
 「・・・あかん、そんな、そんなとこあかんって・・・・あ、でも、なんか・・・なんかいつもより・・・」


 いまや少女は少年の膝の上で背を弓なりに逸らし、胸を突き出していた。
 カーディガンの奥でその乳房をこねまわす少年の手の動きが、はっきりと見て取れる。




 と、いうところで電車がやってきた。
 信じられない速度で、あっという間に、40分が過ぎていたのだ。



 『ファック!!』



 わたしは心の中で毒づくと、大いに後ろ髪を引かれながら、電車に乗り込んだ。


 ホームを出て行く電車の窓からも、ちらりと少年と少女の姿を確認する。
 
 少年と少女は、『猿の毛づくろい』の姿勢のままで・・・車内のわたしを見送ってくれた。
 一瞬、大きく開いた少女のスカートの中が見えた。

 ブルーのコットンのパンツの中に、しっかりと少年の手が納まっていた。


 電車が駅を離れてからしばらくして・・・わたしはガラガラに空いた車内でマヌケのように突っ立っていることに気づいた。
 適当な席を見つけて、腰を下ろす。
 窓から見ると、駅はもうずっと遠くて、小さくなっていた。
 



 深くため息をつく。



 次の駅で、女子高生が一人乗ってきて、わたしの正面に座った。
 さっきホームにいた少女と、同じ制服を着ている。
 マッシュルームのようないまどきではない髪形をした、大人しそうな少女だった。
 


 「誰かさんと誰かさんがむ~ぎば~たけ~・・・


 わたしは、わざと、少女に聞こえるように低い声で歌った。


 「クチュクチュクチュクチュし~てい~る、い~じゃな~いか~・・・


 少女は明らかに怯えていた。
 そしてちらりと、恐る恐る、わたしを見ると・・・あわてて視線を逸らせた。


 「ぼ~くに~はかんけ~いな~いけ~れど~・・・


 少女が立ちがり、隣の車両に移っていく。
 その小さな尻が揺れながら去っていくのを見送りながら、わたしは歌の最後の小節を同じ調子で歌った。


 「・・・い~つかはだ~れかさんとむ~ぎば~たけ~・・・


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

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