“たばたせんせい”はわたしの髪を自分の指で梳かすように撫でながら、恐る恐る、という感じで唇を重ねてきました。
彼女も当時はお若かったことですし、短大を出てすぐ保育士として保育園に就職されるようなお方です。
さぞ真面目なお嬢さんだったのでしょう。
ですのでその時点の“たばたせんせい”にそれほど男性経験があったとは思えません。
まあこれは今の時点のわたしが抱く勝手な想像ですが、彼女はあの時点で処女だったのではないでしょうか。
と、いいますかキスもはじめてだったのではないでしょうか。
「……んん……」
“たばたせんせい”が鼻息交じりの声とともにわたしの唇に唇をくっつけています。
わたしは唇を奪われながらも、目を開けて彼女の顏をじっと見ていました。
“たばたせんせい”はしっかりと目を閉じ、眉間に皴を寄せながら、わたしの唇を唇でぐいぐい、と押してきます。
妙な気分でした。
はっきり申し上げまして、わたしが女性からキスをされたのはこれが初めてではありません。
と、いいますのも、物心ついてからこっち、わたしは母から、祖母から、姉から、親戚のおばさんやお姉さんから、近所のおねえさんやおばさんから、機会さえあればちチュッチュとキスをされるのが常でした。
ほっぺたやおでこだけではありません。
みなさん、平気でわたしの唇に吸い付いてくるのです。
多分、わたしが余りにも可愛らしかったからだと思います。
皆さん、とくに女性の方々は可愛らしいわたしにキスをせずにおれなかったのでしょう。
ですので当時のわたしは、そういう行為は世の女性にとって、ほんの挨拶程度のものに過ぎないのだ、という日本人離れした感覚を自然と身に付けていました。
「……んん……」“たばたせんせい”がわたしから唇を話します。
「………」わたしは何も言いませんでした。
その時の“たばたせんせい”の目つきの、なんと熱っぽかったこと。
今思い出しても、思わず官能のほむらを腰に灯さずにおれません。
半眼で、少し売るんだ目。上気した頬。
まったく園児にあんな悪戯をしておいて、あんな目で見るなんて本当にけしからん娘さんです。
「……誰にも言っちゃだめだよ……」“たばたせんせい”が熱っぽい調子で続けます。「……気持ち良かった?」
「………うん」わたしはこくん、と頷きました。
いえ別に、気持ち良くともなんともなかったわけはありますが、わたしは当時から、女性と調子を併せるのがたいへん上手かったのです。
「もっとしてもいい?……」と“たばたせんせい”「……もっとしても、イヤじゃない?」
「………うん」またわたしは、こくん、と頷きました。
母が迎えに来るまでまだ時間が掛かりそうだったし、まあ退屈しのぎにはいいかな、というくらいの、軽い気持ちでした。
と、今度はさきほどのキスとは少し違っていました。
“たばたせんせい”は先程と同じようにわたしの唇にそっと自分の唇を合わせると、そこから分け入るようにして、舌を進入させてきました。
「??」わたしは大変驚きました。
キスをされたのは初めてではありませんが、舌を入れられたのはこれが初めてです。
少なくとも他人には(姉からは何回か、そのような悪戯をされたことがありました)。
「んん………」“たばたせんせい”はうっとりとした表情で、わたしの口内を舌先で愛撫します。
わたしは大変くすぐったいような、こそばゆいような、もどかしいような奇妙な感覚を覚えました。
これは、“挨拶程度のもの”とは違うな、というのが実感でした。
先生が、本気であることはわかりました。
わたしは目をしっかり開けて、先生の恍惚とした表情を眺めました。
美しい造りの顏に痴呆のような恍惚を浮かべて、目を閉じ、眉間に皴を寄せて、わたしの唇を貪る“たばたせんせい”。
ああ、これが女なんだなあ、とわたしが感じた瞬間でした。
なるほど、せんせいとか、大人とか言っても、結局はこの程度なんだな、と。
バッカじゃねえの?とわたしは思いました。
何アホみたいに亢奮して子供の口の中に舌入れてんの?
鼻息フーフー言わせちゃって。
まったくといっていいほど、恐怖は感じませんでした。
ただ、5歳だったわたしの中の“たばたせんせい”の価値が、アリンコのように軽くなったことは事実です。
じゃあ、こういうのはどうよ?
わたしは口の中で好き勝手に暴れ回っていた“たばたせんせい”の舌に、自分の舌を絡めてみました。
「んっ……」びくっ、と“たばたせんせい”の肩が震えました。
面白い。
わたしはそんな“たばたせんせい”の反応が面白くて、口の中から慌てて出ていこうとする彼女の舌を追っかけるように舌をどんどん絡めていきました。
「んんんんっ………!」
明らかに“たばたせんせい”は狼狽しています。
口の先をすぼめて、舌の先を吸い込むようにしました。
舌の先を前歯で、あまく噛みました。
驚いた“たばたせんせい”が、目を見開き……わたしを突き飛ばすようにして体を離しました。
はあ、はあ、と荒い息をしながら……まるで化け物でも見るような脅えた目で、彼女がわたしを見ています。
「……わ、わ、わ…………わるい子………」“たばたせんせい”が震えながらいいました。
「また、しようね」わたしは笑いながら言いました「また、したいでしょ」
……それから……わたしは保育園で“たばたせんせい”と二人っきりになれそうな時間を見つけると、
「ねえ?せんせい?…………チューしようよ?………」
と甘えながら彼女のスカートを引っ張り、彼女を困らせるのでした。
その度にわたしに応えて、人気のないところにわたしと二人でしけこむ“たばたせんせい”も大概でしたが。
その度に、一回ごとに……わたしは“たばたせんせい”を舌でめろめろにするための技巧を磨いていきました。
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