SOD CAFE
“LOVE”や“FREEDOM”で世界は変わらないので、SOD CAFEへ(嘲)
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 世間一般では、このような状態のことを“初恋”と呼ぶのでしょう。
 口にするだけでわたし自身の全身にジンマシンがでそうですが、これをお読みの皆様も、わたしのような人間から、そのような思い出話を聞かされるのはたいそう不快なことでしょう。

 なんだか、皆さん方がそれぞれ胸に秘めておられる、「初恋」の思い出が汚されるようで。
 
 まあそのへんは犬に噛まれたとでも思って諦めてください。
 こんな男の思い出話につきあったのが運の尽きです。
 
 はてさて水井さんに対してわたしが抱いたのは、
 “この子はほかの女子とは全く違う”という、いわば直感のようなものでした。
 
 彼女のひときわ貧乏くさい身なり、ややもすれば早くも少々所帯染みた感がある表情の憂い、無口だけどもときおり出る言葉の中に見られる、一種の「つかれ」……
 
 つまり、彼女には『中身』があったのです。
 
 ほかの女子児童たちは、男子児童たちと同じく、中身がカラッポです。
 人間の体はなしているけれど、人間ではない。
 
 思えばこの頃からわたしは、自分でも知らぬうちにこの「すけこまし」という陽の当たらない道を歩むための素地を育んでいたのでしょう。
 つまり、しゃぶりつくものが無いものには、惹かれない。
 中身の詰まっていないカニを見分ける魚屋さんや、果肉がスカスカの西瓜を見定める八百屋さんが持つような、独特の感性が、わたしの中にはすでに芽吹いていたのです。
 
 わたしは次第に彼女に惹かれていきました。
 それを初恋と呼んでいいものなのか、世間がどのように捉えるのかはわたしにはわかりません。
 
 しかし、これがわたしが生まれて初めて……他者に……それがつまり、骨までしゃぶりつくす対象としてとはいえ……興味を惹かれたはじめての季節なのです。
 
 笑いたければ笑ってください。
 多かれ少なかれ、皆様が体験した「初恋」も、わたしのこの体験とさして違いがないものだったことでしょう。
 わたしはただ、正直に語っているだけです。
 
 とにかくわたしは、その少女、水井さんと仲良くなろうとしました。
 これまでとは人が変わったように能弁になり、彼女のご機嫌をとり、歯の浮くようなお世辞を並べ立て、なんとか彼女の関心を買おうと必死になりました。
 
 恐らくそれまで、彼女には他人からあからさまに関心を持たれるような経験は無かったのでしょう。
 彼女は戸惑っているようでした。
 何か、わたしを恐れているようでした。
 
 「その服、かわええね」とか
 「その筆箱、どこで買うたん?」とか
 「兄弟は何人おるん?」とか
 「カレーうどんとカレー丼、どっちが好き?」とか。
 
 いろんな事を陽気ぶって聞いては、彼女の気を惹こうとしたものです。
 確かに少し、気持ちの悪い同級生です。
 
 しかし、当時のわたしは諦めませんでした。
 はっきり申し上げて、すけこましの基本は粘り強さです。
 まさに粘着質こそがすけこましの真骨頂。

 ルックスには相当の自信を持っておりましたわたしでしたが、それだけで水井さんの気が引けると考えるほど、自惚れていたわけではありません。
 
 ここでわたくしの思い出話につきあっていただいている読者の皆様に、耳寄りな情報を。


 女性は決して、男性のルックスだけに惹かれて魅力を感じるのではありません。
 男は顔ではない、というのは不細工に生まれついた男の負け惜しみだと思って、鼻白んでしまっているあなた。それは間違いです。

 はっきり言って、顔がいい男は自惚れ屋が多い。
 当時10歳だったわたくしがそうであったように。

 たまたま男前に生まれついてしまった読者の皆さん、気をつけてください。
 自分の顔という天性の素材を過大評価し、それさえあれば女性のほうが向こうからやってくるという誤った考えからは、出来るだけ早い段階で卒業するべきです。

 わたしの場合は、その誤りを10歳の段階で正すことができました。
 すべてはこの少女、水井さんのおかげです。

 とにかく彼女は、他の女子児童たちと違って、わたしの美貌に一向に関心を示さなかった。むしろ……水井さんは、わたしのことをちやほやするような女子児童たちを、一段上の地点から、冷ややかに見下ろしていたようなところがある。
 
 つまり彼女が抱えている空虚に対して、わたしはあまりにも眩しすぎたのでしょう。

 美貌を有している人間は、その分、謙虚でなければなりません。
 うわべだけでも、やさしく、物分りよく、まめに、気さくに、接することが求められてきます。

 わたしは辛抱強く水井さんの心の警戒を解くための努力を惜しみませんでした。
 熱心に話しかけ、笑わせ、注意を惹き、自分の性格のよさを嫌味なく見せ付けながら……。

 やがて水井さんはわたしと口を効いてくれるようになり、休み時間などは教室で話し込むようにもなり、そして学校の帰り道を一緒に帰るようになりました。

 ある日の帰り道……わたしは通学路にある児童公園にある、人目につかないコンクリート製の滑り台の裏で……水井さんと二人きりになることに成功しました。

 10歳の、わたしの勝利です。


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