SOD CAFE
“LOVE”や“FREEDOM”で世界は変わらないので、SOD CAFEへ(嘲)
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 「あなたみたいな被疑者ははじめてです」その女刑事が言った。「一体、いきなり電車の中で女子高生の口に指を突っ込んで何が楽しいんですか?」


 まだ30前、というところだろうか。
 ダークグレーのスーツに白いブラウス、髪は後ろでひっつめにしている。
 ダサい身なりだ。
 基本的にファッションには関心がないのだろう。
 

 少し神経質そうだが、とても整った、かしこそうな顔をしている。
 眉が印象的で、きりっとした意志的な彼女の性格を表している。


 しかし残念なことだ。
 見かけほど彼女は知性にも感受性にも優れているわけではないらしい。

 
 わたしはカツ丼を食べ終えるまで返事をしなかった。
 別に黙秘権を行使してるわけじゃない。
 こいつにはわたしを裁く権利はないな、と改めて悟ったまでの話だ。


 「あの、聞いてます?」刑事はさらに続けた。「何すましてるんですか?……いい年して、いったい何考えてるんですか?……被害者の女の子、かわいそうに泣いてましたよ。よっぽど気持ち悪かったんでしょうね。わたしがあの子だったら、あなた、窓から放り出してるとこですよ。一体全体、どういうふうに生きてきたら、そんなに気持ち悪くなれるんですか?……ねえ、聞いてんだよって
 「……タバコ」
 「は?」
 「……タバコ……一本いただけますか」
 「いい度胸じゃねえか!

 女刑事が立ち上がってスチール机に蹴りを入れた。

 細くきれいな脚だったが、その蹴りは重かった。
 彼女ならわたしを一瞬でぶちのめし、窓から放り出すのはわけないだろうな、と思った。
 ブリキの灰皿が天板から床に転がり落ちて、派手な音を立てた。
 
 どうってことはなかった。
 オマワリなんか、この程度の連中だ。
 この女刑事さんも、しょせんは単なるオマワリでしかないらしい。


 「……刑事さん、聞きたかったんじゃなかったんですか?……わたしがなぜ、あの女子高生の口の中に指を突っ込んだのかを?」わたしは咳払いし、刑事を見上げた。「わたしの説明を聞けば、刑事さんもよく理解できるし、調書も作成しやすいんじゃないですかねえ?」
 「『なぜ』って、変態が何考えてようが、知ったこっちゃねーっての!」
 「……わからないだろうなあ……女性には
 「は?」女刑事の顔が、かっと赤くなる。「いま、なんつった?お前?
 「しょせんは女性ですからね。男性の気持ちなんか、結局わからないだろう、つったんですよ」
 「………この野郎……」


 怒ってる怒ってる。
 こう言えば怒ると思ったよ。
 今、女刑事さんは冷静さを取り戻そうと必死のようだった。
 その様子を見ていると……なぜか軽く勃起してきた。


 女刑事はしばらく、じりじりしながら、わたしが座る席の周りをうろうろと歩き回った。
 なかなか自分を取り戻せないのだろう。
 わたしは、彼女が落ち着きを取り戻すのを辛抱強く待った。
 
 20分も経ったろうか……ついに彼女は根負けした様子で、大きくため息を吐くと、椅子に座りなおした。

 「……わかりました。じゃ、聞かせてもらいましょう。あなたが……その女子高生の口に指を突っ込んだ理由って何?わかるように説明してちょうだいよ」少し口の端をゆがめて、挑戦的に、底意地悪そうに笑う。「……できるの?ちゃんと、まともな人間にも理解できるように説明できるわけ?」


 タバコが差し出された。
 わたしはそれを一本受け取り、女刑事が差し出してくれたライターで火をつけ、深々と煙を吸い込んだ。
 床に落ちていた灰皿は、女刑事の手によってまた机の上に戻された。


 「まず、わたしが10代だった頃の話をしましょう……わたしにはじめて彼女ができたのは、高校一年生の頃……そう、16歳の頃でした。あれから20年かあ……時の流れは早いものですね……なんですか?……わたしにそんな頃があったなんて、信じられませんか?……刑事さんにもあったでしょう?……16歳のころが?……時々、思い出してなんとなーく空しい気分になることはないですか?……あの頃は良かったなあ……とか、あの頃に比べて、今の自分はなんて穢れてしまったんだ……とか思ったりしてね」
 「……いや、穢れてるのはあなただけだから」
 「刑事さん、その頃は恋愛をしたりしましたか?」
 「あなたには関係ありません」女刑事はぴしゃりと言った。
 「……今、つきあってる男性はいたりしますか?……あ、ひよっとすると処女だったりして」

 
 女刑事は無言で机の脚を蹴った。
 机の上で灰皿が駒のように回る。
 まあいい……わたしは話を続けた。


 「まあいいです。とにかくわたしは16歳の頃、はじめて恋をしました。ええ、クラスメイトの中津川さん……いやあ、いい娘だったなあ……肩までの長い髪がとてもきれいでね……頭のいい、とても素直な子でした……怒ると、すぐ顔に出ちゃうとこなんか、とっても可愛かったなあ……あ、そういえば、怒ったときの顔がちょっと刑事さんに似てたかもですね」
 「いいから。続けて」
 「……まあ当時は子どもでしたし、当時の子どもは今の子どもとは違いますからね……わたしたちも、ほんとうに清い交際を続けていたもんですよ……ええ、日曜日ごとに公園でデートしたり、自転車二人乗りしたり、動物園に行ったりね……まったく、あの頃はよかった。何もかもが、キラキラと輝いて見えたもんです。
 「……手をつないだのも、付き合い出して2ヶ月経ってからのことです……はじめて中津川さんの手を握ったときの感覚は、今でもはっきり覚えています……ちょうど今くらいの、暑さも少し和らいできた季節の、学校の帰り途のことでした。
 とても柔らかい……ちょっと湿った手でしたね。無論、わたしの手の平は緊張でもっと汗ばんでいて、不快だったでしょうけど……」


 そういいながら、わたしはじっと自分の手を見た。
 ちらりと女刑事を見上げる。
 その表情は、まるでゴキブリでも見るような不快感を露にしている。


 「……ええ、本当に清い交際でした……結局、二人はセックスはおろか、結局キスすらできませんでした……もちろんわたしも当時16歳。頭の中はいやらしい妄想で一杯でしたよ。
 毎晩のように、夏服のブラウスの下にある、中津川さんのほっそりとした伸びやかな躰を思い描いては、オナニーに耽ったものです……あのかしこくて爽やかな中津川さんに、様々な姿態を取らせては……恥ずかしい下着を着せては……あるいは全裸にひんむいては……妄想の中で彼女の体をまさぐり、捏ね、揉みしだき、思うがままに弄んだものです……」
 ………いいから続けて。ってか、手短かにしてくださいね。余計なことはいいから」
 
 女刑事は苛立ちを隠さなかった。

 「……でもね、その当時のわたしはまだ、女性の躰というものに触れたことがなかったんです。
 ……唯一の例外、中津川さんの手のひらを除いてはね。
 だから……妄想するときは、彼女の手のひらの感触を思い出し、それをできるだけイマジネーションで拡大して、そこから彼女の細い肩や……少し長めだった胴の細い腰や……小ぶりな乳房や……スカートから覗く、すらりとした健康的な太腿や……少年のように固そうなお尻や……まあ、あとは絵として思い浮かべる手立てもなかった、彼女の太腿の奥にある……新鮮で、濡れそぼり、小さく恥ずかしそうに身をすくめている……その女の部分の感触を……演繹的に想像していくしかなかったのです。
 ……妄想の中のすべての感触の原型は……彼女の手のひらの感触でした。
 少し湿った、少し冷たい、柔らかい手のひらだったのです」
 「……はあ」


 女刑事の不快感が、どんどん増していくのを全身で感じ、わたしの気分も高まってきた。


 「……でも当時のわたしはほんとうに純粋でした……妄想の中とはいえ、そんなふうに彼女のことを好き勝手に弄んだあとは……そりゃあもう、毎度のように痺れるような射精感を味わったもんですが……その後には決まって泥のような後悔と懺悔の気持ちに打ちひしがれるのです。
 ……目の前のティッシュの中に吐き出された、自らの精液が濃厚であればあるほど……その透明度が低く、その色づきが白よりもむしろクリーム色に近ければ近いほど……その質感が、粘液というよりはほとんど水銀に近いような状態であればあるほど……
 わたしは激しい罪悪感に我が身を焦がしたものです……ティッシュの中の精液の濃さが、わたしの罪深さの証でした」

 「そのへん、もういいから」女刑事が、先を促した。

 「……失礼しました……中津川さんを思い描いてオナニーに耽った翌日などは、彼女の目もまともに見れないくらいに、当時のわたしは善良で性的なことに関しては奥手だったのです。
 中津川さんのほうも、同じであるように思えました……彼女は性的な興味とは……これはあくまで当時の16歳のわたしから見た印象でしかありませんが……まったく無縁であるようにさえ思えました。それほど、彼女の印象は清清しく、透きとおった、侵しがたいものでした。
 ……まあ当時、童貞で、家族には女兄弟がいなかったわたしには、少なくともそのように信じられたのです……今となってみれば……彼女だって、わたしと同じだったはずです。……そうでしょう?刑事さん?……刑事さんだって、それくらいの年ごろには……セックスに対する憧れでいっぱいだったでしょう?……片時もセックスに関する考えが、頭を離れなかったでしょう……?……そうじゃないですか?
 ……16歳のときを思い出してください……それくらいの年齢の子どもたちにとって、セックスというのは最大関心事項であるはずです。男も女も関係ありません……刑事さんだって、それくらいの年齢には好きな男子の一人や二人、いたでしょう?……夜、ベッドの中で眠りにつく前に……その男の子たちと、淫らなことをする妄想にふけり、パジャマのズボンの中に手を突っ込んでいたでしょう……?………ねえ、どうですか、刑事さん……ひょっとして、今もそうですか?


 女刑事が、また机の脚を蹴った。
 今度はまた、灰皿が床に転げ落ち、わたしがそれまでに出した灰が床に飛び散る。
 わたしは灰皿を、自分で拾った。
 指の間に挟まったタバコはもう、半分以上が燃え尽きている。


 「……まあいいでしょう。当時のわたしには、そんなことは思いも寄りませんでした……中津川さんに対して、そんなふうな妄想を抱いているのは、わたしの方だけで……彼女のほうはわたしのイノセントな思いを信じきっている……そんなふうに思えたものです……わたしは何か、彼女を騙しているような……彼女を裏切っているような……そんな思いを拭えませんでした……あの日……夏休み最後の日曜日に……遊園地でふたり、観覧車に乗るまでは」
 「……はあ……やっと話が核心に近づいてきましたね……」


 女刑事が、またため息をつく。
 わたしは短くなったタバコを、控えめに吸い込んだ。
 パチパチと、葉がはぜる音がした。


 「観覧車が一番高い位置に近づく少し前……西日の差し込むゴンドラの中で……中津川さんが不意に口を効いたのです。
 
 『あたしと……キスとかしたくないの?』
 『え?』わたしは、わが耳を疑いました。
 『……つきあってけっこう経つけど、あたしにキスしたいとか思わないの?』……彼女は妙に落ち着いた声で続けました……『……キスだけじゃなくて、おっぱいに触りたいとか……服を脱がせたいとか……あそこを触りたいとか……そんなこと、したくないの?
 『そ、そんな……』あまりに突然で、わたしは返答に困りました『で、でも……き、君がいいなら……』
 
 そのときに、中津川さんが見せた寂しそうな笑顔は、いまでもたまに夢に見ることがあります。

 『……もうだめ。あたしのほうから言うまで待たせたから、あんたの負け』そして、また窓の外に視線を移すと……呟くように言いました『わたしたち、別れましょう』 
 『…………』

 まったく……なんとあの頃のわたしは、幼く、愚かだったのでしょうか……まあ若いころのことを思い出して、悔やんでも悔やみきれないことや、顔から火が出るほど恥ずかしいことのひとつやふたつ……誰にだってあるものでしょう?……ええ、今から思えば……あの瞬間にわたしの人生は変わったのです。
 女性が自らの思いを口にするまで、待たせてはいけないんだ。
 それが彼女がわたしに教えてくれた、人生の教訓でした」

 「ちょっと待ってよ」女刑事が口を挟んだ。「だからって……電車の中で見ず知らずの女子高生の口の中に指を突っ込んだって………ええ?それで世間様が納得するって……マジで考えてるの?」

 さんざん気を持たせてこれかよ、という調子で、女刑事は失望と怒りをむき出しにしていた。
 これだから素人は困る。

 「……刑事さん、話は最後まで聞いてください。わたしの話の核心はここからです。
 ……観覧車のゴンドラはゆっくりと下降をはじめました……中津川さんの口から告げられた突然の別離に……わたしは完全に混乱し、言葉を失っていました……。
 
 彼女のその時の心境をほんとうに理解できたのは、それからずっと大人になってからのことです。……当時のわたしには、何がどう悪かったのか、一体何が彼女にこんなふうな別れを決断させたのか……まったく理解できませんでした。ただただ、混乱する一方でね……その直後の中津川さんの行動は、さらにわたしを混乱させました。
 
 『手、かしてよ』中津川さんが不意に言いました『ねえ、早く』
 
 わたしは意味もわからず、自分の右手を彼女に差し出しました。彼女は……あの湿った、冷たい手でわたしの手をそっと包み込むと……自分の顔に引き寄せ、目を閉じて……わたしの人差し指を、口に含んだのです

 「え?」女刑事が、ぽかんと口を開ける。

 「あっ、と思ったときには、もう彼女の舌は淫らに動き始めていました。彼女のちいさな、熱い舌先が、わたしの人差し指の爪の甘皮のあたりをまさぐったとき……わたしの躰は、ぴょん、と座席から跳ね上がるくらいの生まれてはじめての戦慄におそわれました……。

 ええ、毎夜重ねていた空しい自分への慰めから得られる快感など、あの中津川さんのいたずらな舌が奏でた愛撫に比べれば……蚊のひと刺しのようなものです……そのとき、手も洗っていなかったですし……わたしの汚い指が、彼女の穢れのない口内の粘膜を犯しているかと思うと……昨日も、彼女の淫らな姿態を想像しながらその人差し指で、自分の躰の一番きたない部分である陰茎の先、尿道口のあたりをまさぐったことを思うと……その罪悪感が、背徳的な快感となって静電気のようにわたしの全身を駆け巡りました。
 
 全身の感覚が、中津川さんが舌でからかう指先に集中したようでした。

 彼女にしてみても……そんな経験はこれまでになかったはずです。これは、青春の思い出を清らかなものにしておきたい穢れた大人としての今のわたしの願望ではなく、事実だと思います。

 経験がないからこそ、彼女の舌先の動きは、かくも淫らだったのです。

 恐らく彼女は、当時のわたしと同じように……はちきれんばかりの性への憧れと妄想の中で喘ぎ、慰めても慰めてもあふれ出る欲求のはけ口を、どこかに求めていたのでしょう。
 いたずらで、きまぐれで、ひたむきで、かつ創意工夫に富んだ彼女のその舌使いに、すべてが表れていました………。

 ゴンドラが地上に戻るまであと少しでした……わたしは、夢中になって彼女の右手を取り……その人差し指を口に含むと……彼女の気持ちに応えるように、舌を使い始めたのです……」

 「……それから?」女刑事が聞いた。のない彼女の声を聞くのは、これがはじめてだった。「それから、どうなったの?」
 「何も」わたしは答えた。「ゴンドラを降りて、遊園地を出て、二人で電車に乗って……それぞれ、お互いの家に帰りました。それっきりです。卒業までに学校では顔を合わせましたが……それ以来、一度も口を効いたことはありません」
 「…………はあ」

 女刑事は、何か居心地が悪そうに椅子の上でもぞもぞと動いた。

 「それからですね。わたしが女性の口に……興味を持ち始めたのは。あれから何人もの女とセックスしました。中にはひどい女もいたし、いい女もいました。中津川さんに似たおもかげを持つ女もいましたし、まったく正反対の印象の女もいました。……でも……セックスするときわたしは……いつも女の口に指をこじ入れて、女がわたしの指にどんなふうに舌を絡めてくるかを試すのです
 ……それでセックスの価値を計るようになりました……いろんな女がいましたよ……ちゅぷちゅぷと、くちびるでわたしの指の側面を扱く女。指の根本までくわえ込んで、全体に舌を絡めてくる女……そして……中津川さんみたいに……指先だけを、戸惑いながら……やさしく、いたずらに、くすぐってくる女………」

 女刑事の顔に、また険が戻ってきた。

 「……そのうちに、わたしはセックスそのものを、必要としなくなりました。要は、女の口の中に、指さえ入れられればいい。どうせ入れるなら……見知らぬ女子高生のほうがいい……中津川さんのおもかげを、少しでも味わえるのだったら」

 不意にわたしは、人差し指を女刑事に突き出した。

 「……刑事さんのその怒った顔が、中津川さんにほんとうによく似ています」そして、声のトーンを下げて言った「どうです……刑事さんも……味わってみませんか?わたしの指


 女刑事はにっこり笑うと、まるで宣誓するように、右の手のひらを自分の肩の前で翳した。
 そしてそのまま、勢いよく手のひらを前方に突き出した。
 突き出した先には、わたしの人差し指があった。




 折れなかったが、わたしの人差し指は3倍に腫れあがった。
 弁護士にどうしたのか、と聞かれるだろうが、『不注意でつき指した』と答えるつもりだ。



 それがわたしの矜持である。


【完】 
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テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

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