「あう……ん………んぐ………」
秋子の前歯の隙間を割って割り込ませた舌で、秋子の舌を絡めとり、しばらく口のなかで転がしました。
するとどうでしょう。
「ん………ふ………ふんっ………うっ」
秋子が鼻にかかった声を、おずおずと出し始めます。
ここがポイントであります。
つまりこれは、秋子が唇を離そうとする努力を諦め、鼻で呼吸することで、わたしに口の中を舐り回されているという状態に適応しようとしているということ。
この瞬間もまた、すけこましの醍醐味であります。
はてさて、いやらしいシーンがはじまりそうなところではございますが、ここでまた少しわき道に逸れようかと思います。
ええ、なかなかいやらしいシーンのテンションが上がりませんね。
まあ、いきなりここから秋子の服を、引きちぎるようにひん剥いて愛撫もそこそこに挿入、すると女は狂ったように悶え狂う、ってなありきたりなエロをお求めの方は、よそにたくさんその手のエロ小説があるのでそちらへどうぞ。
と、いいますのも、わたしは常々思っているのですが、どうも日本男児というものは口による口に対する愛撫に関して、ものすごくおざなりであるように思うのですね。
キスなんざ後からいくらでも出来らあ、ってな感じでとにかく先を急ぐ。
とにかく、ひんむいておっぱいを曝け出させては、いきなり乳首へ吸い付く。
かろうじて唇を攻撃するとあっても、舌でべろべろと舐め回すばかり。
それが日本男児の、はなはだ幼児性あふれる前戯のあり方であります。
いやもう、嘆かわしい限り。
なんでも規範を西洋に求めるのは考え物ですが、日本人男性と比較して、西欧の男性はセックスの前のキスにかなり重点を置いていると聞きます。
フェミニストの先生方などにそのへんを語らせると、いろいろと興味深い話が聞けそうなところではございますが、これは本当です。
知り合いの、カナダ人すけこましが言ってましたからね。
なんでも西欧社会では、レイプ犯すら被害女性にキスを求めるとか。
進んでいます。
それに引き換え、日本人男性はどうでしょう?
いつまでもお母ちゃんのおっぱいを吸う快楽から逃れられない。
心が自立していない証です。
ですから、これをお読みの女性読者のみなさん。
あなたの彼氏が、セックス時にキスもそこそこに、いきなりあなたのブラジャーをはがして乳首に吸い付いてくるようなタイプでしたら、その男はあなたの乳首を吸いながら、頭の片隅では自分のお母ちゃんのことを思っているのです。
まあ、そういう男は総じてセックスが下手です。
それは、お読みの女性読者の皆さんが一番わかってらっしゃると思いますが。
将来、安定した、うわべは幸せな家庭を築き上げたい、とあなたが考えておられるなら、その手の男と結婚するのがよろしいでしょう。
なにせ、セックス中も頭の隅にお母ちゃんのことを思い浮かべるような男です。
悪党であるはずがありません。
まあ、嫁姑のことで揉める可能性は高いですがね。
さて、ようやく話をもとにもどしましょうか。
わたしは、秋子の舌を弄び、互いの唾液を共有し、全ての歯垢を舐め取るかのように歯の表面を舌でなぞり、ときに上唇と下唇の甘噛みをし……ということを、インプロビゼイションにまかせて繰り返しました。
その間、秋子の体を抱きしめてはおりましたが、あえて手を動かしたり、どこぞを触ったりくすぐったりはしません。
それは後です。一度に二つのことをしない。
慌てるこ●きは貰いが少ない。まさしく真理です。
「ん………んふっ……………んっ………………ふ、ふう………」
その時点で秋子は、うっとりと目を閉じ、少女のように頬を紅潮させ、鼻で吐息をつき、わたしが意地悪に唇を離そうとすると、それを自らの舌と唇で追っかけようとする始末です。
その、ほどよく肉付きのよい身体をわたしの腕の中で、はでにくねらせながら。
まったく女とは哀れなもんですな。
秋子の興奮がかくも煽り立てられたのは、わたくしの粘っこい口での愛撫によって、秋子が3年前のわたしの愛撫をまざまざと思い出したからでありましょう。
彼女が、口の中のどの部分を舌でくすぐれば気持ちいいか、どのような舌の動かし方に弱いか。それを知り尽くしたかのような、わたしの舌の動きに起因する、
“ああ、やっぱりこのヒトはあたしのことを良くわかってるんだ”
という安心感が、ますます女の官能のほのおを強火にするのでしょう。
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