fc2ブログ
SOD CAFE
“LOVE”や“FREEDOM”で世界は変わらないので、SOD CAFEへ(嘲)
 “たばたせんせい”はわたしの髪を自分の指で梳かすように撫でながら、恐る恐る、という感じで唇を重ねてきました。

 彼女も当時はお若かったことですし、短大を出てすぐ保育士として保育園に就職されるようなお方です。
 さぞ真面目なお嬢さんだったのでしょう。
 
 ですのでその時点の“たばたせんせい”にそれほど男性経験があったとは思えません。
 まあこれは今の時点のわたしが抱く勝手な想像ですが、彼女はあの時点で処女だったのではないでしょうか。


 と、いいますかキスもはじめてだったのではないでしょうか。
 

 「……んん……」


 “たばたせんせい”が鼻息交じりの声とともにわたしの唇に唇をくっつけています。
 わたしは唇を奪われながらも、目を開けて彼女の顏をじっと見ていました。
 “たばたせんせい”はしっかりと目を閉じ、眉間に皴を寄せながら、わたしの唇を唇でぐいぐい、と押してきます。


 妙な気分でした。


 はっきり申し上げまして、わたしが女性からキスをされたのはこれが初めてではありません。
 と、いいますのも、物心ついてからこっち、わたしは母から、祖母から、姉から、親戚のおばさんやお姉さんから、近所のおねえさんやおばさんから、機会さえあればちチュッチュとキスをされるのが常でした。


 ほっぺたやおでこだけではありません。


 みなさん、平気でわたしの唇に吸い付いてくるのです。


 多分、わたしが余りにも可愛らしかったからだと思います。

 皆さん、とくに女性の方々は可愛らしいわたしにキスをせずにおれなかったのでしょう。
 ですので当時のわたしは、そういう行為は世の女性にとって、ほんの挨拶程度のものに過ぎないのだ、という日本人離れした感覚を自然と身に付けていました。


 
 「……んん……」“たばたせんせい”がわたしから唇を話します。
 「………」わたしは何も言いませんでした。

 
 その時の“たばたせんせい”の目つきの、なんと熱っぽかったこと。
 今思い出しても、思わず官能のほむらを腰に灯さずにおれません。

 半眼で、少し売るんだ目。上気した頬。

 まったく園児にあんな悪戯をしておいて、あんな目で見るなんて本当にけしからん娘さんです。
 

 「……誰にも言っちゃだめだよ……」“たばたせんせい”が熱っぽい調子で続けます。「……気持ち良かった?」
 「………うん」わたしはこくん、と頷きました。

 
 いえ別に、気持ち良くともなんともなかったわけはありますが、わたしは当時から、女性と調子を併せるのがたいへん上手かったのです。

 
 「もっとしてもいい?……」と“たばたせんせい”「……もっとしても、イヤじゃない?」
 「………うん」またわたしは、こくん、と頷きました。


 母が迎えに来るまでまだ時間が掛かりそうだったし、まあ退屈しのぎにはいいかな、というくらいの、軽い気持ちでした。
 

 と、今度はさきほどのキスとは少し違っていました。



 “たばたせんせい”は先程と同じようにわたしの唇にそっと自分の唇を合わせると、そこから分け入るようにして、舌を進入させてきました。
 

 「??」わたしは大変驚きました。
 
 キスをされたのは初めてではありませんが、舌を入れられたのはこれが初めてです。

 少なくとも他人には(姉からは何回か、そのような悪戯をされたことがありました)。

 
 「んん………」“たばたせんせい”はうっとりとした表情で、わたしの口内を舌先で愛撫します。
 

 わたしは大変くすぐったいような、こそばゆいような、もどかしいような奇妙な感覚を覚えました。
 これは、“挨拶程度のもの”とは違うな、というのが実感でした。

 先生が、本気であることはわかりました。

 わたしは目をしっかり開けて、先生の恍惚とした表情を眺めました。
 

 美しい造りの顏に痴呆のような恍惚を浮かべて、目を閉じ、眉間に皴を寄せて、わたしの唇を貪る“たばたせんせい”。


 ああ、これが女なんだなあ、とわたしが感じた瞬間でした。


 なるほど、せんせいとか、大人とか言っても、結局はこの程度なんだな、と。
 

 バッカじゃねえの?とわたしは思いました。


 何アホみたいに亢奮して子供の口の中に舌入れてんの?
 鼻息フーフー言わせちゃって。
 

 まったくといっていいほど、恐怖は感じませんでした。
 ただ、5歳だったわたしの中の“たばたせんせい”の価値が、アリンコのように軽くなったことは事実です。
 

 じゃあ、こういうのはどうよ?
 

 わたしは口の中で好き勝手に暴れ回っていた“たばたせんせい”の舌に、自分の舌を絡めてみました。

 
 「んっ……」びくっ、と“たばたせんせい”の肩が震えました。

 
 面白い。


 わたしはそんな“たばたせんせい”の反応が面白くて、口の中から慌てて出ていこうとする彼女の舌を追っかけるように舌をどんどん絡めていきました。


 「んんんんっ………!」
 明らかに“たばたせんせい”は狼狽しています。
 

 口の先をすぼめて、舌の先を吸い込むようにしました。
 舌の先を前歯で、あまく噛みました。
 

 驚いた“たばたせんせい”が、目を見開き……わたしを突き飛ばすようにして体を離しました。
 

 はあ、はあ、と荒い息をしながら……まるで化け物でも見るような脅えた目で、彼女がわたしを見ています。
 

 「……わ、わ、わ…………わるい子………」“たばたせんせい”が震えながらいいました。

 「また、しようね」わたしは笑いながら言いました「また、したいでしょ」
 


 ……それから……わたしは保育園で“たばたせんせい”と二人っきりになれそうな時間を見つけると、

 「ねえ?せんせい?…………チューしようよ?………」


 と甘えながら彼女のスカートを引っ張り、彼女を困らせるのでした。
 

 その度にわたしに応えて、人気のないところにわたしと二人でしけこむ“たばたせんせい”も大概でしたが。
 

 その度に、一回ごとに……わたしは“たばたせんせい”を舌でめろめろにするための技巧を磨いていきました。

<NEXT> <BACK>

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 みんな、先生のことをキモいというけれど、あたしもそうおもう。
 
 確かに先生は40も前にして独しんだし、太ってるし、肌はきたないし、すぐヒステリーをおこしてキレるし、かわいい子にはえこひいきして、男子にはやたらきびしいし、ほんとにすう年前、4年生の担任を受け持っていたとき、女子が体育の着がえをしていると、やたらと部屋の前をいみもなくうろうろしていた、みたいなうわさもある。

 
 たぶん、ただのうわさじゃなくて本当だと思う。
 クラスの女子はみんな、先生のことがとりはだが立つくらいキモいという。
 

 先生とキスするのと、校舎の裏でかってるウサギのうんこを100個食べるのとどっちがいいか、といわれると、みんなウサギのうんこを食べるほうがマシだ、という。
 

 先生にからだを触られると(じっさいに先生はよく意味もなく女子のからだにさわる)その部分からなんかかぶれてきそうで、みんなすぐにせっけんでよく洗う、と言っている。

 
 先生の息のにおいは、まるで社会見学で見に行ったゴミ処理場よりひどい、という子もいる。

 
 それどころか、先生に見られるとその部分がくさる、という子すらいる。
 

 みんながそう言うのもあたりまえだし、あたしも先生がそんな風に言われるのはとうぜんだと思うし、先生のことはじゅうぶんにキモいと思う。
 


 でも……あたしは今、しんけんになやんでいる
 あたしはちょっと、おかしいのかもしれない。
 

 
 たしかに先生とキスするのは、ウサギのうんこを100個食べるくらい気持ちのわるいことで、想像しただけで、胃のなかからすっぱい液がこみあげてくるけど……。
 

 どちらかをえらべ、と言われたら、あたしは先生とキスをするほうをえらぶかもしれない。
 というか、先生にキスされてるところを、想像してみると……なんだか、むずむずしてくる。
 

 どこが、というとはっきりとは言えないんだけど、お腹の下、ちょうどおへその下15センチななめ下の奥、おしっこが出るあたりとの中間くらい。

 
 とにかくからだの中の、奥の奥のほうが……なんかかゆいような、あついような、ちょっと変なかんじがする。
 

 キスとひとくちに言っても、くちびるとくちびるを合わせるだけではなく、じっさいには男の人が女の人の口の中に舌を入れて(あるいは、その逆もあるそうだ)お互いの舌をからめ合ったり、おたがいのよだれをすったり、飲んだりするらしい。
 お姉ちゃんがよんでいる雑誌にかいてあった。

 
 先生と、くちびるとくちびるを合わせるだけではなくて、先生のあの舌(正視できないくらい、気味のわるい色をしている)が、あたしの口の中に、まるでなめくじのように入ってくるところを想像すると……それでその舌が、あたしの舌を絡めとって、それを吸ったり吸われたりするところを想像すると……。
 

 ああ、またむずむずしてくる。


 先生のことが、実は好きなんだろうか、と考えてみたけど、どうもちがう。
 やっぱり先生はキモいし、キスするところを想像してみると、まず感じるのは、キモさだ。

 でも、その後に、むずむずがやってくる。


 この前、こんなことがあった。
 
 5時間めのじゅぎょう中に、先生がしゃべっているのを見ていると、なぜか先生の口から目がはなせなくなっていた。

 せんせいのくちびるは、白くかたまって、ひび割れていた。
 
 くちびるははれぼったくて、焼いたままほったらかしにしたタラコのようだった。
 しかも、そのタラコはくさっている。
 

 その感しょくを、想像した。
 指で、ふれてみるところを、想像した。
 
 あたしの想像の中で、その表面は、かわいてぱりぱりとしていた。
 でも押すと、ずぶっ、と指がはいってしまう。

 
 あわてて指をぬくけれども、くちびるの中には熱くてぬるぬる、ねばねばしたものがぎっちりと詰まっていて、それは糸を引いてあたしの指さきにからみつく。
 

 うっ、と、吐き気がこみあげてきた。
 想像のなかではなくて、ほんとうのじゅぎょう中に。

 
 あたしの指にからみついたそのねばねば、ぬるぬるした液は、ひどい臭いがする。
 でも、なぜだか想像のなかであたしは、その液のにおいをかいでみたくなってしょうがなくなる。
 

 おそるおそる、においをかいでみる。

 想像どおり、っていうか、想像のなかの想像どおり、それはひどいにおいだ。

 
 社会見学で言ったゴミ処理場なんか、ぜんぜん目じゃない。
 もっと生っぽくて、ところどころ、甘い感じがする。
 いきものだけが持っている、どくとくのなまなましいかおり。
 

 くさったリンゴと、くさった筋子をまぜて、くさった牛乳をかけ、それにゴミ処理場の臭いをうまくブレンドすると、こんな臭いになるのかもしれない。
 

 でもあたしは、その臭いをかいだことで、なにかさいみん術にかかったような感じになる。
 


 どうしても、それをなめてみたくなってしょうがなくなる。


 
 だめ、こんなのなめたら口の中がくさっちゃう。
 ってかあたし、死んじゃうかもしれない


 ……とかなんとか思いつつも、あたしはその気持ちのわるい液がついたゆび先を、じぶんの口に近づけてしまう。
 

 だめ、だめ、ほんとにもう、マジだめ

 
 と思いながらも、あたしの指がどんどん自分のくちびるに近づいてくる。

 
 こんどは、あたしの舌のほうがいうことをきかなくなって……なんとあたしの舌の先がかってに口の中から飛び出して、指のほうをむかえに行ってしまう。

 
 いや、こんなのなめたくない……死んじゃう。

 と思ってあたしの心はそれをきょひするが、なぜかからだが言うことをきかない。
 


 ついに、あたしの舌の先が、そのねばねば、ぬるぬるした液にまみれた指さきに触れる。
 
 
 『あっ………あ………………あ、あまい
 
 
 想像の中で、それはどことなく、甘い味がする。

 
 全身に、さぶいぼが立った。
 お腹の下、おしっこの出るあたりとの中間、身体のおくのむずむずが、たえられないくらいにひどくなった。
 
 え、なんでこんな。
 今、じゅぎょう中だし。
 

 あたしはおしっこに行きたくてしょうがなくなった。

 
 でも、こんな想像をしたあとで……
 手をあげて、『先生、トイレにいかせてください』なんて。
 

 はずかしくて、とても言えない。
 
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 無我夢中で晴美の服を剥いて、さあて一体どんな身体をしてやがるんだこの女はと、やや焦りながら身体を起こして眼鏡を掛けなおし、ベッドの上で仰向けに広がっている彼女の身体を見下ろした。
 

 「え、なに?……ちょっと……眼鏡まで掛けなおして、すけべ

 
 おれに見られていることで羞恥を掻き立てられたのか、まわりの景色に反射するほどに白くしなやかな肢体がシーツの上でくねった。

 思ったとおりの素晴らしい身体だった。

 胸は手のひらに収まるくらいで、あばらが少し浮いたすこし長い胴。くびれた腰にはすこし腰骨が浮いていて、太腿はまっすぐ。ああ、言い忘れたけど臍は縦型だった。
 
 しかし感動するかたわら、そこに現れたのは少々異様なものも含まれていた。
 

 左の乳房の下、臍の右ななめ上10センチのところ、あと、右の内腿のかなりきわどいあたりに……それぞれ黒い“▲”があるのだ。
 

 それらはすべて、黒で、一辺が二cmくらいの正三角形。
 痣か?……と思ったがあまりにもそれらは人工的に正確すぎる。
 

 「……これ、アレ?刺青とか、タトゥーとか、そういうやつか?」
 「え?……あ、これ?……うん、まあ、その……そうかな」
 

 晴美がもじもじと照れくさそうに裸身を(おれにとっては扇情的に)くねらせながら、おれとは視線を合わせずに呟く。
 はっきり言って……普段の晴美は刺青とかそのへんのアッパーなオブジェクトとは縁遠い、地味なイメージの女性である。
 今年で27か8のはずだから、まあ過去にはいろいろあったかも知れないが。


 「なんで……こんな……」
 「いいじゃん。こんなのが身体にある女、好きじゃない?」
 「いや、そのまあ……別に。個人の自由だし」
 「こんなのがあると……気になる?」
 「いや、別に……というかその、むしろ……」
 

 ますますおれは亢奮させられていた。
 イメージギャップというのは亢奮の重要なスパイスだ。
 良く言うだろう?
 清楚系の控えめな女性を脱がしてみれば、いきなり黒下着だったりガーターベルトだったりでそのギャップに亢奮した、とかしないの、とか。陳腐な例で申し訳ないが。
 

 「きゃっ、え、そんなに焦んないでったら………んんっ……」
 

 気が付けばおれは晴美に被いかぶさり、そのすこし厚めの唇に吸い付いていた。
 

 そして……たっぷりと長い時間を掛けて、晴美の身体をねぶりたおした
 

 そうなると気になるのが、身体のあちこちにある“▲”マークである。この状況では、誰もがそうなるだろうと思う。あんた、自分がおれの立場だったらどうなるか、想像してみてくれ。

 
 全身を点検するように丹念に晴美の肉体を舐めまくる。
 晴美の身体は釣り上げられた活きのいい魚のように、ぴちぴちと反応し、跳ね回った。
 よくよく舐めていくと、さらに右の膝の裏にもう一つ、左の足のくるぶしにもう一つ“▲”がみつかった。
 
 よもや、と思って晴美の身体を裏返してみる。
 

 ああ、やっぱり。
 くっきりと浮かび上がった右の鎖骨の下に、“▲”。
 その下、背中から腰のラインに続く右の脇腹にも“▲”。
 左の尻のちょうど中央部分にも“▲”。

 
 その数々の“▲”が、晴美の透きとおるような白い肌にくっきりとコントラストをつけて、浮き上がっているようにさえ見えた。

 
 気が付けばおれは、その合計6つの“▲”を、まるで親の仇みたいに集中的に攻め立てていた。

 
 「ああああっ………そこ………そこだめっ……い、いや、やっぱりそこ、もっと……」
 

 “▲”の部分を攻めると、晴美の反応はさらに数段階激しくなり、青白いほどだった肌にはどんどん朱がさし、ぬめりを帯びていく。
 

 単純に面白いので、おれは夢中になって“▲”を攻めまくった。
 

 「あああ、もうだめ……許して……そこばっかり……おかしくなっちゃう……」
 
 
 と晴美が甘えた猫のような声で赦しを乞うたので、ますます亢奮させられたが、そこで俺はふと我に返った。

 ちょっと待てよ。

 おれは単に、“▲”で示されているところを馬鹿正直に責めているだけじゃないか。
 そんなことでいいのか
 おれは、おれだけの“▲”を……晴美の身体のどこかに探し求めないといけないんじゃないのか。
 

 そこから、おれの探究の旅が始まった。
 晴美の全身をくまなく……まさに舐めないというところはないくらいにまで、自分のだ液が枯れ果てんばかりの勢いで、新たな“▲”の場所を求めて舌で彷徨う。
 

 すでに存在する“▲”を集中的に攻められていたときよりも、晴美の肉体の反応と嬌声はすこし控えめになった(ような気がした)。ますますおれは駆り立てられるように、何かに憑りつかれたように、新たな“▲”を求め続けた。
 
 
 そして、はるかな舌での放浪の末に、おれはついに新たな“▲”を発見した。
 その場所がどこであるかは、ここでは書かない。
 おれだけの秘密だ。

 
 その晩、おれはその箇所を集中的に攻め続けた。
 晴美はほとんど鳴き声を上げておれにしがみつき、すさまじいけいれんと長い滞空時間を伴なう、圧巻の絶頂をおれに見せてくれた。

 心の中で、祝砲が鳴り響いた。
 
 
 
 
 
 2年後の春、晴美が繁華街を別の男と歩いているのを見かけた。
 晴美は俺に気づかなかったので、俺は敢えて声をかけなかった。
 

 あれから晴美の身体には、新たな“▲”が、いくつ刻まれたのだろう、とおれは想像した。
 

 そのうちのひとつが、おれの発見したあの場所であるなら、おれはとても嬉しい。
 
 
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 新入社員諸君、入社おめでとう。
 とくにタチバナ律子くん。君には人事部長として、いや、ひとりの50を前にしたただの男として、心の底からお祝いをしたい。

 
 この不況のなか、我が社は3人の新入社員を迎えることができた。

 そのうちの一人が君、タチバナくんだ。

 
 あとの二人は男子。採ったのはわたしだが、まあどうでもいい。
 片方の名前はたしかウチヤマ?ウチモリだっけ?
 あともう一人のデブは名前も思い出せない。
 

 今日、どうでもいい男子二人と入社式に姿を見せた君は、あの最終面接のときと同じ、黒のリクルートスーツに白い開衿のブラウス。派手めで根性の悪そうな本来の貌を隠すナチュラルメイク。後ろでゆるく束ねた髪は、しっかりと染め直したのが判るつややかな黒髪。
 

 君はとても長身だから、そんな洒落っけのないリクルートスーツ姿がとてもよく似合う。
 

 あまり大きな声では言えないが、わたしには女子のリクルートスーツに対するフェティシズムがあってね。特に、君のように、少し根性の悪そうなスレンダーな女子学生のリクルートスーツ姿に目がない。

 
 普段の君は、どんなファッションなんだろうか?
 その長い膝下、腰から太腿にかけてのタイトスカートのラインから、君が相当自分の脚に自信を持っていることがよくわかる。

 
 ミニスカートが好きなんだろう?
 で、ミニスカートを履くときは生脚なんだろう?
 言わなくてもわかるよ。
 

 君が鮮やかな白のミニスカートで、膝下までのロングブーツを履いて、春の街を軽やかに駆けていく様が目に浮かぶ。
 

 今のところ僕は、肌色のストッキングに包まれた君の脚しか知らない。
 君のその肌のなめらかさは知っている。
 最終面接のときに僕は、ブラウスの開衿部分から覗くきみのなめらかな肌と美しく浮き上がる鎖骨のラインから目が離せなかった。

 
 その根性の悪そうな顔を、ナチュラルメイクで隠し、今にも弾けそうな淫らな本性を秘めた肉体を、シックなダークのリクルートスーツに押し込んで、君は面接からずっと……今日も……フレッシュで純朴なわかい娘を演じ続けている。
 

 でも、おそらくもう、君のそんな姿を見るのは今日が最後だろう。
 君はリクルートスーツを脱ぎ捨て、好みの洋服に着替えるだろう。鮮やかな色のブラウスとストレッチパンツで社内を闊歩する君を想像する。ナチュラルメイクをやめ、髪の色も、スタイルも、君はすこしずつ……周りの先輩女子社員の風あたりや男性社員(わしらおっさん)への反応を伺いながら、本来の自分の姿に戻っていくのだろう。
 
 僕はそれが心待ちでもあり、少し悲しくもある。
 
 僕はリクルートスーツが好きなんだ。
 タチバナ律子という一匹の雌の、淫らな本能を、なんとかその型にはまったスタイルに押し込め、取り繕おうとしているスタイルに僕は激しく駆り立てられる。

 
 ああ、今夜、君と二人っきりになれたら。
 もし場末の部屋で、リクルートスーツの君と二人、寄り添うことができたら。

 
 僕はまず、君の髪を撫でながら、その君の髪を束ねているゴムをほどき、君の髪を解放するだろう。
 ナチュラルカラーの口紅の甘い味を味わいながら、そのやったら肩と腰の詰まったジャケットを脱がせるだろう。そしてスカートには手をつけず、君をベッドに腰掛けさせて……肌色のストッキングの滑らかな感触を堪能する。
 

 多分、今、僕が考えていることを君が知ったならなば、君は僕をキモいと思うだろうな。

 
 いや、思われて当然なのだ。
 僕は人事部長なんだから。
 

 決して、何があっても、僕の気持ちを君に打ち明けることはしまい。
 会社での立場が厳しくなる?
 そんなことはどうだっていい。
 
 僕は人事部長として、毎年入ってくる君たちみたいな女子たちの、ほんの一瞬の季節……リクルートスーツに包まれた季節を……心の奥で煮っころがし、ねじり、なぶり、もてあそび、最後の一滴まで汁を味わうことに、これ以上ないというくらいの幸せを感じている。
 あくまで、心の胸のうちに秘めた、密やかでささやかな愉しみとして。
 
 
 ん?
 
 
 いかんぞ。タチバナくん。
 
 なんでその、ウチヤマだかウチモリだかいう男性新入社員と、楽し気に私語を交わしているのだ。
 彼は確かにイケメンだ。草食系だ。
 でも男なんてみんな、僕と同じように、胸の奥には君たちへの暗くて粘質の欲望を息づかせているんだよ。いや、君はそのことを充分に知ってるだろう?
 

 知っているからこそ、リクルートスーツなどでは隠しきれない淫らさが君たちを輝かせているのだ。

 
 多分今日、入社式が終わると君たち新入社員は……3人で親交を深めるとかなんとか称して、駅前の居酒屋で飲むのだろう。
 そしてあの、もうひとりのデブの男子新入社員(ウチヤマかウチモリでない方)を上手く振り切った君たちは……まさかリクルートスーツのまま、ホテルに消えたりするのではあるまいな。
 
 
 タチバナ君、君は根性が悪そうな顔をして、実は乱暴にされるのが好きなのではないかね。
 

 『ストッキング……破いちゃって……いいよ』

 
 君がその唇をゆがめて、ウチヤマだかウチモリだかに上目づかいで囁く様を想像した。
 
 
 入社式の最中だったが、わたしは嫉妬で気が狂いそうだった。
 
 【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

当然のことながら彼女はすごく怒っていた。
 なぜなら職場でもわたしと倫子が、最寄り駅のラブホテルから出てきたことは尾ひれがついてうわさになっていたからだ。


 「ただのうわさだよ、気にすんなって・・・怒るなよ」
 「知ってんのよ、あたし。あんたがどんな女が好きか。倫子はあんたの好きな女のタイプそのものじゃない」
 

 彼女は頑なだった。
 しかし、うわさはうわさだ。事実ではない。
 実際、わたしは倫子とそういうことは一切していない。
 しかし、彼女の言う『倫子が私の好きな女のタイプそのもの』である、という評価には興味を惹かれた。


 「え?倫子が俺の好きなタイプ、ってそれ、どういう事?」
 「しらばっくれてんじゃねーよ、このけだもの!あんた、前からあーいう女が好きなんでしょ。だってあの子、とんでもないマゾなのよ。会社の女の子たちの間でももっぱらのうわさなの、知ってるでしょ?」


 知らなかった。そうなのか。
 わたしは昔からうわさにすごく疎い。あんまりうわさ話が好きではないのだ。
 だから最近まで大田課長がここ一ヶ月出社していない理由が、女子高生に痴漢で逮捕されたからだということを知らなかった。


 「ちょっと待てよ。いったいなんだってそんなうわさが立ってんだよ。君らはいつもそんなうわさ話ばっかしてんのか」
 「ごまかさないでよ。あたしが問題にしてんのはそっちのうわさじゃなくて、あんたが倫子と駅前のホテルから出てきた、ってほうのうわさじゃない」
 「いや、だからそれはあくまでうわさだから、『それはうわさで事実じゃない』って言うしかないんだよ。
  で、ところで倫子さんが真性マゾだ、っていうのは本当なの?」
 「あんた知ってんでしょ?ってかあんた、倫子とホテルで何してたのよ?一緒にホテルに入って何したのよ?あたしはそれが聞きたいわけ」


 ああ、いい忘れたがわたしは今、彼女の部屋で彼女と二人っきりだ。


 どうも彼女はこの馬鹿馬鹿しいうわさ話を事実と信じて疑わないらしい。
 まあいい。彼女がそれを事実と信じたがっている以上、わたしにできることはそれをできる限りやさしくごまかすことだけだ。


 「まあそれはいいとしてだな」
 「良かないわよ!・・・え、ちょっと、何すんのよ!まだあたし、真面目に話してんだから!」
 「いいじゃんいいじゃん、で、その何、倫子さんがマゾだってうわさ、そっちの方詳しく聞かせてよ」


 言いながらわたしは彼女の背後に回りこみ、首筋にぺとぺととくちびるをつけながら、脇の下あたりをくすぐった。


 「や、やめてよ!あんた頭がおかしいんじゃない?」
 「で、どーいう訳?倫子さんがマゾだってーうわさは・・・それ、教えてくれよ。俺知らないからさ」
 「んっ・・・あんたは・・・いつもそうよ。そうやって、適当にごまかして・・・あっ」
 

 彼女の乳房をやわやわと揉みながら、わたしは彼女の怒りのメーターがどんどん下がっていくのを体感し、ひとまず安心した。


 「・・・そういえば、倫子さんがマゾ、って言われると、そんな感じがしないでもないなあ。言われてみると、あの子、そういう感じするよ」
 「んんっ・・・で、でもあんた・・・だ、だから、あーいうのが好みなんでしょ。うっ・・・・ぜ、全体的に、地味だけどさ、なんか、体つきが・・・その、肉感的で・・・大人しくて・・・んんっ・・・あ、あーいう・・・・なんか、人に対していつも『生きててごめんなさい』って感じをかもし出してるような女が・・・・いっ、いいんでしょ」
 

 そうかもしれない。確かに倫子にはそんなところがある。しかしまあ、それだけでマゾという噂が立つのは妙な話だ。
 いろいろ考えながら、わたしは彼女をいつのまにかベッドの上に仰向けに寝かせて、気がつけばあとはパンツ一枚、という格好まで剥いていた。


 「おれはこの、しなやかな躰と、君のその『生きてて何が悪いのよ』って雰囲気が好きだけどなあ」
 「いやっ・・・ちょっと、いつの間に・・・こんなの・・・あんた、やっぱり倫子にもこんな風にしたわけ?そうなんでしょ!あたしをこうやって弄びながら、実は倫子のこと思い出してんでしょ!」
 「いや、思い出そうにもやってないし。で、倫子さんは何でマゾなの?」
 「知らないわよ、あたしも人づてで聞いただけだから」彼女がぷい、と顔を背ける。
 

 その隙にわたしは彼女の最後の一枚であるパンツを剥ぎ取っていた。



 「どんな話を聞いたの?」
 「あたしも会計課の裕子に聞いただけだから・・・詳しいことはわかんないけど・・・んっ、ちょっと・・・そこだめ・・・」
 「裕子かあ、あいつの話はあてになんないよなあ・・・・だって、太田部長が女装バーに週3で通ってる、ってうわさ、出所はあいつだろ?」
 「でも・・・んっ・・・くっ・・・・それ、だって・・・・ほんとかうそかわかんないじゃん・・・」


 すでに彼女の瞳は潤んでおり、怒りは微塵も感じることができない。ごまかすことはとりあえず成功したようだ。


 「で、裕子、なんだって?・・・倫子さんがマゾだってのは、どういう根拠で言ってるわけ?」
 「・・・・あっ・・・・はっ・・・インターネットの、い、いかがわしい動画サイトあるじゃん・・・・あっ、んっ・・・あんたの好きそうな。あれに・・・倫子そっくりの子が・・・・で、出てたんだって・・・・」
 「SM系のやつ?」
 「そ、そう・・・んんんっ!・・・・そ、そこ、もうちょっとやさしく・・・・目隠しされてたから・・・はっきりと顔はわかんないんだけど・・・り、倫子ってさ、口元にちょっとほくろがあるじゃん・・・・右のところ」
 「そうだっけ?」
 「し、しらばっくれないでよ・・・この変態、けだもの・・・髪型と、体系と、唇と鼻筋と、全体の雰囲気が、倫子そのものだったんだって・・・それがさ・・・・なんか、おっぱいを強調するみたいに・・・アラナワっての?・・・それで胸をぐるぐる巻きにされてて・・・変な覆面を被った3人の男に・・・・あああんっっ!!」


 いけない、焦りすぎた。


 「3人の男に・・・どうされてたの?それで?それで?」
 「・・・・・・いやあ・・・・す、っごく、すっごく硬くなってる・・・・」彼女が何を指していったのかは詳しく言わないでもわかるだろう。「・・・・3人が3人とも・・・大きな電動マッサージ器を持ってて・・・ベッドで万歳の形に縛りつけられた倫子・・・・に似た女の子の・・・・おっぱいやら・・・あそこに・・・・」
 「あそこってどこ?」
 「あっ・・・あんたが、今、触ってるとこ」
 「このべちゃべちゃになってるところか?熱くなってひくついて、後から後からいやらしい蜜が湧き出してくるところか?」
 「・・・へ、変態!・・・おぞましい・・・あんた、そんな風に倫子に言ったんでしょ。ホテルで倫子を縛り上げて、マッサージ器でなぶりたおして・・・・」
 「マッサージ器ってのは、こういうやつのことか?」


 わたしは彼女の部屋に転がっていた、健康器具をとりあげて彼女の目の前にかざした。
 彼女が大きく目を見開く。


 「いや・・・あんた、そ、それで・・・それであたしに何する気よ・・・ま、まさか・・・まさか倫子にしたのと・・・同じことをあたしにしようって・・・」


 彼女の声が興奮と期待で震えていた。
 わたしはマッサージ器のスイッチを入れた。うなりをあげてマッサージ器が振動をはじめる。
 ところで・・・こんなもの、これまで彼女の部屋にあっただろうか?


 「同じことって・・・どんなことしたと思ってんだよ・・・たとえばこいつを、こんなとこに押し当てたりかあ?」
 「いやあっ・・・そこ、そんないきなり、だめっっ!!」


 彼女のしなやかな裸身が大きくのけぞった。
 わたしはもうかなり興奮していたので、倫子のことはどうでもよくなっていた。実際彼女もまた、倫子のことなどどうでもよくなっているのだろう。


 「で、動画の中で、倫子は・・・ほかにどんなことされてたって?・・・・ひょっとして、こんなことかあ?」
 「あああんんっっ!!!・・・・違う、そんな、そんなことは・・・や、やっぱ、やっぱあんた、倫子とホテルでこんなことしたんでしょう?」
 「だから知らないから聞いてんだよ!・・・で、倫子はそれで、どんなことされてたんだ?」
 「全身に・・・ろ、ろ、ローションを塗りたくられて・・・・」
 「ひょっとして、こんなのかあ?」
 「ひゃっ・・・つ、冷たいっっ・・・そ、そんなのだめっっ・・・あ、お、おかしくなっちゃう・・・・・・・」


 ローションはなかったのでジョンソン・ベビーオイルを代用した。




以下は省く。




その晩、家に帰ってから自分のパソコンでそれらしい動画を探してみたが、結局見つからなかった。


翌日、昼休みの後、廊下で倫子とすれ違った。
『生きていてすみません』という感じがしないでもないなあ、とも思った。


昼から勃起した。


【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 人生に一度でいいから、冗談では無く、大まじで、『身体は正直だぜ』という台詞を吐いてみたいのである。
 もちろん、セックスの最中にだ。
 いや、言おうと思えば恋人なり、妻なり、愛人なり、あるいはお金でそういうことをさせてもらえる女性に対してなら、いくらでも言えるはずだ。しかし、それは冗談が前提であって、いわばイメージプレイのようなものだ。
 
 女性にたわむれに
 
 『お代官様~』とか『先生、ダメだよ』とか『社長、困ります』とか言ってもらう。
 そうした他愛のない遊びに過ぎない。
 
 『身体は正直だぜ』を満たすには、以下のような条件が必要である。
 

●相手の女性は、わたしとの性行為に積極的ではない
●相手の女性は、むしろわたしには嫌悪感を抱いている
●相手の女性は、むしろわたしとの性行為を忌わしいものと感じている

 これが相手の女性にとって必要な要件だ。

 かといって、これはレイプではない。

 暴力的に女性を組み伏せてどうこう、というのは基本的に好きではないし、(別にいい人ぶっているわけではないが)そういうことをする人間、もしくはしたいと願う人間は唾棄すべき輩だと考えている。
 
 しかし、わたしの望む『身体は正直だぜ』セックスにおいては、相手側の女性は、わたしに対してまったく好意を抱いていないことが必要だ。むしろ、蔑み、嫌悪され、おぞましいとさえ感じられているほうがいいかもしれない。
 
 しかし、相手の女性は、何らかの条件と引き換えに、その忌わしい相手であるところのわたしとセックスをしなければならない状況にある。
 わたしは何らかの事情で、彼女より優位な立場にあり、彼女にセックスを要求できる立場にある。
 
 
 そのためには、わたしには以下のような条件が必要となってくる。


●わたしは、相手の女性に何らかの貸しがある(返せない額のカネを貸している、など)
●わたしは、そうした立場を大いに活用し、人の弱味につけこむゲスである。
●わたし自身、自分のそういう卑劣さを自嘲的に楽しんでいる。


 これらの要素はつまり、相手の女性の嫌悪感をますます掻き立てることに寄与する。
 相手は、女性に大きな貸しをつくり、その賠償を身体での奉仕に求めるようなゲス野郎である。
 わたしが女性ならば、こんな男とはけっしてセックスしたくない。

 よほどの事情でも無いかぎりは。
 
 しかしまあ、たとえば前述したようにわたしに多額の借金があるとか、わたしの自慢の壷(時価数千万相当)を割ったとか、わたしが有名私立進学校の理事長で息子をどうしても入学させたい、とか、わたしのベンツ(むろん、わたしはベンツなど持っていない。というかペーパードライバーだ)に接触事故を起こして彼女が示談を望んで来たとか、いたずら半分でスーパーで万引きをした結果、店長であるわたしに発見され、どうしても警察に届けてほしくない、とか、そういった陳腐でありふれた事情において、彼女はわたしとセックスせねばならない状況にある。
 
 書き連ねてみると、実に陳腐だ。

 理由はともあれ、こうしたポルノにおいては、女性を追い込むためのこうした状況をいろいろとでっち上げねばならない。
 
 ミステリー小説において、殺人のトリックは巧妙でも殺人の動機がお粗末であることが多いように、ポルノ的な妄想は『いかにいやらしくするか』に重きが置かれ、その事情はおざなりであることが多い。
 
 ともあれ、そうした事情において、わたしと、決してわたしとのセックスに積極的ではない女性との間で執り行われるセックスは、以下のような状況と手順で行われるべきである。


●場所はできるだけしけた処がよい(場末の連れ込みホテル……ベッドが丸くて天上が鏡)
●ちょっと女性は酒が入っている。おぞましい行為を行うまえの景気づけである。
●わたしは先にベッドに腰掛け煙草かなにかを吸っている。
●女性には立ったまま、着ているものを一枚一枚自分で脱がせる。


 いや、それは強制わいせつだろう、と人は言うかもしれないが、問題はそう単純ではない。
 なぜなら、


●女性は、半ばこうした羽目に陥った状況に関して、一種の諦観を抱いている。
●わたしは決して行為を無理強いしない。すべてを女性の投げやりな意志に任せている。

 からだ。
 つまり、わたしは彼女がそのような辱めを甘んじらざるを得ない状況を作り出し、その状況を最大限に有効活用しているわけではあるが、最終的な判断決定は彼女の意志に任せている。
 つまり、
 
●彼女がわたしとそうしたしけた小部屋(ベッドが丸くて天井が鏡)にいるのは、彼女の意志である。
●彼女に服を脱ぐように命じたのはわたしであるが、脱いでいるのは彼女である。
●これから起こりうる事態に大しては、彼女は有るていど覚悟している。

 のだ。
 
 さて、全裸になった彼女(もしくは、上下の下着くらいは自分の手で剥がしてもいいかもしれないが、やはり最後まで自分で脱がせて彼女の葛藤を最後の一滴までしゃぶりつくすのが本物のゲスだ)をベッドに仰向けに寝かせる。
 
 おそらく彼女は、全身をさらしながら、顔をそむけ、わたしとは視線を合わせようとしない。
 ここまでしたんだから、あとはあんたが勝手に好きにしてよ、と投げやりな態度で、わたしに身体を差し出す。その諦めきった表情の奥に、
 
 『ぜったいにこの状況の愉悦を、この忌わしい男と共有したりするものか』
 
 という一縷の意志の種火がちらちらと息づいていたりすれば言う事なしである。
 

 そこから行う前戯とは、以下のようなものだ。
 
●できるだけ長い時間をかけて彼女の肉体を鑑賞し、手を触れるのを最大限に我慢する。
●愛撫はできるだけやさしく、盲のマッサージ師になったつもりで。
●女性に配偶者や伴侶がいる場合、『いつも相手はどんなふうにするんだ』などと聞く。
●持てるボキャブラリーを最大限に駆使して、言葉で責め続ける。


 はてさて、ここに忍耐と努力、そして自制心が必要である。
 彼女の肉体に何らかの反応が生じるまで、決してそれ以上の段階に移ってはならない。


 彼女の吐息が乱れ、その身体がじわじわと遠慮がちにくねり、うっすらと上気した肌に汗の湿りが浮き(そのために予め室温は高めに設定しておくべきかもしれない)、すこし開いた唇の隙間から……反応の証しが聞き取れるレベルの音声となって表出されるまでは、たとえ、何時間でも何日でも何週間でも、耐え忍び、いじましくもいやらしい責めを続けなければならない。照れがあってもならないし、『一体俺は何のためにこんなことをしているんだ』と素に返ってもならない。
 
 
 やがて彼女の肉体が、わたしを蔑み、憎み、嫌い、忌む心を裏切って、物理的な反応を見せざるを得ない瞬間がやってくる。いや、やってきてほしいとわたしは願う。
 
 
 そしてその瞬間に、わたしは勝ちどきのファンファーレを胸に秘め、わざと低く、小さく囁くのだ。
 
 
 『身体は正直だぜ……
 
 
 なぜわたしにこの妄想を実現できないか?
 
 わたしがゲスではなく、善良で誠実だからだ。
【完】

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 さてまあ当時のわたしはたったの五歳でした。
 当時、その保育士さんが昨年短大を出たばかりの世間知らずなお嬢さんであることなど、ちっとも判ってはいませんでした。
 
 今なら彼女のような女性は、わたしにとって格好の餌食です。
 まあ言うまでもありませんが、セックスに対して、そしてわたしのようなそこにつけ込んで女を食い物にするような人間の存在について、無知で無防備な女性というのはほんとうに軽く骨抜きにしやすい。
 
 ただまあ、はっきり言いまして難易度が低いからといってその手の女性がわたしの好みであるか、といえば決してそういう訳ではありません。
 むしろ、難易度が低すぎてあまりにも面白くない。
 人生経験の少ない人間というのは……これは女にも、男にも言えることですが……中身が空っぽです
 中味が空っぽな人間というのは、わたしの興味の範疇外です。
 何故なら、しゃぶり尽くそうにもしゃぶるものがありませんからね
 
 まあまた関係のない話が長くなりそうなので、話を先に進めますが、とにかくそのお嬢さん……いや保育士さん……当時のわたしにとっては“たばたせんせい”は大変魅力的な人でした。
 
 当時の無邪気な感覚で判断しましても、ぱっちりとした目と小柄でしなやかな肉体、そして何より上品な物腰がほかの保育士のみなさんよりずっと魅力的だったのを覚えています。
 
 当時のわたしくらいの年齢の子供にとって、大人の女性はどれも単に「自分より歳を食っている人」であり、保育士の方だろうと園内掃除を担当するおばちゃんであろうと、たいした違いはありません。
 それでもわたしは若く、美しい女性に魅かれることが多かった。
 
 とにかく、年老いた女性のそばにいるよりも若い女性のそばにほうが、そして、不細工な女性のそばにいるよりは奇麗な女性のそばにいるほうが居心地が良いのです。
 
 このへんは、わたくし特有の動物的勘といいましょうか。
 生まれ持った天分とでも申しましょうか。
 
 その“たばたせんせい”ですが、よく職場で、先輩の保育士さんに叱られていたのを覚えています。
 
 実際、彼女が世間知らずで要領が悪く、ドン臭かったことは事実でしょう。
 ですが、それにしても先輩保育士さんたちはわたしたち子供の前であることを憚らず、彼女を怒鳴りつけたり立たせてネチネチと小言を言ったりして激しく攻め立てていました。
 
 幼いわたしにはその様子は、いやがらせか苛めにしか見えませんでした。
 実際そういうところもあったのでしょう。
 何故なら、“たばたせんせい”があまりにも美しかったからです。
 前述しましたように、彼女は他の保育士の先生よりずっと美しかった。
 それに、他の先生方よりも一回り若かったのではないでしょうか。
 
 当時のわたしにそこまで伺い知ることは無理というものですが、“たばたせんせい”とその他の古株の保育士の先生方のいずれかの間に、なんらかのトラブルがあったのではないでしょうか。
 あからさまに男女間のトラブル、というわけではないでしょうが。
 たとえば園長先生が(男性でした)やたら“たばたせんせい”を依怙贔屓する、とか。
 
 “たばたせんせい”はそんなふうにネチっこく先輩保育士の先生方に苛められた後も、涙を見せるようなことはなく、怒りや悲しみや理不尽を、ぐっと堪えるかのような表情をよく浮かべていました。
 
 そういう表情に、当時5歳だったわたしはズキンときたものです。
 昔から、といいますか物心ついた頃から、わたしは女性のこういう表情に弱かった。
 
 多分、“たばたせんせい”はその未熟ながらも実直な職業意識から、子供たちの目の前で涙を見せるなどということはしてはいけない、と真摯に心に決めていたのではないでしょうか。
 
 あほらしい話です。
 誰だって、一度は泣くのです。
 しかし、そういう健気な姿勢は(もちろん、当時からそれを健気だと思っていたわけではありませんが)わたしの胸を打ちました。
 こういう、人間個人個人が抱えている“つまらない自負心”がわたしを亢奮させるのです。


 その日も……“たばたせんせい”は先輩保育士の先生にひどくいじめられていました。
 日常的な風景ではありましたが、その日は何と3人がかり。
 はっきり言って、子供であるわたくしたちもなんだか自分の先生がしかられているのを見て、自分がしかられているような気がしてくるから困ったものです。
 
 頭の弱い友達のユウスケ君なんかは、すっかり脅えて泣きだしてしまいました。
 
 その日の夕方、毎日わたしを迎えにきてくれていた母か祖母が、二人とも何らかの事情で遅くなっていました。
 つぎつぎと園児達が帰っていく中で、わたしは取り残され、いつの間にか気がつけば園内はわたしと“たばたせんせい”だけになっていました。
  
 他の先生たちも姿が見えません。
 “たばたせんせい”は大変疲れた様子で、わたしの顏をのぞき込みますと、非常に寂しげに笑いました。
 
 「ちょっとお散歩しようっか」彼女はいいました。
 
 わたしは素直にうん、と頷きますと、“たばたせんせい”の手に引かれて保育室を出ました。
 散歩と、いいましても保育園の敷地内をうろうろするだけです。
 保育園の裏手はちょっとした林になっており、そこを“たばたせんせい”と歩いたその日、わたしはなんとなく夏の匂いというものを嗅いだような気がします。
 
 草の匂いと、遠い雨の匂いと、女性の汗の匂いです。
 
 と、“たばたせんせい”が木立の中できょろきょろと周囲を見回しました。
 そしてそのまま、わたしの目線の高さまでしゃがみ込み、じっとわたしの目をのぞき込みます。
 
 「……………」彼女は何も言わず、わたしの目を見ていました。
 
 その時わたしは生まれてはじめて……女性の情欲というものに触れました。
 明らかにその目線は、いつもの優しい“たばたせんせい”のものではありませんでした。
 せんせいの目は少し潤み、黒目の色は差し込む西日に滲み、震えているようでした。
 
 「……誰にも言っちゃダメだよ」
 
 “たばたせんせい”は鼻息交じりにそう囁くと……わたしにそっと唇を近づけました。


<NEXT> <BACK>

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 お察しの早い読者のみなさまはもうお気づきのことかと思いますが、わたしの仕事はいわゆる『すけこまし』です。
 
 ヒモではありません。
特定の女にぶら下がっているわけではありませんので。

 また、ヤクザでもありません。
 自分で言うのもなんですが、わたしは生まれつき繊細なほうで、暴力沙汰は大の苦手なのです。

切った張ったも大嫌いなら、ヤクザという人種も好きになれません。

確かに何人かヤクザの知り合いはいますし、ヤクザの中にもわたしのように『すけこまし』を生業としている連中もいます。
 でも、わたしはああいう類いの連中はどうも好きになれない。
 
 わたしは女を手荒に扱いますし、それぞれの気持ちなど平気で踏みにじりますが、女が言うことを聞かないからといって女に暴力を振るうことは決してありません。

 と、いいますか、言うことを聞かなくなった女を殴ってでも言うことを聞かせよう、なんて女に対して執着を見せている時点で、わたしから言わせれば『すけこまし』失格ですね。
 
 わたしがヤクザのことが嫌いなのにはもうひとつ理由があります。
 
 結局ヤクザの世界といいますのは男と男の世界であります。

 親分であったり、兄貴分であったり、または舎弟であったりといった『男と男の付き合い』を女たちのつきあいより優先させなければならないのが、ヤクザの世界。
 
 まあものすごく同性同士でコミットメントなのがヤクザの世界なのですね。
 一種、同性愛的といいますか。
 
 ですのでヤクザの世界は、わたくしのような天性の女好きには向かない世界なのです。

 それにシャブだのチャカだのゲーム喫茶だのショバ代だので、お金を増やそうという意識もあまりありませんし。

 まあ、シャブはセックスの時に使用することもありますが、そのあたりに関してはまた後で詳しくお話しすることにしましょう。
 
 ですので、わたしはヤクザ連中からも『あいつはオメコの汁で飯食っとる』と陰口を叩かれるような、スケコマシの中でも一目を置かれる存在です。
 
 かなり前置きが長くなってしまいました。

 それではここで、なんでわたしがこんな風になってしまったのか?……といういことをお話したいと思います。
 
 ……いや、別にイヤイヤ『すけこまし』になったわけではありませんので“なってしまった”なんていう言い方はヘンかもしれません。

 でもまあ、世の中は広いですので、このいっぱしの『すけこまし』がどのように生まれ、どのように成長して現在に至るのか、ということに興味をもたれる方もいらっしゃることでしょうから、一から順を追ってお話したいと思います。
 
 まず、わたしが『すけこまし』になったのは、生まれつき持って産まれたものによるところが大きいと言えます。

 まあ、ぶっちゃけ、わたしは生まれつき顏が良かったわけですね。
 
 自分が赤ん坊だったころの写真を収めたアルバムなんかが残っていればいいのですが、なにぶんこのような生き方をしているものですので、手元にありません。
 
 わたしは赤ん坊の頃から、大変可愛らしい顏をしていたらしい。

 物心ついたときには、すでに母や祖母や姉がやたらわたしをちやほやし、蝶よ花よとまるでお殿様のように可愛がってくれたのをいまでも覚えています。

 わたしも子供でしたので自分の顏がいいのかどうか、そんなことは自分でもよくわかりませんでしたが、どうもわたしがおどけたり、笑ったり、泣いたりすると、そのたびに母や祖母や姉が喜ぶ。
 
 わたしも天性のお調子者でありますから、ついつい母や祖母や姉を喜ばせたくて、彼女達の前で百面相をやって見せたものです。
 
 「あははははは!可愛い!!」姉が腹を抱えて笑います。
 「ほんまにこの子は男前やねえ」母が嬉しそうに微笑みます。あ、わたしの地元は関西です。
 「将来は映画俳優やね」祖母がうんうんと頷きながら言います。
 
 そんな状態でしたので、わたしは生まれながらにして、ひとりでに自惚れを増長させるような家庭環境で育ちました。

 何せ、何をしてもかわいい、かわいいと言って喜ばれるのです。
 
 そんな環境で育った子供がまともな人間になるはずがありません
 
 また、詳しくは書きませんが、わたしの家にはある事情がら父が居ませんでした。
 男兄弟もおりません。
 
 こうした家庭環境もわたくしの性格形成、ある意味、異常な性的嗜好の原型を形作っているのかも知れませんが、まあ自分で詳しく分析してみたことがないし、そういうことにあまり関心はありませんのでここでそれをくどくど述べるのは止めておきましょう。
 
 心理学などに知識がある方で興味をお持ちの方は一度、分析してみてください。
 少なくとも暇つぶしにはなると思います。
 
 さて、そんな風に家の中で女家族に囲まれて、彼女らを喜ばせることに忙しかったせいか、わたしには近所の友達、しかも同性の友達というのが一人も居ませんでした。
 
 かといって、寂しかったわけではありません。

 わたしはもうすぐ40歳に届こうという歳ではありますが、この歳になるまで人生において一度も、『寂しい』という感覚を味わったことがないのが自慢でもあります。
 
 まあ、自慢にもなりませんけどね、そんな事。
 
 わたしがはじめて……母や祖母や姉以外の、赤の他人に対して自分の魅力が有効であることに気づいたのは、保育園に入ってからのことでした。
 
 これも人間の業というやつでしょうか……わたしが生まれて女をたぶらかしたのは、5歳の時。

 相手は15歳も歳が離れた、新人の保育士さんでした。
 

<NEXT> <BACK>

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

 三年前と全く変わらないアパートの汚いドアをノックしますと、三年前と全く変わらない化粧っ気のない秋子の顔が、ドアのすき間からのぞきました。
 相変わらず、チェーンもせずに不用心にドアを開けたようです。
 まったく、この女がバカだということはイヤというくらい知っていますが、ここまで学習能力がないとは。
 呆れるを通り越して、思わず笑ってしまいました。
 
 「……あ……」秋子が、ぽかん、と口を開けます「……あんた……」
 「……よお、ひさしぶり」
 
 わたしはあまり好きでもないたばこを口の端に垂らして、秋子に微笑み掛けます。

 微笑みかける、というのは少し違いますね。

 ニタリ、と笑いながら出来るだけ下卑た感じを込めて、視線で秋子の顔面をねぶり回すのです。
 
 「………な、な、なに?なにしに来たのよ?」
 
 秋子は相当慌てている様子でした。

 わたしが何をしに来たのかはだいたい想像がついているのでしょう。
 彼女の雌としての動物的感覚が察知しているはずです。
 頭はとても悪いのに、そういう原始的感覚だけは非常にするどい女でした。
 
 そんなところも、わたしが秋子を愛する理由の一つです。
 
 「なにするも何も、そんなヒトをドロボウか強盗みたいに言わなくていいじゃねーの……え?……いやさ、たまたま近くに寄ったもんでさ、久しぶりにおめえのかわいい顔が見たくなったのよ。元気?ええ?ちょっと痩せたんじゃねーの?ちゃんと食ってるかあ?」
 
 そう言いながらわたしはできるだけ粘っこい視線で、ドアのすき間からのぞく秋子の全身をねぶり回し続けました。
 秋子はかなり洗い古したぴったりしたジーンズに、Tシャツというラフなスタイルです。

 ちなみに、“痩せたんじゃねーのかあ?”とわたしが言ったのは単なるお世辞です。

 女性はそう言われると誰でも喜ぶでしょう?

 実際の秋子は三年間とまったく変わらず、たいへん肉付きのよい、ジューシイな体形をしておりました。

 決してデブというほどではありませんが、二つの胸はしっかりと前へ、しかも相変わらず少し上を向いて張り出し、自己主張を続けています。
 白い二の腕は、思わずかぶりつきたくなるほどです。
 きゅっと絞まった腰から、尻に掛けてのカーブは、いつもわたしの正気を失わせます。

 今すぐにでもこのまま玄関先に押し倒してジーンズをはぎ取り、バックから攻め倒してやりたくなりました。

 そういうわたし中で芽吹いた淫らな欲望の遠雷を、秋子はまた感じ取ったのでしょう。

 両手でTシャツの胸を抱え込むようにしてわたしの視線から隠すと、もともと人懐っこい造りの顔を無理して歪め、わたしを睨みつけてきました。
 
 「帰ってよ!!」秋子がいきなり怒鳴りました「あんたの顔なんて見たくもないわよ!」
 
 出ましたね。

 こういうシーンでのお決まりのセリフです。

 わたしはこういう秋子の反応を見るたびにとても興奮させられるのです。
 恐らく秋子の方も、口ではそんなふうに言いながらも躯のほうは興奮しているのでしょう。
 
 目を見ればわかります。


「やけにつれないじゃねえの……なんだ?え?いい男でも出来たわけ?」
 「あんたに関係ないでしょ!!もう、二度と顔を見せないでよ!!二度とあたしの前に顔を見せないで!」
 
 秋子が部屋のドアを閉めようとします。
 まあお約束ですね。
 わたしはドアのすき間に自分の靴先をこじ入れました。
 
 ガツン。
 
 「あっ!!」
 
 スチール制のドアに、もろに挟まったわたしのプレーントゥを見下ろして、秋子が目を見開きました。

 そして、わたしの顔を見上げます。
 恐らくわたしが足を怪我したとでも思ったのでしょう。
  
 「おいて!いて!いててててててっ!」

 わたしは大袈裟に騒ぎます。
 実は屁とも感じてませんでしたが。
 
 「……だ、だ、大丈夫?」と、秋子が慌てて自分で閉めたドアを開けます。
  
 その瞬間でした。
 
 「うっそぴょ~ん

 わたしは開いたドアのすき間に向かって突進し、自分の体を部屋の中に滑り込ませると、秋子の胸を突き飛ばした上、後ろ手にドアをガチャンと閉めたのです。
 わずか2秒半の仕事でした。
 
 突き飛ばされた秋子が、散らかったダイニングキッチンの上で尻餅をついた姿勢で、目を丸くしています。
 
 「……おめー、ホンっっっとうにバカだな。ぜんぜん変わってーな。三年前と全く、まったく、まあーーーーったく同じ手に引っ掛かってんじゃねーか。学習能力ないわけ?」

 わたしは勝ち誇って言葉を続けながら、土間に自分の安全靴を脱ぎ散らかしました。

 「……だーかーらー、俺の靴の先には鉄板が入ってるんだって。三年前もそう説明したろーが?同じ手で、おめえに一杯食わせたじゃねーの。マジ忘れたの?」
 
 「……こ、こ、来ないで」秋子がじりじりと床に尻を擦らせて後じさりまします。「そ、そ、それ以上近づいたら……それ以上近づいたら………」
 
 わたくしのように、ほとんど物心がついた時からこういうことを繰り返して、もう40代に迫ろうというようなわたしですが、この瞬間はやはり、はじめてセックスを体験する青少年なみに新鮮な感動を覚えます。
 
 口ではわたしを拒絶し、嫌悪し、排除しようとしていた女が、このように恐怖と、危機感と、その中にほんの少しブレンドされた肉欲へかすかな期待を滲ませた眼差しで、わたしを見上げるこの瞬間。
 
 「近づいたら、どうするっつんだよ」わたしは言いながら、自分のネクタイを片手で緩めました。「……おめーは……頭の学習能力はサル以下だけど、カラダの学習能力がずばぬけて高いとこが好きなとこだよ。さーて……ゆっくり復習するとすっかなあ?……ほれ、奥の部屋の敷きっぱなしの万年布団の上でよお??」
 
 流れるようにこういう台詞が出てくるところに、自分でも呆れてしまいます。
 
 「……い、いや………こ、こないで………」
 
 蚊の鳴くような声で秋子が言いました。
 
 ああ、ほんとうに俺は女を食い物にするこの生き方を選んで良かったなあ。
 ほんとうに俺って、女を骨までしゃぶり倒す才能に満ち溢れているなあ。
 
 毎度のことながら……改めてその実感を噛みしめました。


<NEXT>

テーマ:官能小説・エロ小説 - ジャンル:小説・文学

ついったー

やってるゲス

西田・フォン・三郎

Author:西田・フォン・三郎
ウェブログに
人が来るこそ楽しけれ
とはいふものの
お前ではなし(嘲)

最新妄想

おしながき

ばなー

オリヂナルTシャツ販売

買ってね

最新トラックバック

最新コメント

月別アーカイブ

FC2カウンター

押してね

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 イラストブログ 人物イラストへ
人気ブログランキングへ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード